クアラルンプールの投資環境と新規プロジェクト2018年

2018/04/24

クアラルンプールの投資環境と新規プロジェクト2018年


クアラルンプール

クアラルンプールはマレーシア語で「泥が合流する場所」という意味があり、市中心部にある代表的なモスク「ジャメ・モスク」の付近で、ゴンバック川とクラン川が合流していることが基になっています。正式には連邦領クアラルンプール(Wilayah Persekutuan Kuala Lumpur)と言います。

多民族が平和的に共存するマレーシアの首都らしく、多彩な文化が混ざり合ったことがかもし出す賑やかな雰囲気が特徴です。近年は高速道路や市内鉄道、モノレールなどのインフラ開発が進み、豊かな緑の中に高層ビルが立ち並ぶ東南アジア有数の近代都市となりました。また、東南アジアの大都市には珍しく、市街地が清潔で治安がいいことも特徴です。


アメリカのシンクタンクが2017年に発表した総合的な世界都市ランキングにおいて、世界49位の都市と評価されました。東南アジアではシンガポール、バンコクに次ぐ3位です。また、日本の民間研究所が2016年に発表した「世界の都市総合力ランキング」では、世界32位と評価されており、東南アジアではシンガポールに次ぐ2位です。 


連邦政府機能を市東南郊外の新行政都市プトラジャヤ(Putrajaya)へ移す計画が進行中です。

(出所:Wikipedia


(データ元:World Population Review


クアラルンプールに投資するメリット


マレーシアの政府系組織であるインベストKL社は、大クアラルンプール (Greater Kuala Lumpur、クアラルンプール首都圏またはクランバレー)に投資すべきメリットを以下のように説明しています。

1.戦略的な立地
■世界各地へのアクセス良好な中心的な立地
・アセアンの中心にあり、大クアラルンプールの戦略的なロケーションがアジアの新興マーケットとの接続がよく、アジア圏で戦略的なビジネスを展開するのに最適な立地。
・アジアのキーとなるビジネスの中心地へ飛行機で6~8時間
・東京、香港、北京、上海およびソウルといったアジアの主要なビジネスの中心地までは大クアラルンプールから数時間
・マレーシアのもつ強力な提携関係およびビジネス上のつながりから得られるベネフィット
・2016年、マレーシアは韓国、中国、アセアン、EUおよびUAEなどを相手として1兆4900億リンギット(約41兆円)の貿易額を記録
・マレーシアは、自由貿易協定、二重課税防止条約、地域包括的経済連携を含む世界的または地域的な貿易協定に参加。マレーシアは以下の国々とFTAを結んでいる:日本、ニュージーランド、インド、フィリピン、オーストラリア、中国、韓国

2. ビジネスフレンドリー
マレーシア政府が主導する、ビジネスフレンドリー政策および魅力的な財政刺激策により、マレーシアは世界的なビジネスのしやすい国のひとつとなっている。

■ビジネスのしやすさ
世界銀行のビジネスのしやすさレポート2017では、マレーシアはASEANでは2位、世界では190か国中23位にランクイン。

■政府のサポート
マレーシアを高収入な先進国へと導くための主要公的機関改革と民間部門主導の課題構成される政府改革プログラム (GTP) および経済改革プログラム (ETP)が政府の商業活動へのコミットメントとサポートを表している。

3. 安定した政局
■安定した政府
マレーシアは独立60周年を迎え、民主政権率いる政治的に安定した環境が続いている。

■緩和的な政策
政局の安定を通して、マレーシア政府のリベラルな資本政策、外国人の雇用および税金インセンティブといった政策が、投資家フレンドリーなビジネス環境を与えている。

4. 豊富な機会
■成長重視
経済改革プログラム(ETP)のもと、マレーシアは持続可能な経済成長目標を達成するために12の国内経済の主要エリア (NKEAs)に集中することで2020年までに高収入国家を目指す。

■外国投資の奨励
・大クアラルンプール/クランバレー地域のイニチアチブの中でも、NKEAひとつとして位置づけられるのが、地域における本部機能を設立する外国直接投資を促進するための2011年インベストKLの設立
・存続能力のあるセクターが高度成長とビジネスの終わりなき可能性を提供するので、政府により認められてきた12の経済の主要エリアにテコ入れするように投資家は奨励されている。

