2024/04/07
フィリピンのボニファシオ・グローバル・シティ(BGC)に本社の置く不動産会社 KMCサヴィルズが2024年の不動産市場に関する最新データと見通しを発表しています。
同社の新CEO ジョー・カラン氏は、まず2023年を振り返って、2024年まで需要が持続するとみられることから、今後予定されているオフィスビルの竣工は、「リース活動を活性化させるだろう」とする一方、空室率の上昇が予想されるとも述べています。
BGCは引き続き優良ビルの立地として好まれるエリアのようです。オフィススペース在庫は200万平方メートルを超え、今後予想されるオフィススペース供給は約18万2,000平方メートルと、すべてのサブマーケットをリードしています。
2023年第4四半期には、注目すべき取引がいくつかあり、約11万平方メートルのスペースが取得されました。その取引をリードしたのはマカティの新築ビルで、競争の激しいオフィス環境にもかかわらず高い稼働率を記録しているといいます。
マニラ首都圏のオフィス賃貸料は、パンデミック後、平米当たり平均858ペソ(約2,300円)と安定し、パンデミック前より6.7%低下しました。注目すべきは、IT-BPMセクターの需要が絶えないイロイロの賃貸料が、パンデミック後も上昇したことです。IT-BPMセクターは、人材が豊富で賃金が比較的低いとされるマニラ首都圏以外への進出を続けると見られています。
工業不動産部門では、「製造業とロジスティクスが産業ハブの道を切り開いている」として、現在のテナント市場の半分近く(41%)を製造業が占めています。
倉庫スペース在庫の半数以上を占めるのがラグーナ州です。しかし、空室率の上昇は倉庫賃料を圧迫する可能性があります。KMCサヴィルズは、ブラカン州の賃貸料が42%、パンパンガ州の賃貸料が21%と大幅に減少していることを指摘しています。
住宅部門では、中堅消費者がマニラ首都圏以外で夢のマイホームを購入する際に、Pag-ibig*を使う例が増えていると報告されています。金利の上昇に加え、職場の近くに住む必要性が低下し、中価格帯のコンドミニアム販売の減速につながっています。一方、デベロッパーは現在、ハイエンドと高級開発に力を入れており、過去2年間の新規発売戸数の60%を占めているということです。
*Pag-ibigは、フィリピンの社会保険のひとつ。主に住宅ローンを組むことができる相互基金で、家を購入する際に積立金とローンを使い、給与から天引きすることが出来る。 外国人労働者を除いて、全ての労働者に加入義務がある。
KMCサヴィルズによると、マニラ首都圏市場では、プレセールと即入居可の物件11万3,000戸のうち成約したのは65%です。約4万戸が未成約で、そのうち半分は中価格帯の物件だということです。
KMCサヴィルズは、2024年の不動産市場は引き続き回復基調だとして強気な見通しをしています。
特に、オフィス、小売、ホスピタリティについて楽観的な見方を示しています。一方で、工業不動産における需要と供給のミスマッチや、中価格帯住宅市場の飽和の可能性については警戒感を示しています。また、再生可能エネルギーの台頭やデータセンター産業など、現在初期段階にある新興市場についても注視していく必要があると述べています。
(出所:Manila Standard)
(画像:UnsplashのQuiara Valenzonaが撮影した写真)
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