[マレーシア] 2022年の不動産セクター改善するも、上昇する資材価格が懸念材料

2022/12/06


2022年の不動産セクターは、2021年と比較して取引件数、取引額ともに改善しました。これを支えたのは、経済全体の活動の再開と海外からの渡航者の受け入れ再開です。


国家不動産情報センター(NAPIC)によると、2022年前半期の不動産取引件数は188,000件、取引額は844億リンギット(約2.6兆円)でした。2021年の同時期と比較して、取引件数、取引額ともに30%以上も増えました。


レジデンシャル不動産では、116,178件、総額456億リンギット(約1.4兆円)の取引がありました。前年同期比で件数が26.3%、取引額が32.2%の増加となりました。


ペナン、クアラルンプール、ジョホールおよびスランゴールでの取引が活発で、国内のレジデンシャル件数の47%を占めました。


商業不動産では、15,169件、総額140億リンギット(約4,340億円)の取引がありました。前年同期比で件数が45.4%、取引額が28.3%の増加となりました。



スランゴールが件数・額ともに最大で、件数の26.5%(4,025件)、総額の33.5%(47億リンギット(約1,460億円))を占めました。



2022年の前半期に販売を開始したのは10,000件ほどのユニットで、2021年前半期の31,687件から66.7%減少しました。


NAPICはこれについて、新規物件の20.3%が販売されており、2021年前半期の販売率20.6%よりやや引くレベルに落ち着きました。2021年後半期の販売率は8.1%でした。


しかし、課題もあります。


マレーシア不動産・住宅デベロッパー協会(REDHA)によると、建設資材の高騰と労働力不足により、不動産業界、建設業界ともに生産性が重大な影響を受けています。


同協会が発行した2022年前半期の不動産業界調査および2022年後半期・2023年前半期市場見通しによると、2022年前半期に販売開始したレジデンシャルユニットはほとんどなく、2021年後半期と比較して26%減少しました。


デベロッパー150社を対象に行われた調査では、販売率は2021年後半期の50%から5パーセンテージポイント下がって45%となりました。


REHDAによると、パンデミック後、国内外の景気の回復に加え、徐々に渡航が自由化することで、来年の不動産市場、特に住宅も回復してくる予想です。


不動産テックグループJuwai IQIは、テクノロジーとデジタル化により、より多くの顧客にリーチできるようになった、と述べています。


Juwai IQIの共同創始者でありグループのCEOであるカシーフ・アンサリ氏は、同グループの販売も2021年から60~70%改善しており、バイヤーは大き目の物件を探すのがトレンドとなっていると話しています。


コロナ後の「家」は、住まいとしてだけでなく、ジムやオフィスとしての機能も求められており、今後なにかあったときに備えて大きなスペースを持っておこうという動きがおきているようです。


Y世代、Z世代と呼ばれる人たちの多くは、プライバシーを求めて、ユニットをシェアするより自分の空間を持ちたいと考える人が増えているようだともカシーフ氏は述べています。


不動産業界に影響を与えうる対外的な要因として、カシーフ氏は、アメリカの利上げのスピードがやや減速したものの、世界的には大きく減速したわけではないと述べています。アメリカ国内でも、利上げのペースに合わせて、不動産セクターも、5~10%程度の価格調整が入っているが、これはまだ対応可能な範囲だと言います。


これについては、サブプライムローン危機から学んだ金融機関も個人も、貸付・借入に慎重になっているからだと説明しています。


不動産セクターを支えるもう一つの理由としては、デジタル通貨とエクイティ市場の動きがあります。4~5年間のサイクルののち、投資家は、より安全な投資先として不動産市場に回帰しつつあるとカシーフ氏は指摘しています。



(出所:New Straits Times)

(画像:Image by Engin Akyurt from Pixabay )