[アジア] 新変異株リスクによりADBの発展途上アジアGDP予測下方修正

2021/12/27


アジア開発銀行は、発展途上アジア(Developing Asia)*と呼ばれるグループの経済成長率予測を引き下げました。新しいオミクロン株の登場と世界的なコロナウイルス感染者数の増加により、パンデミックの終わりが見えないことを背景として挙げています。



ADBが2021年12月14日に発表した「Asian Development Outlook Supplement」では、発展途上アジアのGDP成長率予測は、9月の予測7.1%からわずかに下がって7%となりました。2020年の0.1%収縮でした。2022年は落ち着いて5.3%となる予測で、前回の予測では5.4%でした。



▼GDP成長率とインフレの実績・予測(出所:ADB Asian Development Outlook Supplement



同レポートでは、「発展途上アジアは、9月に予測したとおり、力強いリバウンドを続けるとみられる」と述べられています。しかし、「突然変異のオミクロン株の出現は、さらなるアウトブレイクもありうることを注意喚起している」とも述べられています。



域内最大の経済圏である中国の成長率は、やや減速した予測で、2021年に8%、2022年に5.3%となっています。インドの予測も下方修正され、2021年4月1日から開始した会計年度で9.7%となりました。東南アジアの見通しも同様に、マレーシアとベトナムの成長が緩やかになるという予測から、2021年は3%と置かれています。



北京の「コロナゼロ戦略」が経済活動を激しく混乱させる可能性もある一方で、多くの国々で新しい感染の波が起きており、経済の再開を後戻りさせうるとADBは述べています。また、観光に依存した国々では、渡航制限により成長見通しが抑えられることになりそうです。



その他レポートの主なポイントは以下の通りです。


・域内のインフレは管理できる範囲内に収まる見込みで、2021年の予測は2.1%に下方修正、2022年の予測は2.7%据え置きとなりました。これにより、支持的な金融政策が継続できます。

・インフレ率の上昇リスクにより、アメリカが早めの金融引き締めに入り、金融ボラティリティを誘発する可能性があります。

・発展途上アジアのほとんどの経済圏ではワクチン接種を加速させる取り組みがなされていますが、その進捗は国によってかなり異なります。



*ADBの定義する「発展途上アジア」はアジア開発銀行が地理的なグループでまとめた46の国と地域から構成されています。

• 中央アジア:アルメニア、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、キルギス共和国、タジキスタン、トルクメニスタン、ウズベキスタン

・東アジア:香港(中国)、モンゴル、中華人民共和国、韓国、台北(中国)

・南アジア:アフガニスタン、バングラデシュ、ブータン、インド、モルディブ、ネパール、パキスタン、スリランカ

・東南アジア:ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、東ティモール、ベトナム

・太平洋地域:クック諸島、ミクロネシア連邦、フィジー、キリバス、マーシャル諸島、ナウル、ニウエ、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トンガ、ツバル、バヌアツ



(出所:Asian Development Bank, Bloomberg

(画像:Photo by Kah Hay Chee on Unsplash  )