[フィリピン]2019年第2四半期メトロマニラ不動産市場概況

フィリピンを代表する不動産コンサルタント会社JLLは、7月末に2019年第2四半期の不動産市場レポートを発行し、2019年第2四半期のメトロマニラ、セブ、ダバオの不動産市場と、2019年前半期のカラバ(カヴィテ、ラグーナ、バタンガス)の工業用地市場についてのリサーチを発表しました。まずは、2019年第2四半期のメトロマニラを見ていきましょう。

メトロマニラの不動産市場(2019年第2四半期)


1.オフィス市場

(1) 供給

期間中8つのビルが完成し、およそ156,000㎡のオフィススペースが在庫に加わり、2019年のオフィススペース供給量は336,700㎡となりました。2019年第2四半期に完成したビルのロケーションは、メトロマニラ内でもバラバラで、それぞれ、マカティ、ムンティンルパ、パラニャケ、パサイ、ケソン、タギッグとなっています。新規追加のうち最大となったのが、パラニャケシティのMRMターミナル社のPITXタワー4で、総面積19,200㎡となっています。

それに続くのは、ダブル・ドラゴン・センター・ウェストの17,600㎡、フィリンベスト・マカティの100ウェストの14,300㎡、SMシティ・フェアビュータワー1の12,600㎡でした。

2019年第2四半期時点で、グレードA~Bのオフィススペースの供給量は、合計810万㎡となり、そのほとんどがタギッグシティ、続いてマカティとなっています。これには、すでに確立されたCBDであるマカティとボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)の存在があります。しかし、オフィス需要とその集中は周辺エリアにも拡大しています。この背景には、タギッグシティのマッキンリー・ヒルや、マッキンリー・ウェストの存在や、チノ・ロセスアベニュー沿いやその他のタウンシップに建設中のオフィス物件などがあります。


(2) 需要

メトロマニラでは、相次ぐオフィス物件の完成にもかかわらず、空室率6%と制御できる範囲に保たれています。テナントがついていないオフィススペースのほとんどがタッグシティに集中していますが、これは最近BGCに完成した新築物件によるものです。続いて、マカティシティ、ケソンシティとなっています。

オフショアおよびアウトソーシング(O&O)がオフィス物件の需要の主要なけん引要素となっており、2019年第2四半期のオフィス物件のうち128,100㎡ほどを占めています。2019年前半期では、約181,000㎡のオフィススペースをO&O企業が占めています。しかし、前期比ベースでは、O&O企業によるオフィススペースの賃貸面積は鈍化しています。というのも、フィリピン経済区庁(PEZA)の承認が下りているITセンターが特にメトロマニラでは限られているため、これらの企業の中には、周辺の州に進出したものもあるからです。

2019年第2四半期、PEZAの認証を得た建物はたった2軒(タギッグシティとイロイロシティにそれぞれ1軒ずつ)でした。さらに、政府の行政命令2019年のNo.18では、より多くの経済特区を地方につくるべく、メトロマニラにある物件の見直し・承認の申請を禁止しています。

オンライン・ゲーミングは、引き続き2019年前半期のオフィススペース占有第2位につけており、占有オフィススペースはメトロマニラだけで合計160,000㎡、うち119,200㎡が2019年第2四半期に取引されました。ケソンシティでは、POGO(オンラインゲーミング会社)が1社が、ケソンシティのビル1棟、総賃貸面積10,400㎡と、パニャラケシティのビル2棟の大部分を賃貸しました。2019年6月時点で、PAGCORに登録されているPOGOは全部で56社となっています。

製薬会社もまた2019年前半期のオフィススペースの牽引要素となったのは驚くべきことで、メトロマニラでの拡大を主な理由として、約45,100㎡を賃貸しています。次に賃貸面積として大きかったのは、フレキシブル・ワークプレース・オペレータで、メトロマニラで約14,400㎡を賃貸しています。