5. インセンティブ
■包括的な対策
大クアラルンプールに進出する企業は、民間部門と外国人投資家の経済参入を促進するためマレーシア政府が提供するインセンティブを受けることができる。

■特定インセンティブ
プリンシパル・ハブのような既存の税制優遇措置により、多国籍企業(MNCs)は、税務上、税務上以外の優遇措置をうけることができる。以下のような事業にも税務上の優遇措置がある。
  - バイオテクノロジー
        - ハラル事業
        - 製造業
        - サービス業
        - 農業
        - 情報技術 (IT)
        - 金融サービス

6. インフラ
■輸送インフラ
クアラルンプール-シンガポール高速鉄道(2026年完成予定)、MRT/LT、MRL東海岸レイルリンク(2024年完成予定)といった大規模鉄道網、ワールドクラスの空港(KLIA)および世界第12位の港湾(クラン港)など、大クアラルンプールと国内/国外各地との接続を提供する。

■テレコミュニケーションインフラ
モバイル、Wifi、高速ブロードバンドサービスを含む発達したテレコミュニケーションインフラを持ち、マレーシアは8.9メガビット毎秒の平均速度を記録している(Akamaiレポート 2017)。

7. 才能のある人材確保
■教育を受けた労働力
マレーシアは毎年平均200,000人の新卒を排出し、これらの才能あふれる若者たちの33%は卒業後よりよりキャリアの機会を求めて大クアラルンプールに向かう。

■複数言語に堪能
2016年のEF英語能力指数によると、マレーシアは英語の運用力の高さにおいてASEAN2位となった。マレーシア人は多文化な背景および民族性出身であるため、英語とマレー語(国語)以外に、マンダリン、タミル、その他の方言を話せる人材がいる。

■生産性のある労働力
世界経済フォーラムの2016年‐2017年世界競争力報告で、マレーシアは賃金-生産成立において、138か国中6位にランクイン。

8. 競争力のあるビジネスコスト
■低い賃貸料
2016年ナイトフランクリサーチによると、2016年第1四半期、オフィススペースの月額平均賃貸料は、シンガポールの69.8USドル/㎡、メルボルンの32.0USドル/㎡、香港の190.3USドル/㎡、上海の45.2USドル/㎡と比べると、クアラルンプール市街地でたったの14.7USドル/㎡。

■競争力のある賃金
マレーシアの従業員の平均年間賃金は、近隣諸国と比べるとまだまだ競争力がある。マネジャーレベルの石油エンジニアの賃金は、年間平均300,000リンギ(71,412USドル)、一方でシンガポールは250,000シンガポールドル(184,993USドル)、中国は400,000人民元(60,710USドル)となっている。ファイナンスディレクターの賃金は、年間420,000リンギ(99,977USドル)、一方で香港で300万香港ドル(384,371USドル)、中国で250万人民元(379,437USドル)となっている。

■比較的低めの法人税率
2017年、マレーシアの法人税率は24%、一方でオーストラリアは30%、インドは30%、日本は23.4%、フィリピンは30%、米国で15~39%であった。

9. 強固な法的枠組み
■確立された司法制度
マレーシアは確立された司法制度をもち、法人に対して強固な法律上の保護を与えている。大クアラルンプールには、クアラルンプール地方仲裁センターがあり、地域内の貿易、商業、投資に関する紛争解決ができる。

■強力な投資家保護
世界銀行の2017年ビジネス環境レポートで、マレーシアは少数派株主の保護で第3位にランクしている。

10. 住みやすさ
■住宅およびアメニティの入手しやすさ
大クアラルンプールの青々とした南国の環境が、暮らし、仕事、遊びに活気を与える場所となっている。外国人用住宅エリア、ヘルスケア/医療センター、インターナショナルスクールにショッピングスポットといった、住宅およびワールドクラスの設備もよりどりみどりである。

