2022/03/22
アジア開発銀行(ADB)と世界銀行は、今年のフィリピン経済に楽観的な見方を示しています。しかし、成長のリスクとして、新しいCovid-19変異株の出現とサプライチェーンの混乱がインフレを加速させるとも述べています。
ADBのフィリピン国担当ダイレクター、ケリー・バード氏は、マニラタイムズが3月初めに主催したオンラインフォーラムで、2021年のGDP成長率5.6%からさらに経済が拡大し、今年は成長率6%となるだろうと述べています。
バード氏は、今年の成長をけん引するのは、加速するワクチン接種プログラムとインフラへの支出だと述べています。
2022年2月末時点、フィリピンの6,318万人がすでにワクチン接種を終えました。うち、1,013万人は、ブースター接種も受けています。
バード氏は、ワクチン接種プログラムの成功により、フィリピンは行動制限を緩和し、世界の国々とのつながりを再び持てるようになったと話しています。
「これだけでも今年前半の景気回復が後押しされ、消費者および企業の自信感の回復や雇用の再創設を助けることになるでしょう。」
今年は、GDPの5%以上に相当する公共投資が行われることになっており、それも経済成長を促すことになると期待されています。
しかし、バード氏は、Covid-19の新しい変異株の出現が、引き続き成長のリスクとなるだろうと述べています。
「行動制限を再び実施せざるを得なくなるかもしれません。ワクチン接種が広まったことで、6か月前と比べるとこのリスクはかなり低いとは思いますが、それでも、社会に追加的に保護を与えるブースターの重要性が強調されています。」
他のリスクとしては、インフレを加速させる可能性のあるサプライチェーンの混乱があります。
インフレ率は去年4.5%に達し、政府の目標である2~4%を上回りました。2022年1月には、やや弱まって3.0%となっています。
「昨年、フィリピンではインフレが進みました。今はまた、2~4%の枠に収まっていますが、インフレへの圧力はこれからも常に続くでしょう。」
世界銀行のフィリピン、マレーシア、タイ、ブルネイ国担当ディレクターのンディアメ・ディオプ氏は、フィリピンはかなりの立ち直りを見せた国のひとつだと表現しています。
今年について、世界銀行は、公共投資と家庭の消費に支えられ、フィリピン経済の成長率が5.9%に達するとみています。
一方で、ディオプ氏は、ロシアとウクライナの緊張が、フィリピンおよび東アジア諸国に影響を与える可能性についても触れています。
「この紛争と制裁により、国際的な食料および燃料の価格を上昇させる可能性があります。ロシアとウクライナはこれらの物品の主要供給元だからです。よって、戦争のスピルオーバー効果というか派生効果は非常に悪いものとなる可能性もあります。」
2022年3月1日時点のデータでは、ブレント原油の価格は、1バレル99.84ドルでした。
フィリピンでは、その時点ですでに、8週連続でガソリンスタンド店頭価格が引き上げられていました。
増額分は、ガソリンは1リットルあたり8.75ペソ、ディーゼルは1リットルあたり10.85ペソとなっています。
「燃料価格が上がると、肥料の価格も上がりますので、すべての農作物の価格が上がることになります。」
ロシアとウクライナは小麦の大生産地でもあるので、ディオプ氏は、コメの価格も上昇する可能性があると述べています。消費者の多くが、小麦から米へとシフトするからです。
「例えば、米は、フィリピンの平均的な消費者バスケットの8%、低所得者層30%については16.4%を占めています。対象者を絞った社会的な支援により軽減されたりしない限り、コメの価格が上がると、貧困層が増えることになります。」
今後について、ディオプ氏は、成長を支えるためには、経済のさらなる再開、インフラへの投資継続、食料や燃料価格が上昇した際には、対象を絞った現金援助や支援を行っていく必要があるだろうと述べています。
(出所:Manila Times)
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