政治・経済からみた投資環境(タイ編)

2018/01/29

この記事のポイント

2014年のクーデター以降、軍事政権が継続
大洪水、軍事クーデターによる政治的混乱により近年の成長率は鈍化するも3%前後を維持
人口は2025年ごろまで増加傾向、その後減少の見込み

▶前回の記事:タイの生活

前回はタイの概要をご説明しました。今回は、特に政治と経済、および人口の観点から詳しくご紹介します。


政治

タイは政治的に不安定な状況となっており、2014年に起きた軍事クーデター[1]後は軍事政権が継続しています[2]。

政治体制は立憲君主制で、元首は2016年に就任したワチラロンコン国王[3](ラーマ10世)。実質的な最高指導者は、国家平和秩序評議会議長のプラユット将軍となっています。

国家平和秩序評議会は、2014年の軍事クーデターにより全権を掌握した軍事政権が創設した組織。評議会議長が首相を兼ね、立法権、行政権、司法権を持つ機関に対して大きな影響力を行使することができます。クーデターで廃止した国民議会に代わり国家立法会議が設置されましたが、過半数の議員は軍事関係者が占めています。[4]

経済

外国資本を積極的に導入することにより急速に経済発展を遂げたタイは、1960年代後半から1996年までは7%前後の高い成長率で発展しました。アジア通貨危機を経験した後、2001年から2006年にはタクシン政権が掲げた「デュアルトラック政策」という、内需振興と外需開拓の双方を取り入れる成長戦略が奏功し、成長ペースは加速[5]。その後、2011年の大洪水や軍事クーデターによる政治的混乱などの影響で、近年の成長率は以前と比べると鈍化していますが、それでも3%前後を維持しています。

主要産業は、製造業や農業となっています。[6]

次に、タイの経済を指標から見てみましょう。


【一人当たりGDPとGDP成長率の推移】

Chart(出所:IMFより作成)



【GDP成長率推移の比較(単位:%)】
Chart(出所:IMFより作成)

近年のタイは、3%前後の成長率となっています。2017年以降のIMFによる予想値でも、2022年までGDPの年間成長率は同様の水準を継続。一人当たりGDPは、2021年までは毎年右肩上がりで成長すると予想されています。

【失業率の推移比較(単位:%)】
Chart(出所:IMFより作成)
2017年以降の数値はIMFによる予想値で、いずれの国も2017年予想値と大きくは変わらない前提となっています。タイの失業率は1%前後と、ASEAN諸国の平均よりも非常に低い水準で推移しており、今後も同様の水準が継続すると予想されています。


人口

タイの人口は約6,800万人(2016年)。平均年齢は38歳[7](日本は46歳)、14歳以下の比率は18%(日本は12%)、65歳以上の比率は11%(日本は27%)となっており、シンガポールと並んで、若い人口の比較的多いASEAN諸国の中では高齢化が進みつつある国のひとつです。

【タイの年齢別人口推移(単位:百万人)】
Chart(出所:United Nationsより作成)
タイの人口は2025年ごろまで緩やかな増加が見込まれており、7,000万人近くに達するとされています。その後はゆるやかな減少が予想されています。

【タイの年齢別人口比率推移】
Chart(出所:United Nationsより作成)
2050年にかけて14歳以下および15歳〜64歳の人口比率が減少する一方で、65歳以上の人口比率は急激に増加することが予想されています。2050年には、65歳以上の比率が現在の約3倍となるハイペースで、タイの高齢化が進むと懸念されています。

参考値として、日本の人口構成と推移を見てみましょう。

【日本の年齢別人口推移(単位:百万人)】
Chart

【日本の年齢別人口比率推移】
Chart(出所:総務省統計局より作成)
日本の人口は、総数が減少していくとともに、65歳以上の人口比率の増加が予想されています。2015年時点で65歳以上の人口の比率は27%、30年後の2045年には+10%強の38%になると予想されています。タイでは、2015年に11%だった65歳以上の人口比率が、2045年には28%と2倍以上に増加するため、日本の高齢化の水準に近づいていくことが予想されています。


次回は

政情が不安定ながらも、堅調な経済成長を続けるタイに、今後も注目です!
次回は、「タイの不動産を外国人が購入するには?」について見ていく予定です。次回もお付き合いください!

▶次回の記事:日本人がタイで不動産を購入する時の注意点