主要な国内外の企業が積極的に事業拡大計画をすすめており、CBDエリアだけでなく二次的なビジネスハブにおいてもそのプレゼンスを拡大しています。2019年第2四半期では、WeWorkはマカティCBDのPCBCプラザに国内2番目となる施設をオープンさせました。


(3) 賃貸料

マカティCBDにおけるプライムオフィスビルを主な理由として、マカティシティの賃貸料が引き続き最高レベルとなりました。マカティCBDのオフィス供給には限りがある上に、プライムオフィスビルもあり、需要も堅調なことから、家主が賃貸料を引き上げています。賃貸料第2位は、タギッグシティで、BGCにおける最新のビル設備が堅調なオフィス需要をけん引しました。一方で、ベイエリアではオンライン・ゲーミング会社によるオフィス需要が好調で、さらなる賃貸料の上昇につながりました。

一方で、2019年後半期から2022年までに完成が見込まれる物件の希望賃貸料は、タギッグシティの既存の物件の賃貸料の価格帯に近いものとなっています。タギッグシティでは、BGCにおけるグレードAオフィスの開発が相次いでおり、価格帯の高額域を広げています。米国のLEED(Leadership in Energy and Environmental Design)への登録、またはフィリピン・グリーン・ビルディング・カウンシルのBERDE認証が、環境への配慮のために建物に採用された品質、技術および設備によって、賃貸料の価格上昇に影響を与えています。


2.レジデンシャル・コンドミニアム不動産市場

(1) 供給

2019年第2四半期には、2,000超のユニットが完成予定で、そのほとんどがマカティとタギッグシティに集中しています。2019年後半期、工事の遅れなどがなければ、約35,500ユニットがさらに市場に追加される予定で、最高レベルを記録することになります。マカティシティとケソンシティが、既存・新規のコンドミニアム供給の大部分を占めています。今後3年で成長が顕著なのはパサイシティで、これはベイシティの投資増によるものです。複数の都市で、既存・新規のコンドミニアム供給の大部分がSMプライム・ホールディングスによるもので、中でもパサイシティは、今後市場投入されるコンドミニアムユニットの90%がSMプライム・ホールディングスです。


(2) 需要

メトロマニラの平均空室率は2%を記録しました。パサイシティとパラニャケシティは、オンラインゲーミング関連のテナントにより、マカティシティとケソンシティは社会人および学生による賃貸活動が活発でした。メトロマニラでは、安定したプレセールが見られ、今後完成予定の物件の高成約率からもそのことが見て取れます。パラニャケシティは他の地区と比べると若干遅れをとっていますが、これは、郊外の物件に多く空きユニットが残っているからです。

需要をけん引したもうひとつの要素は賃貸市場です。O&O企業やMNC(多国籍企業)の従業員、大使館の職員といった外国人の法人住宅需要を背景に、アッパーミドルからラグジュアリー物件の賃貸市場が活発になっています。

さらに、賃貸、値上がり後のフリップを目的とした、国内外の富裕層投資家によるアッパーミドルからラグジュアリー物件の販売市場も活発です。一方で、新婚・小さな子どものいる家族、働く若者や、住まいのアップグレードを求める個人によるミドルレンジの物件のエンドユーザーとして需要も顕著でした。


(3) 賃貸料および販売価格

外国人従業員にけん引される堅調な賃貸市場により、マカティシティとタギッグシティの賃貸料は引き上げられ、国内でも最高レベルを記録しています。一方でパサイシティとパラニャケシティの賃貸料は、オンラインゲーミング企業関連の健全な需要の影響を受けています。

販売価格について言えば、マカティシティが中古・新築両方において最高レベルを記録しています。パラニャケシティの価格も継続的に上昇しています。特に今後の新築物件についてその傾向は顕著で、こちらはベイシティへの関心の高まりによるものです。



