2020/10/24
2020年(令和2年)度の税制改正大綱で、
海外不動産投資の節税はどう変わるのか。
税制改正大綱や海外不動産投資の節税について知る前に、ぜひ、下記の動画を見て欲しいと考えています。果たして、海外不動産投資で本当に節税をすることが、投資家にとって特になるのでしょうか。
答えは「否」だと考えています。
個人・法人問わず、海外不動産を活用した節税では、「所有している海外不動産を売却する際」に多額の納税をしなければならないのです。
詳細は下記の動画でご紹介しています。
いかがでしょうか。
動画を見られていないという方は、こちらに、海外不動産を活用した節税では、「所有している海外不動産を売却する際」に多額の納税をしなければならない理由を解説していますので、参照下さい。
2020年度(令和2年)の税制改正大綱とは
ここからはまず、税制改正大綱の内容と従来の節税スキームとについて解説します。
2020年度(令和2年)の税制改正大綱の内容
2020年度の税制改正大綱のうち、海外不動産投資の節税に関係があるのは以下の部分です。
3 租税特別措置等(国税)[新設]
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。
(1)個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。
①法定耐用年数の全部を経過した資産についてその法定耐用年数の20%に相当する年数を耐用年数とする方法
②法定耐用年数の一部を経過した資産についてその資産の法定耐用年数から経過年数を控除した年数に、経過年数の 20%に相当する年数を加算した年数を耐用年数とする方法
③その用に供した時以後の使用可能期間の年数を耐用年数とする方法(その耐用年数を国外中古建物の所在地国の法令における耐用年数としている旨を明らかにする書類その他のその使用可能期間の年数が適切であることを証する一定の書類の添付がある場合を除く。)(2)上記(1)の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除することとされる償却費の額の累計額からは、上記(1)によりなかったものとみなされた償却費に相当する部分の金額を除くこととすることその他の所要の措置を講ずる。
※引用:令和2年度税制改正の大綱
税制改正大綱の内容を要約すると、2022年の確定申告から、海外不動産投資によって発生した減価償却費を計上できなくするということです。なお、減価償却による節税はできなくなる一方で、物件を売却した時の譲渡所得税については、税額が少なくなる内容となっています。
海外不動産投資による節税とは、簡便法という計算方法を用いた減価償却を利用したものです。これは、税制改正大綱のうち(1)の①と②に該当しています。日本国内で定められた法定耐用年数を超過した木造物件について、価格のうち建物部分に該当する金額を4で割り算し、減価償却費として計上することで節税が可能となっていました。
2020年度の税制改正によって具体的には何が禁止されるのか、期間や物件などについて解説します。
税制改正で節税封じ込めが始まるのは2021年以降の所得についてです。2022年に行う確定申告分から節税スキームが使えないことになります。このため、2020年中の所得については、まだ海外不動産投資を利用した節税が可能です。
なお、税制改正大綱を確認する限り、節税できなくなるのは今後の確定申告分についてだけと考えられます。すでに確定申告が済んでいる分の所得について、遡及適用されるわけではありません。
税制改正による節税封じ込めは、主に個人が所有するアメリカの築古木造物件に対する投資が対象となります。具体的には、築年数が22年以上経過している居住用木造物件のことです。また、戸建住宅と集合住宅の双方とも対象となります。
日本国内では新築物件のほうが好まれるため、築古の木造物件は投資物件としてあまり価値が認められていません。しかし、アメリカではこのような物件も投資用物件として多数流通しています。アメリカでは、住宅市場の大半を中古住宅が占めていることや、何度もリフォームを繰り返して住宅寿命の延命をしながら住んでいく文化があるからです。
日本国内と海外とを問わず、不動産投資によって得られる金銭的メリットは3つあります。
今回の税制改正は、3つ目の節税効果を縮小することを狙ったものです。今後は継続的な家賃収入と不動産の値上がりによる転売益を狙っていく投資手法が一般化していくでしょう。日本国内も含めて、投資エリアや物件個別の比較が重要性を増していくと考えられます。
税制改正で禁止される節税とは具体的にどう計算するのか、例を用いて解説します。
海外不動産投資による節税は簡便法という計算方法を用いた手法であることを解説しましたが、簡便法による減価償却費を計上するためには以下のように計算します。
◯例:物件A
物件価格:3,000万円
建物比率:80%
築年数:23年
構造:木造
投資家の所得:2,000万円
まず、国税庁が構造と用途ごとに定めている法定耐用年数を確認します。居住用の木造物件は22年で居住用のRC造物件は47年です。
※参照:国税庁
物件Aの築年数は23年なので、法定耐用年数である22年を超過しています。法定耐用年数と築年数を確認したら、物件の減価償却期間を以下の計算式で計算します。
(耐用年数 ― 築年数)+ 築年数 × 0.2 = 減価償却期間
物件Aでの計算は以下の通りです。
