2022/09/22
アジア開発銀行(Asian Development Bank/ADB)が最近発表したレポートによると、国内外の価格圧力による高いインフレ率にもかかわらず、今年のフィリピン経済の力強い成長は、堅調な国内需要の回復と新型コロナウイルス関連の行動制限の解除に支えられるでしょう。
ADBのレポート「Asian Development Outlook(ADO)2022 Update」によると、2022年のフィリピンの国内総生産(GDP)の成長率は6.5%と予測されています。7月の予測からは据え置きですが、4月の予測6.0%からは0.5%上昇しました。
2023年の成長率予測は、変更なしの6.3%です。金融政策の引き締めと高まるインフレ率が内需を妨害する形になりそうです。
インフレ率は、国際的なエネルギーおよび商品価格の急騰により、2022年の予測は5.3%と、7月予測4.9%および4月予測4.2%から加速する見込みです。
自然災害による国内の農作物への悪影響が年末まで続き、食品価格を吊り上げそうです。
2023年のインフレ率予測は、4.3%に据え置かれました。着実な経済成長が戻ることで、インフレを比較的安定的に保てそうだと見ています。エネルギー価格の高騰も減速しそうです。
「社会経済活動の正常化がフィリピン経済を安定的な、パンデミック前の拡大ペースに戻してくるでしょう。」とADBのフィリピン担当ディレクター、ケリー・バード氏は話しています。 「観光および民間投資の回復が、大規模インフラプロジェクトへの持続的な公共投資と海外で働くフィリピン人からの送金とあいまって、今年の国内経済の回復を支えるでしょう。」
しかし、レポートでは、ダウンサイドリスクについても述べられています。主要先進国の経済の急激な鈍化、ロシアによるウクライナ侵攻がもたらす地政学的な緊張と世界的な物価の高止まりの可能性を挙げています。
2022年前半期、レクリエーション、旅行、レストランの支出は立ち直りを見せました。家計の支出は、2021年前半期の0.9%から9.3%に上昇しました。家計の支出は、今年前半期のGDP成長率に最も貢献した要素です。
サービスの生産高は8.7%増となりました。セクター全体で幅広い拡大が見られました。これにより、全体の雇用も安定的に増加し、2021年7月から2022年7月までで、570万人の雇用が創出され、その3分の2は卸売・小売を中心とするサービス業でした。
橋、高速道路、港、鉄道などインフラの改良は、政府の最優先事項のひとつです。
今年と来年のインフラへの公共投資は、国の事業環境と競争力を高めるべく、GDPの6%程度が計画されています。
ADBが支援する政府の旗艦プロジェクトのひとつは、マロロス・クラーク鉄道プロジェクト(Malolos Clark Railway Project)と南通勤鉄道プロジェクト(South Commuter Railway Project)です。いずれも南北通勤鉄道システム(North–South Commuter Railway System)の一部で、メトロマニラとルソン島の南北にある州とをつなぐ安全で効率の良い輸送を提供することを目的としています。
マロロス・クラークプロジェクトの建設はパンデミックの中開始しており、南通勤電車プロジェクトの土木工事の契約はもうすぐ落札されると見られています。
ADBは、EDSAグリーンウェイズ・プロジェクトとメトロマニラ・ブリッジ・プロジェクトの資金援助も行っています。EDSAグリーンウェイズ・プロジェクトは、マニラの目抜き通りEDSAに沿って歩行者の歩きやすさを向上させるもので、メトロマニラ・ブリッジ・プロジェクトは、メトロマニラ内の交通渋滞の緩和を目的としています。
(画像:UnsplashのGinoが撮影した写真)
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