2018/02/27
不動産投資は節税対策になるとよく言われますが、本当でしょうか。
節税の根拠は、減価償却費という現金支出のない経費があり、所得金額を減らすことができる、場合によっては不動産所得が赤字となり、損益通算で給与所得等の本業による所得を圧縮できる、というものです。
不動産投資と税
不動産投資では、一般に次のようなお金の流れ(キャッシュフロー)があります。
税金(所得税・住民税)は、次のように発生します。
減価償却費とは
不動産投資の際に取得する資産には、土地のように時の経過により価値の減少しない資産と、建物のように時の経過により価値が減少する資産(減価償却資産)があります。
減価償却資産は運用中に価値が減少するため、賃料収入に対する経費となりますが、取得した時に全額必要経費になるのではなく、その資産の使用可能期間の全期間にわたり分割して必要経費としていくべきものです。
使用可能期間は法定耐用年数が定められています。
法定耐用年数は例えば鉄筋コンクリート造で47年(住宅用)となっていますが、中古不動産を取得した場合、経過年数の一部が差し引かれ短くなり、法定耐用年数(47年)経過後は9年(47年×20%)となります。
なお土地については所有期間中の経費とすることはできません。
不動産所得と損益通算
不動産所得は
受取賃料-経費(管理費・修繕費・借入金の金利)-減価償却費
で計算します。現金支出の伴わない減価償却費を引くことができるため、その分節税となっているように見えますが、売却時に課税(後述)されるため税の繰延効果となります。
不動産所得は給与所得等と合算し、15~55%の税率で所得税・住民税を納税します。
不動産所得が赤字の場合は給与所得等から赤字額を差し引くことができる(*)ため節税感が高くなります。(実際は繰延です)
赤字だと投資メリットがないように感じがちですが、中古物件を購入した場合、償却期間が短いため減価償却費が高くなり赤字になりますが、ローン返済がなければキャッシュフローは通常プラスとなります。
*土地取得費用分の借入金の金利は損益通算の対象外です。
売却時
不動産を売却した際には譲渡所得に20%または39%の税金がかかります。(給与所得等総合課税の所得とは別に計算)
譲渡所得は、
譲渡価額-(取得費+譲渡費用)-特別控除
で計算しますが、取得費は所有期間中の減価償却費を差し引いたものを使用します。
例えば取得時1億円、所有期間中の減価償却費の合計5千万円の不動産を取得時と同じ1億円で売却した場合、売買益は0ですが、譲渡所得は5千万円になります。
減価償却費は、運用中の不動産所得では経費となり税額が下がりますが、売却時には売買益に加算され税額が上がります。(税の繰延効果)
税率は譲渡した年の1月1日時点の所有期間が5年超の場合20%(長期譲渡所得)、5年以下の場合39%(短期譲渡所得)となります。
不動産所得と譲渡所得で税率が異なるため、減価償却費部分が不動産所得では税額が15%~55%下がり、譲渡所得では20%または39%上がります。給与所得等総合課税の税率が高い方は、この差額が節税となります。
注意点
キャッシュフローを計算し納税資金・ローン返済資金計画を立てる
減価償却費は、耐用年数経過後は0となり、以後は税の繰延効果がなくなります。
借入により不動産を取得した場合、経費に計上する利息は元本の減少に伴って減少します。
いずれも不動産所得は増加する方向に作用し、税額も増加します。
一方、元利均等返済で借入を行なっている場合、返済額は一定です(利息は減るがその分元本返済が増える)。このため、年間のキャッシュフローがマイナスになる場合があります。
あらかじめキャッシュフローのシミュレーションを行い、納税資金・ローン返済資金計画を立てることが重要です。
節税対策として考える場合、税制改正の可能性、他の所得の動向も考慮
税制は不変ではありません。節税対策に始めた投資が税制改正により不利になってしまうこともあり得ます。
また、給与所得等の他の所得が下がった場合、節税にならないことがあります。特にリタイア後は所得が大きく変動するため注意が必要です。
購入する不動産の収益性、リスクを考慮
不動産価格が所有中の下落や賃料の減少は節税効果を簡単に打ち消す影響を与えます。
物件選択、販売会社・管理会社等の現地企業の選択も重要です。
海外不動産投資は為替変動の影響も受けます。また、国内と比べ情報入手も困難です。
所有する不動産個別のリスク以外にも、現地の法規制、税制、政治情勢、治安、自然災害等さまざまなリスクを認識した上で判断することが重要です。
税率の記載には、復興特別所得税(所得税額の2.1%)は含まれていません。
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