政治・経済からみた投資環境(シンガポール編)

2017/08/29

この記事のポイント

一人当たりGDPでは世界ランキングで上位10位内にランクイン(日本は23位)
世界でも有数のビジネス先進国で、ASEAN諸国と比べると緩やかながらも堅調に成長を維持
若い人口の多いASEAN諸国の中では、高齢化が進む国のうちの一つ

▶前回の記事:シンガポールの生活

前回はシンガポールの概要をご説明しました。今回は、特に政治と経済、および人口の観点からご紹介します。


政治

シンガポールでは、リー・クアンユー前首相の長男であるリー・シェンロン氏が、2004年から首相を務めています。2015年の総選挙では、与党の人民行動党が全89議席中83議席を獲得して圧勝しました。人民行動党は1965年の建国から一度も途切れること無く、単独で政権を擁立しています。
シンガポールでは投票は国民の義務とされており、棄権者には罰則が設けられていることが特徴です。2015年の総選挙での投票率は、9割を超えました。

 

経済

一人当たりGDPでは、世界ランキングで上位10位以内にランクインするシンガポール(日本は23位)。東京23区とほぼ変わらない面積ながら、インフラや税制等の整備を行うことで、世界でも有数のビジネス先進国となりました。成長率では、ASEAN諸国と比べ緩やかではありつつも、いまだに堅調な成長を維持しています。

次に、シンガポールの経済を指標から見てみましょう。

【一人当たりGDPランキング(2015)】

順位
国名
1
ルクセンブルク
2
スイス
3
ノルウェー
4
カタール
5
アイルランド
6
オーストラリア
7
米国
8
デンマーク
9
シンガポール






23
日本

(World Bankより作成)

【一人当たりGDPとGDP成長率の推移】
(出所:IMFより作成)

【GDP成長率推移の比較(単位:%)】
(出所:IMFより作成)

近年のシンガポールは、2〜3%前後の成長率を安定的に維持しています。2017年以降のIMFによる予想値でも、2022年までGDPの年間成長率は2%強を継続。一人当たりGDPはすでに世界有数の高い水準ではありながらも、毎年右肩上がりで成長すると予想されています。

【失業率の推移比較(単位:%)】
(出所:IMFより作成)

2017年以降の数値はIMFによる予想値で、いずれの国も2017年予想値と大きくは変わらない前提となっています。シンガポールの失業率は2%前後と、ASEAN諸国の平均と比べて低水準で推移しており、今後も同様の水準が継続すると予想されています。


人口

シンガポールの人口は561万人(2016年)。ASEAN諸国の中ではブルネイに次いで2番目に人口が少なく、2015年時点の世界の人口ランキングでは113番目の国です。平均年齢は40歳(日本は46歳)、14歳以下の比率は16%(日本は12%)、65歳以上の比率は12%(日本は27%)となっており、若い人口の比較的多いASEAN諸国の中では高齢化が進みつつある国のひとつです。

【世界の人口 2015年(単位:百万人)】

順位
国名
人口
110
キルギス
6.0
111
レバノン
5.9
112
デンマーク
5.7
113
シンガポール
5.5
114
フィンランド
5.5
115
スロバキア
5.4
116
トルクメニスタン
5.4
117
エリトリア
5.2
118
ノルウェー
5.2
119
中央アフリカ共和国
4.9
120
コスタリカ
4.8

(出所:Wordl Bankより作成)

【シンガポールの年齢別人口推移(単位:千人)】
(出所:United Nationsより作成)

シンガポールの人口は緩やかな増加が見込まれており、2025年ごろに600万人を超えることが予想されていますが、その時期から15歳〜64歳の人口は減少し始めると予想されています。労働力の中核となる生産年齢人口の減少だけでなく、65歳以上の人口増も予想されています。

【シンガポールの年齢別人口比率推移】
(出所:United Nationsより作成)

2050年にかけて14歳以下および15歳〜64歳の人口比率が減少する一方で、65歳以上の人口比率は増加することが予想されています。2040年には65歳以上の比率が30%になるペースと、シンガポールでは急速に高齢化が進むと懸念されています。

参考値として、日本の人口構成と推移を見てみましょう。

【日本の年齢別人口推移(単位:百万人)】

【日本の年齢別人口比率推移】
(出所:総務省統計局より作成)

日本の人口は、総数が減少していくとともに、65歳以上の人口比率の増加が予想されています。2015年時点で65歳以上の人口の比率は27%、30年後の2045年には+10%強の38%になると予想されています。2015年に12%だった65歳以上の人口比率が、2045年には+20%の32%と急増するシンガポールよりも、日本の高齢化の進行は上回る予想です。


次回は
安定した政治体制と世界有数のビジネス環境を武器に、堅調な成長を続けるシンガポール。限られた国土面積と人口ながら、東南アジア随一のビジネス先進国であるシンガポールから、ますます目が離せません!次回は、「シンガポールの不動産を外国人が購入するには?」について見ていく予定です。次回もお付き合いください!

▶次回の記事:日本人がシンガポールで不動産を購入する時の注意点