[フィリピン] 中銀:第4四半期のインフレ率は目標内の水準に減速と予測

2023/06/19


フィリピン中央銀行(Bangko Sentral ng Pilipinas、BSP)は、国内インフレのリスクバランスは依然として上向きだが、月次インフレ率は大きなショックなく今年最後の四半期には目標水準内に減速する見込みであると述べました。



フィリピン統計局(PSA)は、5月のインフレ率が前月の6.6%から6.1%に再び減速し、4ヵ月連続の減速となったと発表しています。



▼総合インフレ率の推移(2018年=100)(出所:フィリピン統計局





今年1月~5月の平均インフレ率は7.5%で、政府の目標値である2〜4%を依然として上回っています。BSPは、今年のインフレ率は通年で平均5.5%に落ち着くと予測しています。



声明の中で、中央銀行は、2023年5月のインフレ率は、中央銀行の5.8〜6.6%の予測の範囲内であり、さらなる供給ショックがない場合、短期的には高止まりし、第4四半期に向けて徐々に目標範囲に戻ってくるだろうと述べています。



BSPは、「2023年と2024年のインフレ見通しに対するリスクのバランスは、依然として上方に傾いている」と述べています。主要食料品目の供給に引き続き制約があること、エルニーニョ現象が食料品価格や公共料金に及ぼす潜在的な影響、輸送運賃や賃金にさらなる調整が入る可能性などが懸念されるからです。一方で、世界経済の回復が予想より弱いことなどが、これらの要因を部分的に相殺するとも予想しています。



中央銀行の政策決定機関である金融委員会(MB)は、2023年6月22日のMBの金利設定会議において、マクロ経済見通しとともに、最新のインフレ報告を最新動向の評価に含める予定です。



「BSPは、物価上昇圧力のさらなる拡大や、さらなる二次的効果の発生を防ぐため、必要に応じて金融政策スタンスを調整する用意があります。BSPはまた、持続的な供給サイドの圧力がインフレに与える影響を緩和するための非金融的な政府措置が適時かつ効果的に実施されるよう支援します。」と付け加えました。



先月5月18日、MBは、インフレ率の減速と需要指標に基づく国内生産の減速の可能性に言及し、2022年5月に利上げサイクルが始まって以来初めて、BSPの主要金利を据え置きました。2022年5月以降、パンデミック時には過去最低の2%だった翌日物のリバースレポレート(RRP)は合計425ベーシスポイント引き上げられています。



国内総生産(GDP)は、2023年第1四半期に年率6.4%の成長を遂げ、予想を上回りました。このGDP成長率は、2022年第4四半期の7.1%より鈍化しましたが、当局とアナリストは、これは昨年の高成長レベルのベース効果によるものであると説明しています。



リサール商業銀行(RCBC)のチーフエコノミスト、マイケル・リカフォート氏は、月次ベースでゼロ成長となった国内インフレ率のさらなる鈍化は、BSPが利上げサイクルを6月の会合でも停止し銀行の預金準備率(RRR)を引き下げる可能性を高めると述べています。



フィリピン・アイランド銀行(BPI)もまた、現在のトレンドが続き、原油価格のショックがなければ、今年9月までにインフレ率は4%台を記録すると見ています。しかし、海外の脆弱な生産状況による米の供給問題、迫り来るエルニーニョ現象、世界の主要な石油生産者の石油減産などのリスクがインフレ率4%台を遅らせる要因となるだろうと指摘しています。「米はインフレバスケットのほぼ9%を占めているため、この商品の影響は大きい 」と述べています。



BPIは、連邦準備制度理事会を取り巻く不確実性を考慮して、BSPの主要金利が再び引き上げられる可能性も挙げています。「米国とフィリピンの金利差を適切に保つことは、為替に影響を与える可能性があるため、依然として重要です。輸入への依存度が高まる中、(フィリピン)ペソの下落はインフレ率がより速く低下することを妨げる可能性がある」と述べています。



HSBCはリポートで、昨年5月の国内インフレ率の鈍化は驚きではなく、「BSPに、次回の会合で政策金利を6.25%に安定させながら7月にRRRを引き下げる自信を与えるはずだ」と述べています。



「我々の基本的な見解は、BSPが2024年後半まで保留することである」として、MBが利上げに踏み切るのは、米国連邦準備制度理事会が利下げを行ったあとだろうと述べています。



「フィリピン経済は双子の赤字(*)であるため、USD-PHP(米ドル-フィリピンペソ)の急変に影響を受けやすくなっています。そのため、中央銀行はFRB金利を上回る適切な政策金利バッファーを維持して、防衛モードに入る可能性が高いでしょう。」と述べ、2024年第2四半期からFRB金利が引き下げられる可能性があるという予測を付け加えています。


(*)財政収支と貿易収支



(出所:Philippines News Agency

(画像:UnsplashのEduardo Soaresが撮影した写真)