[タイ] タイ銀行のモーゲージローン引き締めの新ルールにより信用格付け引き上げ

2018/11/20

[タイ] タイ銀行のモーゲージローン引き締めの新ルールにより信用格付け引き上げ可能性あり


2018年10月4日、タイ銀行(BOT、Baa1)はモーゲージローンにかかる信用引受基準の引き締め策を発表しました。

この新ルールの下では、1,000万バーツ超の住宅に対して新規に設定されるモーゲージについて、ローン・トゥ・バリュー(LTV:物件価格に対するローンの割合)は、最大80%に制限されます。

同様のLTV制限が、セカンドホームの購入についても適用され、こちらは金額基準はありません。また、銀行は、物件価格を超える前払い金を提供することが禁止されます。


投機的な購入を狙った新ルール

新モーゲージローンルールは、投機的な購入を減らす働きがあり、銀行がより信用力の高い借りてに集中させるため、信用格付けの引き上げ可能性につながります。
このルールによって、銀行が新規で設定するモーゲージローンの資産内容を改善することも期待できます。低金利が続くタイで、不動産価格は着実に上昇しているからです。


コンドミニアム価格78%上昇

国際決済銀行(BIS)によると、バンコクのレジデンシャル物件価格は、過去10年で49%上昇したといいます。コンドミニアムの価格はさらに激しい値上がりを見せており、同期間で78%上昇しています。

▼バンコク首都圏不動産価格インデックス(2009年=100)(出所:Bank for International Settlementsを元に作成)


加えて、この期間に設定されたモーゲージローンはLTVが高く、債務返済能力が低いため、銀行のモーゲージローンに対する信用引受基準は崩れました。


住宅不良債権率(NPL)は3.4%に上昇

高LTVモーゲージ、すなわちLTVが90%超のモーゲージは、2013年の約34%から、2018年前半期末で新規に設定されたローンについて約49%に増えました。ローン・トゥ・インカム(LTI:所得に対するローンの割合)の平均は、2018年第1四半期末時点で約3.8倍に増加しました。

タイの銀行にとって、住宅ローンは、唯一不良債権率(NPL)が上昇している消費者金融です。他のリテールセグメントでは、NPLは横ばいもしくは改善しています。住宅NPLは、着実に上昇を続け、3年前の2.4%から2018年6月時点では3.4%となっています。

加えて、タイにおける家計負債は、2018年6月末時点でGDPの77%と高止まり、一方で成長率は減速しています。

モーゲージは、タイの銀行にとっては大きなビジネスのひとつで、2018年第1四半期末時点でローン全体の17%、リテールローンの約50%を占めています。

このようなことから、モーゲージの引受基準の悪化は、不動産価格が下落したときに、重大な影響を及ぼすのです。

今回のBOTによるマクロ・プルーデンス*なガイドラインは、過去数年に域内他国で実施されたガイドラインにならってのことです。

(出所:Thailand Business News

*マクロ・プルーデンスとは、金融システム全体のリスクの状況を分析・評価し、それに基づいて制度設計・政策対応を図ることを通じて、金融システム全体の安定を確保するとの考え方です。
(出所:日本銀行

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