(22年 ― 23年)+ 23年 × 0.2 = 4.6年 → 減価償却期間は4年
物件Aは法定耐用年数を超過しているので、カッコ内の計算は0と同等とみなします。また、計算結果の小数点以下は切り捨てとなるため、物件Aでは減価償却期間が4年となります。
続いて建物価格を計算します。減価償却費を計上できるのは建物部分についてのみです。減価償却費とは、資産の劣化によって自然に減少していく資産価値のことを指しています。土地は劣化しないため、土地については減価償却費の計上が認められません。
建物部分の価格は以下の計算式で計算します。
物件価格 × 建物比率 = 建物価格
物件Aに当てはめると以下のようになります。
3,000万円 × 80% = 2,400万円
これで、物件Aでは2,400万円を4年間かけて減価償却できることがわかりました。単年の減価償却費は以下の通りです。
2,400万円 ÷ 4年 = 600万円
物件Aを購入した投資家は、実際には600万円を支出していないのに、確定申告では600万円を経費として計上できます。計上できる期間は4年間です。投資家はもともと2,000万円の所得を得ていたので、控除を考慮しないと所得税額は以下の金額になります。
2,000万円 × 40% = 800万円
しかし、物件Aを購入することで投資家は400万円を損益通算できます。物件Aを購入した後の税金は以下の通りです。
(2,000万円 ― 400万円)× 33% = 528万円
税務上の所得が1,800万円を下回ったことで、所得税率が40%から33%に下がります。物件Aへの投資で発生する節税額は、800万円と528万円の差額である272万円です。
※参照:国税庁 所得税の速算表
※例示の計算は控除を含めていない簡易なものなので、実際の税額は異なります。
税制改正後は、前項で解説した減価償却費の計上ができなくなります。ただし、前項の計算では含めていませんが、物件運用にかかる諸費用は経費として計上可能です。このため、税制改正後は、物件運用でかかった経費だけが海外不動産投資による節税額となります。
税制改正された後は具体的にどういった投資戦略が考えられるのか、投資家が取り得る選択肢について解説します。
節税できなくなるのは2021年以降の所得についてです。2020年中は物件を保有していても問題ありません。すでに保有期間が5年を経過している場合は、2021年1月以降に売却するのも1つの方法です。まだ保有期間が5年未満の場合は、毎月のキャッシュフローが自分の求める金額に達しているか否かで判断するのが良いでしょう。
アメリカの住宅市場は人口増加などの観点で有望です。州による違いはあるものの、アメリカ全体では長期的に値上がりしています。キャッシュフローが赤字もしくはよほど少なくない限りは、保有し続けるのも有効です。
アメリカでは2020年に入って住宅が大きく値上がりしています。コロナの感染拡大による経済対策で、長期金利が史上稀に見る低水準となっていることが原因です。金利の上下動は景気動向に左右される部分が大きいものの、何年かは低水準のまま推移する可能性もあるでしょう。
今後、不動産価格が調整局面に入ることはありえるものの、暴落する心配は少ないと考えられます。値上がり局面が続いている間に売却するのも1つの選択肢ですが、ある程度の長期保有を視野に入れても良いでしょう。
冒頭の動画でも解説していますが、海外不動産を活用した節税では、「所有している海外不動産を売却する際」に多額の納税をしなければならないのです。
投資目的で所有する不動産を売却しようと考えた時に、残っているローンよりも高く売れれば損をすることはないと考える方もいるでしょう。
しかし、ここには大きな落とし穴があり、注意が必要です。
不動産投資で利益だけに目を奪われていると、せっかくの収益が税金として持っていかれることがあります。
土地以外の不動産、マンションなどの建物は、減価償却できる、つまり経費化することができます。
購入当時よりも家の価値が落ちているということができるため、建物の価値が減価すると言い、減価するようなものに対してはその価値減少分を経費に認めるというのが減価償却です。
減価償却の計算方法は、その資産の種類によって異なってきますが、基本的に減価償却できる期間、つまり法定耐用年数にのっとって計算していきます。
減価償却をすることによって、確定申告時に自分の所得(収入)を減らすことができ、所得税や住民税を節税することはもちろん可能です。
ただし、所有する不動産を売却する際は、この減価償却費を計算に入れた簿価で取引することになりますので、築年数が長く減価償却が進んだ物件ほど簿価の値段が下がり、売却時に譲渡益が発生しやすくなります。
譲渡益には税金がかかりますので、せっかく稼いだはずの収益が税金で持っていかれるという事態を生んでしまうのです。
動画で説明があるように、減価償却をして、節税をすることができたとしても、最終的に売却をしたときに、譲渡益に対して、税金がかかってしますので、結果的には節税した収益(取り分)を売却した際に、持っていかれてしまうということです。
つまり、海外不動産投資では「節税」を目的とするのではなく、ちゃんと「儲かる」物件を買うことが重要だということを皆様には理解してほしいと思います。
弊社では、海外不動産投資物件を紹介していますが、本当に価値のある物件を嘘偽りなく販売させていただいております。
気になる方は、お気軽に下記より、よりご相談ください、
もっと詳しく知りたい方はこちら