■移動のしやすさ
ライトレイルトランジット(58km、クラナジャヤ~スリぺタリン~プトラハイツ)、クランバレー・マス・ラピッド・トランジット・ライン1およびライン2(103kmスンゲイブロー~カジャン/プトラジャヤ)、KTMインターシティ(1,677km、電気複線鉄道)およびERL線(57km、KL~KLIA間を160km/hで結ぶ)などの統合された公共交通機関網。

■手ごろな住宅価格
クアラルンプールは住むのに世界でも最も安価な都市のひとつです。Mercerの2017年生活費調査で、クアラルンプールは、209か国中165位にランクイン*しました。(*生活費が高い都市から低い都市への順)

(出所:Invest KL


不動産セクターの動き

マレーシアン・リザーブ紙では、クアラルンプールの不動産セクター、特にレジデンシャルセグメントの動きについて以下のように説明しています。

住宅開発・投資先としてKLはすべての条件をそろえています。絶好のロケーション、投資フレンドリーな政府の政策、公共交通指向型の空間、急成長中の経済と豊富なスキルをもった労働力により、東南アジアおよびアジアパシフィックにおいて最も理想的なロケーションのひとつです。

急激に伸びている不動産セクターが、首都ひいては国の大きな収入源のひとつとなっています。

クアラルンプールの立地も絶好です。シンガポールからは飛行機で1時間、インドネシア・ジャカルタからは2時間。マラッカ海峡など貿易中継地から近いのも特徴です。年中天気がよく、自然災害や物流上の課題とは無縁です。

昨年、地域で最も有望な通貨のひとつとして浮上したリンギットは、投資家、観光客、ローカルにとって長年魅力でした。輸出のリバウンドと昨年予想よりも経済成長が伸びたことを受け、リンギットは今後も投資家に良い収益をもたらし続ける態勢にあります。というのも、国内消費は今後も加速するからです。

レジデンシャルセグメントでは、高層および土地付きのサブセクターの需要が引き続きあるとしています。バイヤーの目も肥えてきて、高級物件がトレンドをけん引するとみています。

クアラルンプールのコンドミニアム市場は、市街地に近い成熟済みのエリアに集中しています。CBRE-WTWによると、十分な設備とアメニティをうたった物件が多く、価格は平方フィートあたり700リンギット(約19,380円)からとなっています。ゴールデントライアングルとゴールデントライアングル周辺を含む中央クアラルンプールは一般的には投資目的とした商業ハブ、一方でモントキアラおよびスリー・ハルタナスは住むのに適しています。
およそ32%の高層住宅ユニットが、平方フィートあたり1,001リンギットから1,500リンギット(約27,710円~約41,530円)で、2018年このセグメントはさらに拡大する見通しです。

クアラルンプールのコンドミニアム販売は、市場は比較的緩やかに拡大する一方で空室率もほぼ変わらず、新規ローンチも続き、改善が見られました。

交通機関の使いやすさも、クアラルンプールの魅力に加わっています。通勤者のオプションとして、バスやシャトルに加え、ライト・レイル・トランジット、マス・ラピッド・トランジット、モノレール、KTMコミューターもあります。ウーバーやグラブもまた、クアラルンプール市内であちこち移動するのに人気の選択となっています。

市街地の既存のリテールスペースもまた占有率と賃貸料について弾力的でした。ただし、リテールシーンも進化を続けており、市場状況をさらに挑戦的なものにしています。

マレーシアへの観光客の流入もまた、リテールおよびホスピタリティ産業に恩恵を与えています。観光客は、マレーシアの多様性に富んだ文化に惹かれ、2015年の2,572万人から、2016年は2,675万人へと4%増加しました。また、ビザ要件の緩和や物価の安さもまた貢献しています。

ナイトフランクマレーシアは、その2017年前半期マレーシア不動産ハイライトレポートの中で、安定した不動産市場と比較的低いエントリープライスである程度のリターンが見込めることから、マレーシアは引き続き魅力的な投資先となるだろうとしています。

最近の国内市場のリバウンドも、リンギットのテコ入れと安定した雇用市場と相まって、クアラルンプールの強みとなるでしょう。世界がクアラルンプールの不動産セグメントの投資価値とリターンに気づけば、クアラルンプールのスカイラインが近い将来拡大することも難しくはないでしょう。

(出所:The Malaysian Reserve