[フィリピン] コロナは人々にどのような影響を与えたか?

2021/10/06


世界各地でいまだコロナウイルスとの戦いが続いています。今日は、総合不動産サービス会社コリアーズ・フィリピンが行った、コロナが人々の志向に与えた影響についての調査の結果をご紹介していきましょう。


まず、コリアーズ・フィリピンの第2四半期のメトロマニラ不動産市場レポートからは、第2四半期は、以下のような傾向がみられたことがわかりました。


①オフィス成約・コンドミニアムのプレセールは不活発な状態が続いている

②一方でオポチュニティも見られ、、アウトソーシング企業はメトロマニラ内外でオフィススペースを探しており、レジデンシャルデベロッパーも繰り越し需要を見込んでプロジェクトの発売を継続している。



こんな中、コリアーズは、「オフィス」「レジデンシャル」「工業不動産」「ホテル」に関連して、コロナウイルスパンデミックが企業や人々の考えにどのような影響を与えたのかを調査しています。



■オフィス


まずは、従業員を職場へ戻す取り組みとして各企業が行っている施策です。回答企業の76%が従業員を出勤/在宅に分ける、と回答しており、フレキシブルな働き方への志向が続いていることがわかります。コリアーズは、今後も6か月から12か月は、このようなハイブリッド型の働き方が実施されると見込んでいます。13%がオフィスへの無料送迎を提供する、6%が新しい健康的な環境のオフィスビルを提供する、4%が執務エリアを広くすると答えています。


また、従業員がワクチン接種を完了したら、従業員全体の何割を職場に戻したいかという質問に対しては、約42%が5割と答えています。このことから、ハイブリッド型の働き方は、すべての従業員のワクチン接種が完了しても、もしくはメトロマニラで集団免疫が獲得できた後でも、続く可能性があることを示唆しています。


世界的な専門サービス機関、アーンスト・アンド・ヤング(EY)が行った調査では、東南アジアの1,037人の回答者のうち、規制が緩和されたらフルタイムでオフィスで働きたいと答えた人はたったの15%でした。32%は好きなところで働きたいと回答し、29%はフルタイムリモートで、23%はハイブリッド型の働き方をしたいと回答しています。


また、コリアーズは、不確実性が続く中、オフィススペースのリース期間の希望についても調査しています。これによると、回答者の28%が3年と答えましたが、25%は1年、24%は2年、23%は通常のリース期間である5年と答えており、今後5年間のテナント企業の見通しはかなり分かれる結果となりました。


コリアーズは、家主から引き出した低い賃料のメリットを最大限に生かすべく長めのリースを選択するテナント企業がある一方で、もうすぐリース期間の満了を迎えるテナント企業は、不確実性の時代を乗り切るべく、より慎重に短め、あるいはフレキシブルなリース期間を選択する傾向にありそうだと述べています。パンデミックの中、様子見のアプローチをとる企業もあるようです。



■レジデンシャル


コリアーズはまた、レジデンシャル需要の傾向についても調べています。中心業務地区(CBD)内にコンドミニアムユニットを購入する際に、最も考慮する点は何かという質問に対して、62%の回答者が「オフィス、モール、その他アメニティへの近さ」を考慮するポイントNo.1に挙げています。このことから、住まいを選ぶにあたって、利便性やアクセスの良さを優先する傾向が分かってきます。一方で、住む(live) -働く(work) -遊ぶ(play)ライフスタイルを選んだ人は16%、デザインやレイアウトを選んだ人は13%、仕事スペースやフレキシブルスペース、オープンスペースなどがあることを選んだ人は8%でした。


コリアーズは、パンデミックによって人々の優先順位に変化が生まれているとして、デベロッパー各社に対し、CBD内に住む利点やインテグレーテッド・コミュニティ(総合タウン)的な要素を強調したり、アメニティや施設の改善を行ったりすることを提案しています。


また、物件を購入する際に最も重要な要素について聞かれると、64%の人がロケーションだと答えています。続いて、14%が支払条件、11%がデベロッパーの実績、8%が住宅ローンの金利、2%がアメニティと答えました。


このことから、半数以上が、公共交通機関のハブや基本的なモノやサービスを提供するお店に近い物件を好む傾向にあることが明らかになりました。


コリアーズは、デベロッパー各社に対して、インフラプロジェクトに近いエリアの土地取得を進めることを提言する一方で、購入者に対しては、インフラ開発に近いエリアのプロジェクトが出ないか注意して見ておき、現在デベロッパーが提供しているような魅力的な支払いスキームを最大限活用するように提案しています。


さらに、パンデミック後に取得したい物件タイプについては、46%が地方の一戸建て、35%が中心業務地区の周辺エリアのコンドミニアム、そして19%がビーチハウスと答えています。


このことから、居住スペースが比較的大きい、低密度な周辺エリアの人気が高まってきていることがわかります。




■工業不動産


次に、フィリピンでもますます人気が高まる、Eコマース関連の質問です。オンラインで購入する可能性がある商品タイプについての調査で、40%が食糧品・日用品と答えました。続いて、衣服・靴が24%、ハードウェアと電子機器が18%、家具・家電が12%、医薬品が4%、自動車部品・附属品が2%でした。


Eコマースの需要の高まりが、さらなる倉庫の必要性を支えることになりそうだとコリアーズは述べています。



■ホテル


渡航制限が解除されたら、国内のどこに旅行に行きたいかについて調べた調査では、世界のベストアイランド、ベストビーチなどに度々ランクインするパラワンと答えた人が43%、ボラカイが36%でした。国内旅行ができるようになったら、ビーチを訪れたいフィリピン人の割合が非常に多いことがわかります。


観光省(Department of Tourism)は、2022年までには早ければ国内観光業が回復し、需要は2019年の90%レベルまで戻ってくると予測しています。国内旅行は、地元のレジャーセクターの回復をリードする存在になりそうです。


また、企業等の会議(Meeting)、企業等の行う報奨・研修旅行(インセンティブ旅行)(Incentive Travel)、国際機関・団体、学会等が行う国際会議 (Convention)、展示会・見本市、イベント(Exhibition/Event)の頭文字を取ったMICE関連の調査として、コリアーズはこのような調査もしています。


パンデミックが始まって1年半、5つ星ホテルのコンベンションセンターなどで行われる対面のイベントに参加してみたいと思うかという質問に対しては、なんと80%の人が「いいえ」と答えています。「はい」と答えたのは20%でした。


地方政府や民間企業がワクチン接種を進めているものの、多くの人が依然として対面でのイベントに参加する自信がないようです。一方で、「はい」と答えた人については、ワクチン接種が進み、厳しい健康・安全のための手順がホテルで実施されていることへの信頼感を表れとも取れます。


観光局によると、メトロマニラのホテルスタッフの90%以上はすでにワクチン接種済みだということです。



(出所:Colliers

(画像:Photo by Eibner Saliba on Unsplash )