[フィリピン] 中銀利上げ再び

2022/08/22


2022年8月18日、フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas(BSP))は、国内のインフレ率の加速が続いていることを受けて、主要金利のさらなる引き上げに踏み切りました。BSPのフェリペ・メダーリャ総裁は、価格上昇率の上昇に対して、価格の安定性を確保する必要性について語っています。


2022年8月18日、BSPの金融政策決定会合は、主要金利を50ベーシスポイント引き上げる決定を下しました。
 


これにより、中央銀行の翌日物のリバースレポ金利(RRP)は3.75%に、翌日物のレポ金利は4.25%となります。8月19日に発効しました。
 


オンライン会見で、BSPのフェリペ・メダーリャ総裁は、今年の最新の平均インフレ率見通しが5.4%に上方修正された一方で、2023年と2024年の数値は、それぞれ4%、3.2%に引き下げられたと話しています。
 


今回の見直し前の予測では、今年が5%、2023年が4.2%、2024年が3.3%でした。
 


BSPの今年の平均インフレ率予測は、政府の定める2024年までのインフレ率目標幅2~4%を超えていますが、来年以降は目標幅内に収まる予測です。
 


メダーリャ総裁は、価格の圧力が広がる中、インフレ目標は上向きリスクに晒されている、と述べています。インフレ率の高止まり予測により、さらなる二次的影響のリスクが強調されるからです。この上向きリスクには、世界的な原油以外の価格の上昇の影響、国内の魚供給不足、砂糖の価格の急騰に加え、交通運賃引き上げの請願が未決であることなどが挙げられています。
 


しかし、メダーリャ総裁は、「世界経済の回復が予想より弱かった影響と、国内のコロナ感染者数の再増加の影響が、見通しの主なダウンサイドリスクとなるだろう」とも述べています。
 


「この時期、金融政策決定会合は、インフレ見通しを固め、政策的にインフレ目標をこれ以上超えないように、さらなる金融措置が必要だと判断した」と加えています。
 


今回の利上げにより、今年に入ってからのBSPの利上げは合計で175ベーシスポイントとなりました。



▼フィリピンの政策金利の推移(出所:Trading Economics)


 


一方で、インフレ率は、7月に前年同月比で6.4%となり、2018年10月以来の急激なペースで上昇しています。
 


メダーリャ総裁は、インフレは今年の10月か11月にピークを迎えるだろうと予測しています。
 


総合インフレ率が、3%台前半になるのは、来年後半期になってからだろうとしつつも、国際市場での石油価格の値動きや連邦準備制度の主要金利調整などの要因に左右されるとも述べています。
 


また、国内経済が今年第1四半期の8.2%と比べると、第2四半期はやや減速して7.4%となったことで、メダーリャ総裁は、連邦準備制度理事会の金利調整や為替の動きなどを主な検討項目として、データに基づいた金融政策判断を行っていく方針を明らかにしています。


メダーリャ総裁は、必要があればさらなる引き締めを行うが、国内経済の回復は、
国内経済の回復は、それを吸収できるほどに堅調であるとの見方をしています。

 


BSPの主要金利を調整することで、国内生産高に影響が出るものの、中央銀行として価格を安定させる義務があり、金融当局は国内経済の拡大よりも、価格の安定を取るとメダーリャ総裁は話しています。
 


「インフレの目標に沿った道のりを達成するということは私たちにとっては非常に重要です。そして、そのような条件下でも、ちゃんとした成長率が出せると考えています。そのちゃんとした成長率というのが、DBCC(開発予算調整委員会)の目標である6.5~7.5%を下回るか、範囲内であるかももちろん重要ですが、同時に、私たちにとっては価格の安定性が一番の関心ごとなのです。」



(出所:Philippines News Agency

(画像:Photo by Tech Daily on Unsplash)