[マレーシア] 中央銀行:売れ残り物件あるももの、2022年の住宅市場は改善

2022/04/05


マレーシア住宅市場は、2021年第3四半期時点で約18万戸の売れ残り物件があるものの、2022年に向けて、市場活動に改善が見られます。



マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia)は、財務安定性レビュー(FSR)の中で、2021年後半期のパンデミックが引き起こした混乱が、部分的に、売れ残り住宅在庫のはける速度の減速に貢献していると述べています。



しかし、売れ残り住宅戸数が多いのは、もともと存在したアフォーダビリティ―(値ごろ感)問題を反映したもので、パンデミックが消費者の収入に影響を与えたことで悪化しました。



これに対応する形で、供給サイドの調整が続き、新しく販売されるプロジェクトは、低所得または中所得層向けのセグメントにシフトしてきています。



50万リンギット(約1,450万円)以下の価格の住宅販売数の割合は、2021年第3四半期、大幅に増加しました。2021年第3四半期が88.1パーセントだったのに対して、2021年前半期は67.7%、2015年から2019年までの平均は65.9パーセントとなっています。




中央銀行は、このシフトが売れ残り住宅在庫のこれ以上の大幅増加を防ぐ方向に働くはずだと述べています。



これにもかかわらず、全体としては新規発売の多くが、アフォーダブルセグメント以上で、2015年以降30万リンギット(約870万円)未満の新規発売はたった35.6%でした。全体の住宅アフォーダビリティを改善するためには、さらに価格と供給を調整する余地があることを示しています。



家庭の借入金の負担を抑え、将来経済的困難に陥るリスクを軽減するためには、住宅のアフォーダビリティを改善するための幅広い改革が不可欠です。



一方で、経済活動の再開に引っ張られ、2021年第4四半期の市場活動は改善したものとみられています。あわせて、2021年後半期は、すべての価格セグメントにおいて、ローンの申し込みが増えました。



2021年の最後2か月でローンの申し込みが大幅に増加したのは、2021年12月31日で終了した持ち家キャンペーン(Home Ownership Campaign)とも一致しています。



今後の労働市場の改善見込み、そして低金利環境もまた、住宅需要を支えるとみられています。



2021年後半期の住宅需要をけん引したのは自宅として住宅購入をする人々でした。2021年後半期に承認がおりた住宅ローンのうち57.3%は、持ち家目的で購入する人で、2021年前半期の55.8%から上昇しました。



商業不動産部門については、中央銀行は、パンデミックによるフレキシブルな働き方へのシフトと加速するデジタル化が、物理的なスペースのありかたを変えていくことになりそうだと話しています。



これらのトレンドは、オフィスやリテールスペースといった特定の商業不動産セグメントの既存の過剰供給の懸念を悪化させる恐れもあります。



商業不動産と金融システムの直接的なリンクは大部分は阻止されており、これにより財務の安定性へのリスクは大幅に軽減されています。



しかし、建設業界が経済全体に与える乗数効果の高さを考えると、過剰供給の解決をさらに進めていくことが重要です。今後予定されているオフィスおよびリテールスペースの大規模な供給が、リスクをもたらすことになるでしょう。



マレーシア不動産投資信託(REIT)は、年金基金などの大型機関投資家が出資しており、市場規模としてはマレーシア証券取引所の時価総額の3%にも満たない小さな市場です。





(出所:New Straits Times