海外不動産投資を使った節税が禁止になった背景と内容をわかりやすく解説。対応策についても解説していきます。

海外不動産投資では大きな節税もできると謳われてきましたが、税制改正によって今後は節税ができなくなります。節税が禁止になった背景や税制改正の変更点に加え、今後の対応策についても解説します。


海外不動産投資を使った節税が禁止になった背景と内容をわかりやすく解説。
対応策についても解説していきます。


海外不動産投資を使った節税スキームとは

日本とは市場環境が異なる海外の不動産を用いると、不動産投資による節税が簡単にできるようになっていました。節税のやり方や、海外が節税に適していた理由などについて解説します。


そもそもどんなスキームか

結論からお伝えすると、海外不動産投資による節税では、アメリカ不動産に投資して減価償却費を計上するのが王道でした。

海外不動産投資で赤字が発生した場合は、日本での所得と損益通算が可能です。そして、減価償却による節税が目的ならば、築22年以上の木造住宅に投資するのが適しています。日本で定められた法定耐用年数を超過している不動産に投資すれば、減価償却費を最大化できるからです。

なお、節税目的の投資であれば、減価償却費を計上できなくなった時点で物件を売却するのが一般的です。しかし、築22年以上の木造住宅は日本ではかなり価値が低い部類に入ります。その一方で、アメリカでは立地を厳選すれば築古の木造物件でも値上がり益を狙うことが可能です。

また、国土が広いため日本と比較すると土地が安く、建物価格が高い物件が多い点も、アメリカが節税目的の不動産投資に適している理由の1つと言えます。


節税スキームの事例

例えば、日本円で3,000万円相当・建物比率80%の築23年木造物件を購入したとします。この場合は、3,000万円の80%相当である2,400万円を4年間かけて減価償却可能です。つまり、4年の間は毎年600万円を減価償却費として計上できます。

非常に簡易的な計算ですが、もし年収2,000万円の人が600万円の減価償却費を計上すると、所得税は以下のように変化します。


2,000万円 × 40% = 800万円 (投資前の所得税額)

(2,000万円 ― 600万円) × 33% = 462万円 (投資後の所得税額)

800万円 ― 462万円 = 338万円 (投資による節税額)


課税対象所得が2,000万円から1,400万円へ下がることによって、所得税率も40%から33%に下がっています。減価償却費の計上額によっては税率の差を利用できるのが、海外不動産投資による節税の最大の強みです。


節税効果まとめ

海外不動産を用いた節税は、日本では価値の低い築古木造物件に投資して減価償却費を計上して進めるものです。減価償却費を計上することで税率も下げるのが、節税効果を大きくするためのコツとなっています。なお、減価償却費を計上し終わった物件も問題なく売却できるという点で、特にアメリカは最適な投資先でした。


税制改正大綱により禁止になった海外投資の節税



海外不動産投資による節税は効果の大きい方法でしたが、2019年末に発表された税制改正大綱で、海外不動産投資による節税はできないことになりました。税制改正大綱の内容や節税が禁止になった背景について解説します。


税制改正大綱の内容とは

税制改正の内容について簡単に説明すると、令和3年(=2021年)以降の確定申告においては、海外不動産の減価償却費計上による赤字申告はできないということです。


国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例を次のとおり創設する。

(1)個人が、令和3年以後の各年において、国外中古建物から生ずる不動産所得を有する場合においてその年分の不動産所得の金額の計算上国外不動産所得の損失の金額があるときは、その国外不動産所得の損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は、所得税に関する法令の規定の適用については、生じなかったものとみなす。

※引用:令和2年度税制改正の大綱:3 租税特別措置等


なお、海外不動産を売却するときの譲渡所得税・住民税の計算においては、帳簿上で減価償却していないとみなす旨がこの後に記載されています。


(2)上記(1)の適用を受けた国外中古建物を譲渡した場合における譲渡所得の金額の計算上、その取得費から控除することとされる償却費の額の累計額からは、上記(1)によりなかったものとみなされた償却費に相当する部分の金額を除くこととすることその他の所要の措置を講ずる。

※引用:令和2年度税制改正の大綱:3 租税特別措置等


海外不動産を運用中の各年度においては減価償却費を計上できなくする一方で、物件売却時の譲渡所得税・住民税に関しては、日本国内の不動産投資よりも税負担が軽減されることになります。


海外投資の節税が禁止になった背景

海外不動産投資による節税が禁止になったのは、2019年までの数年間で、富裕層がこぞって節税目的の海外不動産投資を始めたことが最大の原因です。また、不動産業者が大々的に節税をメリットとして宣伝することで集客していたことも原因の1つと言えるでしょう。

