[フィリピン] 中央銀行は過去最低金利を据え置き

2021/05/17

[フィリピン] 中央銀行は過去最低金利を据え置き


フィリピン中央銀行は、2021年5月12日、主要金利を過去最低レベルで据え置く決定をしました。5四半期連続で収縮したのち、やっと回復の兆しを見せてきている経済を支えることに集中したい考えです。


フィリピン中央銀行(BSP)は、翌日物の借入金利(リバース・レポ・ファシリティ)を2.0%に据え置きました。これで4会合連続となります。ロイターが行った調査で13人のエコノミスト全員の予測と一致しました。


翌日物の預金金利と貸出金利も据え置きで、それぞれ1.5%と2.5%となりました。


今回のBSPの決定は、第1四半期の経済の収縮幅が思ったより大きかったことを受けてのことです。一方で、四半期ごとの動きを見ると、回復方向に向かっていることがデータから見て取れます。


BSPのベンジャミン・ディオクノ総裁は、会見の中で、あらゆる点を考慮したうえで、インフレの向かう先の予測と国内経済成長のダウンサイドリスクから、金融政策をこのままとするのが良いという判断をしたと述べています。


ディオクノ総裁は、インフレ見通しへのリスクは概してバランスが取れており、今年、来年双方の平均は2%~4%の目標幅内に落ち着きそうだと述べています。


BSPは、今年のインフレ率予測を、前回の4.2%から下げて3.9%としました。2022年については、インフレ率は平均3.0%ほどとし、前回の予測2.8%から上げました。


ディオクノ総裁は、「内需に対する持続的なサポートが、引き続き金融政策の優先事項である」と話し、政策金利を当分変えないことをにおわせました。


豚肉の供給量が少なくなっていることを主な原因としてインフレが進む中、エコノミストの中には、それでも2021年の残りの期間はBSPは金利を据え置くだろうと予想する者も、さらなる緩和の可能性を除外していない者もいます。


キャピタル・エコノミクスのアジア担当エコノミスト、アレックス・ホームズ氏は、年後半にはインフレが後退してくれば、後半期にさらなる利下げもありうるだろうと話しています。


2020年、過去最低となる-9.6%の経済成長を記録したフィリピンは、アジアでも最も厳しいコロナウィルスの流行と戦っています。


▼四半期ごとのGDP成長率推移(出所:Trading Economics)




2021年3月から始まった新しい感染の波により、より厳しい活動制限措置を取らざるを得なくなりました。ディオクノ総裁は、感染が内需の大きなダウンサイドリスクとなる、と話しています。


同じ2021年5月12日、ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は、政府のパンデミック支援策のために必要な資金を増やすべく、連邦機関の各部に対して、それぞれの予算から支出できる分がないかを特定するように命令しています。


Covid-19のワクチン接種開始のスロースタートもまた、経済が脆弱な機関を長引かせるリスクを高めています。


リサール商業銀行のエコノミスト、マイケル・リカフォート氏は、追加の景気刺激策への資金が限られるなか、国内経済は得られるすべての支援策を受ける必要がある、と述べています。


(出所:ReutersTrading Economics