3.リテール不動産市場

(1) 供給

2019年第2四半期時点の既存在庫は、650万㎡となりました。ケソンシティがマーケットシェア最大の27%を占めており、続いてマニラシティが13%、パサイシティが11%となっています。今後2019年~2022年までで、さらに673,500㎡が追加される見込みで、今後の在庫見込みのうち29%はパラニャケシティのアヤラモールズ・ベイエリア(192,000㎡)となっています。


(2) 需要

平均空き店舗率は3.0%となっており、タギッグシティは堅調な稼働率(約98%)を見せる一方、パシッグシティがザ・ポディウムの拡張により最高の空き店舗率(約8~9%) を記録しました。

飲食店が、リテール需要を引き続きリードしています。2019年第2四半期には、BGCのセントラル・スクエアのShake Shack、SMサン・ラザロのOriginal Cake、SメゾンのFamous Amos、プロムナード・フードコート・グリーンヒルズの台湾ブランドOne Zoなど、外国の飲食店ブランドの参入が目立ちました。

同四半期にフィリピンに進出した飲食店ブランドはほかに、Tiger Sugar、ぼてじゅう、J.Co、Soban、Pound by Todd English、Pho Hoaなどがあります。

衣料品・アパレル、靴、鞄などのファスト・ファッションブランドもまた、2019年第2四半期の市場を独占しました。Parfois、Charles and Keith、Onesimus、Ever New、Terranova、Superga、Daniel Wellingtonなどといった有名ブランドが店舗拡大を遂げました。

2019年第2四半期は、スキンケアブランド、特に韓国ブランドのオープンが目立ちました。良く知られたブランドとしては、The Saem、the Face Shop、Innisfreeなどがあります。フィリピン再進出の一環として、InnisfreeはSMメガモールに2店舗目をオープンさせています。


(3) リテール賃貸料

平均賃貸料は、月々平米あたり1,100~2,700ペソ(約2,300円~5,600円)となっています。


4.ホスピタリティ不動産市場

(1) 供給

2019年第2四半期、1軒のホテルがオープンし、新しく93室がマニラの在庫に加わりました。2019年前半期に新規追加分は486室で、ほとんどがシェラトン・マニラ・シティとホテル・ラッキー・チャイナタウンによるものでした。2019年後半期には、さらに4,800室が追加される見通しで、在庫が41,000室超に引き上げられることになります。主要な穂手うrとして、レッド・プラネットホテル複数軒、アルーガ・バイ・ロックウェルのフェーズ3、ドゥシットD2ザ・フォート、セダホテル複数軒、ノボテル・マニラ、ホテル・オークラ、パーク・イン・ノースEDSAなどがあります。

今後数年は先細りの見込みですが、特にパラニャケ、マカティ、ケソンシティ、タギッグでは在庫増が見られるでしょう。ベイエリア(パサイ+パラニャケ)とマカティがホテル在庫の大部分を占め、これら3都市が今後の供給を支配することになるでしょう。


(2) 需要とそのけん引要素

パラニャケが最高稼働率を記録、カジノ客による強い需要に加え、NAIA(ニノイ・アキノ国際空港)に近いロケーションもあって、稼働率は90%を超えました。その他のエリアの稼働率は、70~80%にとどまりました。

一方、ビジネス・法人、MICE*先としては、マカティとBGCが引き続き堅調な需要を見せました。
*Meeting(会議・研修)、Incentive(招待旅行、travel, tour)、Conference(国際会議・学術会議)またはConvention、Exhibition(展示会)

ケソンシティの需要は主に国内企業および政府系のMICEイベントにけん引されました。


(3) 室料

デラックスルームの室料を元にすると、ザ・マニラ・ホテルとクリムゾンホテルのあるマニラシティとムンティンルパシティが、一部屋あたりの宿泊費の最高額をつけました。タギッグシティの室料は、11,000ペソ(約22,700円)~となっており、これは市内に比較的高級ホテルが多いことと、BGCがあることによります。

(出所:Business Inquirer