日本国内の富裕層は常に節税の方法を探しています。オペレーションリースなど節税商品は色々ありますが、海外不動産投資を利用した節税は、数ある節税方法の中でも特に効果が大きいものです。

富裕層が海外不動産投資に殺到している点については、数年にわたって会計検査院から問題として指摘されていました。度重なる指摘を受けて、ついに国税庁が動いたのが節税封じ込めの経緯です。


【対応策】海外投資の節税が禁止になる今後はどうすべき



海外不動産投資による節税が禁止される今後は、家賃収入や物件の売却益という、不動産投資の本質的な利益を狙っていくのが一般的になります。


海外不動産投資の目的

不動産投資による利益の出し方には3つのパターンがあります。


  • 継続的な家賃収入(インカムゲイン)
  • 転売による物件の値上がり益(キャピタルゲイン)
  • 減価償却費や物件管理経費の損益通算による節税効果

税制改正によって禁止されたのは、減価償却費の計上による節税だけです。海外不動産投資では、人口増加や経済発展など日本よりも将来性の高い市場で投資できます。また、外貨を用いた資産形成や、国を分けて投資することで資産分散を図れるなどメリットは多いです。


国や物件の選び方

節税が封じ込められる今後は、投資目的によって国や物件の選び方を少し変えていく必要があります。例えばアメリカでは、人口は増加しているし経済も伸び続けているものの、その勢いは新興国ほどではありません。

家賃収入や転売益の最大化を狙っていくのであれば、フィリピンやマレーシアなどを中心とした東南アジアの新興国で投資するのがおすすめです。

一方で、利益は多少減らしたとしても安全に手堅い投資をしたいのであれば、制度や市場が成熟しているアメリカは適した市場と言えます。投資家の姿勢と目的によって最適な国や物件は異なるので、まずは投資姿勢や投資目的を明確化することが重要です。


個人で持つか法人で持つかなど

税制改正はあくまでも個人を対象としているので、法人で海外不動産を所有する場合は、従来通り減価償却費を計上可能です。しかし、法人の場合は、減価償却費計上は税金の繰り延べに過ぎず、税金を全く払わなくて済むようにはできません。また、税金を繰り延べ続けるためには、減価償却費を計上し終わったタイミングで物件を買い替え続ける必要があります。

事業全体で赤字が出たタイミングに合わせて物件を売却するのであれば、ローン審査の対策としては1つの方法になり得るでしょう。しかし、例えば個人の投資家が赤字のタイミングを予測して法人を設立するメリットが大きいかと考えると、予測は外れる可能性もあり、現実的には手間や経費とのバランスが合いません。

総じて、節税については法人の利用が有効となる人は限られます。その一方で、家賃収入や売却益狙いの投資であれば、法人のメリットは考えられるでしょう。すでに法人で日本国内に複数物件を所有しているなどの状況であれば、海外不動産投資にあたって日本政策金融公庫の融資を利用できる可能性があります。

続いて海外の現地法人立ち上げについて考えてみます。新興国では特に、外国人が現地で法人を立ち上げる場合には、現地人が半分以上の経営権を持つことを条件とされている場合が多いです。不動産投資のために現地法人立ち上げの手続きを踏むというのは、リスクを考えるとあまり現実的ではないでしょう。

一方、アメリカではLLCという形態の法人があります。LLCは比較的立ち上げやすいのが特徴です。また、外国人が1人で立ち上げることもできます。LLCを利用して投資を継続するのであれば、現地でクレジットヒストリー(口座の入出金履歴)ができるので、将来的には現地のローンを使える可能性も出てくるでしょう。

ただし、LLCの立ち上げには現地弁護士・税理士などを見つける必要があります。また、別々の州で投資すると、州ごとに確定申告手続きが発生するなど、手続きは煩雑になりがちです。これもかなり腰を据えて投資していきたい人向けの方法と言えます。


まとめ

海外には日本とは異なる環境の不動産市場を持った国が多く、これまでは、そのギャップを利用した節税が行われてきました。特にアメリカ不動産による減価償却は一般的な手法です。

しかし、多くの富裕層が節税スキームを利用し始めたことや、不動産業者が節税を訴求して大々的な宣伝を始めたことなどから、海外不動産投資による節税はできなくなりました。

今後は、継続的な家賃収入や値上がり益など、本質的な不動産投資のメリットを狙った投資をしていくのがよいでしょう。また、海外には不動産投資による利益を最大化できる環境を持った国がたくさんあります。まずは、自分自身の投資目的を明確にしてから、国や物件を選ぶのが成功への近道です。