[フィリピン] 1,100億ペソの交通機関刺激策に向けての動き

2020/05/18

[フィリピン] 1,100億ペソの交通機関刺激策に向けての動き

ロックダウン以降は民間の輸送サービス、バス専用レーン、自転車用インフラが必要だとして、モビリティ分野の関係者・団体で構成される連立組織「Move Metro Manila(ムーブ・メトロマニラ)」は、議会に対して、1,100億ペソ(約2,321億円)の景気刺激策として、厳しい隔離措置が解かれたあとに到来するであろう高額な公共交通機関の危機を回避するのに役立つような、持続可能なプロジェクトの支援を呼びかけています。


この1,100億ペソには、メトロマニラ、セブ、その他渋滞がひどい都市における、公共ユーティリティビークル*の活用、徒歩や自転車のためのインフラ、バス専用レーンや駅への投資拡大を含まれています。


また、同組織は、運輸省が提案している、交通機関事業者への一部燃料補助について、「持続可能ではない」と指摘しています。


メトロマニラ単体でも、その経済的損失は甚大だと、Move Metro Manilaは訴えています。Covid-19の規制により、キャパシティの制約があったり、通勤時間が長くなったりして、いずれ職を失うことにつながる可能性があり、交通機関事業者が休業に追い込まれる可能性があると言います。

もし政府が今何もしなければ、公共交通機関に重大な打撃を与えることになり、それは経済の他の分野にも波及する可能性があることを大いに示唆しているといいます。Move Metro Manilaは、ロックダウンの解除されれば、感染拡大予防のために、公共交通機関のキャパシティが制限されるため、道路には多くの自家用車があふれるようになると考えています。これは、公共交通機関事業者と通勤者、双方に痛手を負わせます。このモビリティ関連の課題により、企業は、メトロマニラで約298,000人の労働者を解雇せざるを得なくなり、公共交通機関事業者の半数が休業を余儀なくされ107,309の職に影響を与えると考えられています。


■交通渋滞による経済的損失

Move Metro Manilaによると、交通渋滞による年間の経済的損失は、マニラ首都圏だけでも5,200億ペソ(約1兆972億円)に上ると見積もっています。ロックダウン後の交通渋滞による損失約4,300億ペソ(約9,073億円)に加えて、このまま政府が対策を打たなかった場合に経済損失が約900億ペソ(約1,899億円)です。詳細の内訳は以下のとおりです。

1.困難な通勤:2241億ペソ
公共交通機関のキャパシティが、密を避けるために大幅に減らされた場合、自家用車を使って通勤をしようとする人が増えることによる交通渋滞の悪化。通勤時間も自家用車で約15分、公共交通機関では1時間ほど増加すると想定した場合。

2.モビリティの減少による失業:1,573億ペソ
十分な公共交通機関がなかったり、交通渋滞が悪化したりすることで、職場への通勤ができなくなることによる労働者の失業。

3.公共交通機関の閉業:489億ペソ
資金繰り困難により公共交通機関の約50%が閉業を迫られた場合。
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約4,300億ペソ(約9,073億円)


4.燃料・車両運営コスト:122億ペソ
通勤者の一部がアクティブトランスポートに移行した場合の燃料・運営コストの削減。

5.公害削減:277億ペソ
通勤者の一部がアクティブトランスポートに移行した場合の公害削減。

6.交通事故:528億ペソ
公共交通機関の利用やアクティブトランスポートによる交通事故の削減。
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約900億ペソ(約1,899億円)

■提案されている刺激策1,100億ペソの内訳

1.公共ユーティリティービークルの活用:300億ペソ(約633億円)
今後6か月間、安全な公共交通機関を維持するため、全国に公共ユーティリティービークルを配備するための投資。ドライバーへの給与は、乗客数の多少にかかわらず安定していなければならない。

2.アクティブトランスポート:100億ペソ(約211億円)
歩道の拡張、自転車専用レーン、日陰を作るための街路樹など、「アクティブ・トランスポート」(自転車や徒歩)のための投資。

3.道路公共交通網の整備:700億ペソ(約1,477億円)
道路を中心とする公共機関(バス停、バス専用レーン、デポやターミナルの建設)と、これらの施設の衛生法規への準拠のための投資。

(出所:Business Inquirer Net, #MoveAsOne

(トップ画像:Yannes Kiefer on Unsplash)