[ベトナム] Eコマースで国内リテール不動産市場に変化

2021/06/08

[ベトナム] Eコマースで国内リテール不動産市場に変化


Covid-19パンデミックによるEコマースへのシフトが、ベトナムのリテール不動産市場に課題をもたらしています。総合不動産サービス会社サヴィルズ・ベトナムがレポートしています。


サヴィルズ・ベトナムのホーチミンシティ商業リース担当ダイレクターのトゥ・ティ・ホンアン氏は、「Covid-19は、不動産市場、特にリテール関係者に大きな課題をもたらしました。多くの事業者がやむなく抵当流れにしたり、何とか事業を回していくためにオペレーションの規模を落としたりしなくてはならなくなっている」と言います。


ニュース「The Korean Times」によると、韓国スーパーE-Martブランドは、チュオンハイ自動車に2021年5月に買収されています。ベトナムで操業して6年、前代未聞の事態に直面したE-Martは、事業拡大に苦しみ、結局1店舗展開するのみでした。E-Martは、要件に合うような理想的なロケーションを見つけることに苦戦したとみられる、とサヴィルズ・ベトナムは述べています。


外国ブランドが苦戦し、ベトナムの厳しいリテール市場に負けたのは、これが初めてではありません。これ以前にも、メトロ・カジノグループといった外国小売業者が撤退を余儀なくされたり、フランス系スーパーAuchanが地元の小売業者Coopに買収されたりしています。


E-Martの買収の前日、 中国の電子商取引大手アリババとアジア最大規模で、豊富な実績を有するプライベート・オルタナティブ投資会社ベアリング・プライベート・エクイティ・アジアが主導するコンソーシアムは、ベトナムのコングロマリット(複合企業)のマサングループ傘下で同国の大手食品・飲料メーカーであるマサン・コンシューマー・ホールディングスと、同国の小売り大手であるビンコマースとの合併で発足した「ザ・クラウンX」の株式5.5%を4億USドルで取得しています。


取引が完了すると、ビンコマース(マサンが取得した子会社)は、アリババが保有するEコマースプラットフォーム「Lazada」の最大級サプライヤーの一つとなります。


これらの取引を通じて、ベトナムのリテールシーンが変わりつつあるのが明らかになっています。オンラインとオフラインショッピングの境界が薄れつつあるのです。


ベトナムEコマース&デジタル経済機関(Vietnam E-Commerce and Digital Economy Agency (iDEA) )のレポートでは、2020年購買活動の53%はオンラインで行われ、リテールセクターの見通しは明るい、と述べられています。


フィッチ・ソリューションズによると、ベトナムは現在、東南アジアで急速に発達するEコマースセクターで第4位となっており、その平均世帯支出は年間9.5%まで増えると予想されています。消費者支出カテゴリーもまた2021年はその勢いを取り戻すとみられています。


2021年~2025年国家Eコマース開発計画(National Development Plan for E-Commerce 2021-2025)によると、ベトナム人口の55%がオンラインでの購入をすることになっています。


アン氏は、「ビジネスの適者生存の競争を単純に反映している」として、ホーチミンシティのリテールセクターには、飲食(F&B)、ファッション・アクセサリー業界の外国ブランドが多く参入してきており、外国企業はベトナム市場に大きなアップサイドの可能性を見ていることを物語っています。」


Covid-19がもたらした課題はまだ残るものの、リテール市場のパフォーマンスを物語る指標は、市場の現状とは逆の動きをしており、リテールセクターの総収益はEコマースがより一般的になり、外国ブランドが参入することで右肩上がりとなっているとアン氏は説明しています。


モバイルEコマース取引による総収益は、2021年は70億USドル、2023年には102億USドルにまで到達するとサヴィルズは推定しています。


一方で、サヴィルズ・ハノイの商業リース担当ダイレクター、ホアン・グェット・ミン氏は、「外国リテールブランドは、ハノイを拡大市場と見ています。プレミアムショッピングモールやハイエンドホテルのリテールエリアが、通常のショップハウスや個別店舗と比較して、このようなテナントには魅力でしょう。」と述べています。


外国投資家もまた現代的なリテールの発展を加速させています。ベトナム商工省(Ministry of Industry and Trade)のレポートによると、ショッピングセンター・スーパーマーケットの17%、コンビニエンスストアの70%、ミニマートの15%、オンラインショッピング・TVショッピングチャンネルの50%が外国投資家によるものだということです。


急速に発達するミドルクラスは、国内の消費者支出の成長率の変化点に到達しようとしており、人口一人当たりのGDPはもうすぐ3,000USドルに達しそうです。サヴィルズ・ベトナムは、これについて重大なリテールの可能性を示している、と述べています。


総合不動産サービス会社 JLLによると、トゥーティエム地区初のモール「ソカーモール」が2021年第3四半期にオープン予定で、リテール不動産市場に38,000平米をもたらす見込みです。一方で、完成済みの複合用途プロジェクトのリテールフロアの中には、まだテナントを募集中で、オープニング日が決定できないものもあるようです。


ホーチミンシティでは、新規供給が限定的なため、空室率は依然として圧迫されていますが、パンデミックの影響が長引いているため賃料は横這いです。


ハノイでは、総面積40,800平米のビンコム・メガモール・スマートシティが2021年第2四半期に市場参入予定です。これは、ナムトゥーリエム区最大のショッピングセンターとなり、エリア内の住民が集まることが期待されています。


新規供給に加え、デベロッパーの実績から高い稼働率が予想されること、他のモールの空室率もタイトなこと、さらにCovid-19の抑え込みが期待されることで、ハノイのリテール不動産市場は、空室率を1桁まで押し下げると見られています。



(出所:Vietnam Plus東洋経済

(画像:Photo by Jason Rost on Unsplash )