海外不動産に固定資産税はかかる? 3つのポイントを専門家が解説!

2024/11/29

監修:海外不動産税務の専門家 大木宣幸
(公認会計士・税理士・宅地建物取引士)
International CPA Firms・大木国際会計事務所 代表



「海外に不動産を保有したら、どのくらい固定資産税ってかかるんだろう?」
「不動産にかかる固定資産税は、国によって異なるのかな?」



海外不動産を保有すると、固定資産税がどのくらいかかるか知っておきたいですよね。

海外不動産への投資を検討するにあたって、保有時のランニングコストを把握しておくのは重要です。

今回の記事では、海外での不動産保有にかかる固定資産税について、どのぐらいかかるのか国別の目安や支払い方法を専門家が解説します。



最後まで読むことで、海外不動産を保有するときにかかる固定資産税の相場感と国による違いを知ることができます。

海外不動産の保有にかかる固定資産税について理解して、保有時のコストとして認識しておきましょう。


海外不動産売却時の税金については、こちらの記事で詳しく解説しています。


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海外不動産の固定資産税3つのポイント


海外不動産にかかる固定資産税について、次の3つのポイントをおさえる必要があります。

1.固定資産税はかかるのか
2.固定資産税の目安はどのくらいか 
3.納税の時期・方法

では、ひとつずつ見ていきましょう。




1.固定資産税はかかるのか


日本の居住者(*)が海外に保有する不動産には、現地の法令に従って固定資産税がかかります。

海外の固定資産税は、不動産の保有者が、当該国や地域の法令を基準に算定された税額を、現地の地方政府などに納めます。

一方、日本の固定資産税は、固定資産の所有者が、その資産価値に応じて算定された税額を、固定資産の所在する市町村に納めます。

したがって、海外に保有している不動産に対しては、日本側では固定資産税・都市計画税はありません。


ただ、日本で確定申告する際には、海外不動産の収入・経費も含めた全世界の所得を申告する必要があります。

海外不動産の固定資産税は、投資用の物件であれば、日本側で経費計上が可能です。

(*)日本国内に住所を有しているか、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する人




2.固定資産税の目安はどのくらいか


海外に保有する不動産にかかる固定資産税は、その不動産が所在する国や地域によって異なります。

多くの場合は、現地当局が定める不動産の評価額に対して税率をかけて税額を算出します。

税率は、不動産の所在地や用途によって異なる設定がされていることが多いです。

一部の国や地域では、評価額ではなく、面積に対して係数をかけて算出する場合もあります。



以下の表で、海外不動産投資に人気のある国の固定資産税を比較してみましょう。


▼各国の居住用不動産にかかる固定資産税の比較(出所:PropertyAccess作成)


ここで見ているのは、保有する不動産に対して課される、日本でいう固定資産税に相当する税金です。

税金の名称も内容も、国によって異なることがわかりますね。


例えば、フィリピンの場合を詳しく見ていきましょう。

フィリピンでは、固定資産税に相当する税金は、Real Property Taxと呼ばれています。

不動産の所在地と用途に応じて決まった税率を、自治体が決定する評価額に乗算して算出します。

マニラ首都圏に不動産がある場合の最大税率は2%、地方の場合は1%です。


マニラ首都圏にある各自治体は、それぞれ固定資産税の税率を決定しています。

たとえば、2024年11月現在、投資先として人気のマカティ市やパシグ市は、居住用の不動産に対して一律1.5%です。

ただし、マカティ市では、税率の引き下げを検討中との
報道もありますので、最新情報を気にかけておく必要がありそうです。


フィリピンの場合は、固定資産税以外にも不動産の評価額に対して徴収される金額があります。

SEF(特別教育基金/Special Education Fund)というもので、固定資産税に追加して一律1%です。

これは、公立学校の維持や、校舎および設備の建設・修理などに充当されています。



では、実際の物件の固定資産税の例を見てみましょう。

こちらは、マカティ市の物件です。

購入時の支払対価が約710万ペソ(約1,820万円)だったのに対して、市の評価額は約110万ペソ(約312万円)でした。


※1フィリピンペソ=2.6円で換算

ただし、評価額はエリアによって大きく異なります

固定資産税のレベル感を具体的に知りたい場合は、購入する物件のあるエリアの実例をエージェントに聞いてみるのも良いでしょう。



一方、固定資産税が存在しない国や地域もあります。

ヨーロッパだとモナコやマルタ、カリブ海だとケイマン諸島やドミニカ、中東のアラブ首長国連邦、バーレーン、サウジアラビアなどです。

タイもそのひとつでした。

しかし、2019年新法「土地・建物税法(Land and Buiding Tax Act)」が成立し、2020年より土地建物税が課されるようになりました。

政府が定める不動産の評価額に対して、居住目的だと最大0.3%の税率が課されます。

税率は不動産の用途によって異なり、農業目的は最大0.15%、その他目的は最大1.2%です。


不動産の所在する国や地方自治体が発表する税に関する通達や、新しい法律の動きにも注意が必要です。




3.納税の時期・方法

海外不動産にかかる固定資産税の納税時期と方法も、国によって異なります。


一般的には、年1回または年4回分割払いが多いです。

支払うのを忘れると延滞税が課されることもあります。


日本に居住しながら海外の不動産を保有する場合、支払いは現地の管理会社などを通じて支払う場合が多いです。




再び、フィリピンのマカティ市の例を見ていきましょう。

マカティ市の通達によると、2024年の固定資産税は、商業不動産・工業不動産で2%、居住用不動産で1.5%となっています。

加えて、教育のためのSEFが追加で1%です。


年4回(3月末、6月末、9月末、12月末)の支払いが認められていますが、早期支払いによる割引もあります。

割引率は、固定資産税とSEFの両方を、1月20日までに一括払いすると10%、各四半期はじめの20日までに支払うと5%です。

期限通りに納税しない場合、未納額につき、ひと月あたり2%の延滞利息が発生します。

支払い方法は、オンラインとオフラインが選択できます。

オンライン:市の支払いサイトが利用可能です。(
https://makationlinepayments.com/
オフライン:市役所(City Hall)以外に、SMマカティモール内の「Makatizen Hub」と呼ばれるセンターでも支払いができます。


固定資産税は、基本的に不動産を保有していれば必ずかかる税金です。

期限を守って延滞税を避けることはもちろん、利用できる割引制度がある場合は、利用したいものですね。


とはいえ、日本に居住しながら、海外の税金について常に新鮮な情報を手に入れるのは容易ではありません。

現地の事情に詳しいエージェントや専門家に相談するのも良いでしょう。




まとめ

今回は、海外不動産にかかる固定資産税について、以下の3つのポイントをご説明しました。

1.固定資産税はかかるのか
2.固定資産税の目安はどのくらいか
3.納税の時期・方法

海外不動産には、不動産が所在する現地の法令に基づいて固定資産税がかかります。

日本側では、海外に不動産を保有していても固定資産税はかかりません。

固定資産税は、国によって、また不動産の所在する自治体によって、その課税対象も税率も異なります。


また、新法が成立して、今までなかった税金が課されるようになることもあります。

固定資産税の納税時期や方法も、国によって様々です。

支払方法は多くの場合、年1回の支払いか、年4回払いとなります。

早期に納税することで割引があったり、納税を忘れると延滞税がかかったりします。

利用できる制度を利用しつつ、正しく期日までに納税するためには、現地の事情にくわしい専門家のアドバイスを受けるのが良いでしょう。



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