[フィリピン] コロナ禍の不動産シーンに見つける明るい材料は

2021/05/13

[フィリピン] コロナ禍の不動産シーンに見つける明るい材料は


2021年のフィリピンの不動産市場はどうなっていくのでしょうか?今回は、Business Inquirerに今後のフィリピン不動産市場における明るい材料をまとめた記事がありましたのでご紹介していきます。


Covid-19パンデミックの影響が長引く中、不動産市場は、今年、ゆっくりと回復し、市場活動は控え目になることが見込まれています。空室率が上昇し、価格は軟化、賃料も下向き傾向です。これらにかかわらず、セグメントの中には、レジリエンスを示しているものがあり、業界関係者は国内市場の今後の展望に自信を見せているようです。


国を代表する不動産サービス・投資管理会社によると、このような自信をもたせてくれているのが、現在ほとんどの不動産関係の意思決定において大きな影響を与えている、政府のワクチンプログラムと、国の景気回復を助ける大きな刺激と見る人も多い、税制改革法(CREATE法)です。


「市場に漂う楽観ムード」

パンデミックは、プレセール、セカンダリー市場両方で、レジデンシャル需要の伸びを妨げていますが、コリアーズ・フィリピンは、今年は新築レジデンシャルが10,387戸引き渡されると予想しています。2020年に引き渡しがあった3,370戸の2倍以上です。ワクチン接種開始と景気回復が需要を押し上げることが見込まれる中、メトロマニラの主要エリアで新規プロジェクトの販売開始可能性をデベロッパーが探っているために新規供給が増えてきています。


今年、価格および賃料にはさらなる調整が入るでしょう。空室率も、完成物件が加わることで、過去最高の17.2%に達することが予想されています。しかし、2022年からは、価格および賃料の成長率は、それぞれ1.5%、1.7%に達することが予想されています。これについて、コリアーズは、政府によるワクチンプログラムとオフィススペースの成約の立ち直りを理由に挙げています。


コリアーズは、そのレポートの中で、このように述べています。「特定の回復ドライバーが、市場に楽観的なムードをもたらすでしょう。2021年1月から2月にかけて、OFWの現金送金は2,448億ペソ(約5,593億円)に達し、年間1.5%となりました。これは、2020年の同時期-0.8%から逆の動きとなりました。フィリピン中央銀行は、現金送金が2021年には1兆5,000億ペソ(約3.4兆円)、前年同期比4%増と予測しています。OFWの送金は、今後もレジデンシャル需要の主要なドライバーの一つとなっていきます。中央銀行のベンチマーク金利もまた、過去最低の2%で安定しています。これもまた、景気回復を支え、住宅ローンの金利も投資家にとって魅力的な状態が続くはずです。」


クッシュマン&ウェイクフィールドは、一方で、「都市エリアの土地付き住宅物件は、魅力的な選択肢でしょう。不動産管理が優秀で、人口密度があまり高くないレジデンシャルコンドミニアム開発もまた市場で魅力的な状態が続くとみられています」と述べています。


2021年以降の回復

コリアーズは、2021年第1四半期、オフィスの賃貸取引が2020年にロックダウンが始まって以降最も活発におこなわれたと述べています。これをけん引するのは、Eコマース、データセンターそしてアウトソーシング企業です。一方で、リースの取り消し/不更新を理由に、新規オフィス需要はネガティブでした。


JLLフィリピンもまた、退去、早期解約、サイズダウン、需要低迷が続くことを指摘しており、オフィスの空室率が14.7%に上昇したと述べています。


JLLフィリピンのリサーチ・コンサルティング長ジャンロ・デ・ロス・レジェス氏は、「2021年(の第1四半期)は、フィリピン・オフショアゲーミング事業者(POGOS)およびアウトソース企業・オフショア企業、さらにコストの最適化やパンデミックのために市場への再参入や拡大判断を保留にしているような事業者の、退去やサイズダウンが続きました。」と話しています。


「入居企業も投資家も、かなり流動的な環境の中、オフィスに戻るとか事業活動を拡大するとかいった最終決断を下すことを躊躇しています。従業員の安全と福利、コストの最適化が、目下の優先事項です。これらすべての懸念に対する鍵は、ワクチンが握っています。すべてのセクターにおける企業判断に大きなインパクトを与えるでしょう。」とレジェス氏は付け加えています。


2021年、コリアーズは新規供給が878,200平米に到達すると予測しています。メトロマニラのオフィス市場需要の回復に必要なのはワクチンプログラムです。企業がオフィスに戻るための信頼感を固めてくれるでしょう。CREATE法の施行、インフラプロジェクトの続行、多くのアウトソーシング会社がオフィスを構えた首都圏外の主要エリアの適切な供給量もまた、2021年以降のオフィス賃貸の回復には重要であるとコリアーズは述べています。


明るい材料

まだまだ低迷する2021年の不動産市場において、物流セクターは明るい材料になっているとJLLフィリピンは述べています。2021年第1四半期、カヴィテ、ラグーナに約45,800平米が完成し、全体の供給量は160万平米になりました。


デ・ロス・レジェス氏は、ますます多くのデベロッパーや事業者が物流セクターに成長を求めようとしていることから、来年も引き続き成長を続けるだろうと見ています。物流の良いところは、工業セクターの需要だけでなくオフィス需要もけん引していることです。Eコマース・小売事業者の参入・物流スペースの成約が増えていることから、事業・運営を支えるためのオフィススペースも必要になっているからです。


緩やかな回復

経済の不確定性が漂い、高い物価と失業率も加わって、消費者支出の成長の勢いが阻まれており、リテールがすぐに回復することは厳しいだろう、とクッシュマン&ウェイクフィールドは述べています。


フィリピン人は、食料・飲料、日用品に医療サービスといった、必要不可欠なものにしか支出しないで、必要不可欠でない買い物を控えるとみられており、コリアーズは、2021年のリテールスペースの新規需要も弱い状態を予測しています。


コリアーズのデータによると、メトロマニラのロックダウンと落ち込む消費者心理により、リテールの空室率は16%にまで達するとみられています。これは、2002年以来の最高値です。一方で、賃料は今年さらに5%下がるとみられています。


空室率や賃料の点では、緩やかな回復が2023年までには始まると期待されていますが、この立ち直りは、政府のワクチンプログラムの進度、実際のモールスペースをどのくらいの小売業者が自信をもって占有するか、実際の店舗をどのくらい消費者が訪れたいかなどにかかっています。


(出所:Business Inquirer
(画像:Photo by Ben Bin on Unsplash )