[トレンド] NFTを使って不動産物件を売ることができるか?

2021/11/01


「世界をよりスマートに、より幸せに、そしてより豊かにする」をミッションとするグローバル金融サービス企業のモトリーフール・ホールディングス・インク(Motley Fool Holdings, Inc.)の子会社で、米国のクラウドファンディング、REIT(不動産投資信託)、不動産税に関する無料の学習用コンテンツから、住宅関連、商業関連、金融関連、さまざまなツール、計算機能、業界レビューなどを提供するミリオンエーカー社(Millionacres)の記事をご紹介していきます。



2021年5月下旬、ウクライナのアパートメントが、NFT(Non-Fungible Token(代替不可能トークン))として、オークションで売却され、ブロックチェーン技術の世界初がニュースとなりました。これを行ったのが、Propy(プロピー)という会社です。同社は、この同じ物件を以前にも使用して売却を行っています。2017年、スマート・コントラクトを使うことで売却を容易に進め、ブロックチェーンの力を示すことに成功したのです。



このアパートメントが再度売りに出されたことは、人々を驚かせました。オークションで購入したのは、デヴォン・バーナード氏で、対価として、イーサリアムというプラットフォームで使用される仮想通貨であるイーサにて36イーサ、$93,429.72(約1,067万円)相当を支払ったとプロピーは発表しています。



この物件の売却の前にも、4月に、OpenSea(オープンシー)というプラットフォームを利用して、カリフォルニア州サウザンドオークスのデュプレックスの売却を試みられた一件がありました。この物件は、48イーサ(約$117,000、約1,335万円)から入札がスタートしましたが、実際の不動産とパッケージになったこの家のビデオをNFT化したもののバイヤーが見つからず、失敗に終わりました。



この2つのNFTと不動産にまつわる経験が、NFT界で大きく注目されました。デジタルアイテムを売買したり、ブロックチェーン上で追跡したりする方法として一般的に使用されるのがNFTですが、不動産業界の人々にとって、現実世界におけるNFTの可能性が、この取引の失敗によって失われたわけではないのです。



不動産取引のためのNFT


NFTを利用して成功した不動産取引がまだ一つしかないこと、そしてその所在地がウクライナということで、この技術が、グローバルなスケールで、現実世界の取引をするにあたっての様々なニーズに応られるのかは未知です。



プロピーのウェブサイトでは、「物件の所有権は、実際はウクライナにおいてU.S.LLCとして保有、登録されている」と説明されています。「オークションの入札者は、LLCの権利を付与するNFTの所有者の所有者となりました。売主であるマイケル・アリントン氏が、すべての将来のバイヤーに所有権を移転するというNFTのための法的文書にサインすることで成立しました。」



一方で、Open Seaのプラットフォームを利用したデュプレックスの取引は、デジタルと現物の2つの物件の同時オークションとして設計されていましたが、新しい所有者がどのように所有権を引き継ぐのかの詳細が不明でした。この特定のNFTの購入の現実世界におけるしくみを誰も試す必要がなかったので、それがどうなるはずだったかを予想することも難しいでしょう。しかし、不動産取引にかかる従来の事務処理とともに、単にアイテムを認識しブロックチェーンの中に記録を作るだけのNFTだったとしたら、なんの抜け穴を探す必要もなく、日々の不動産購入にNFTを使うには時期尚早だったのかしれません。



NFTとブロックチェーンと所有権の変遷リスト(Chain of Title)


NFTを作るのに必要なのは、永遠に個々のものとして認識したいアイテムがあるということです。不動産1軒とか、デジタルアートのような沢山の同一アイテムの1つのコピーでもよいのです。各NFTはそこでブロックチェーンに記録されます。この記録は、その生涯において、デジタルか現実かにかかわらず、当該アイテムについて回るので、所有権その他の情報を追跡するのが簡単になります。理論的には、不動産取引には実際かなり使えるものになります。



例えば、米国だけでなく、その他多くの国においても、不動産を購入するとき、タイトルサーチ(権原調査)が日常的に行われます。これは、これまでに誰がその物件を所有してきたか、これらの人々またはその末裔の誰かが所有権を法的に主張できるのかどうかを掘り下げていくものです。これが、現金払いするにしても膨大な時間がかかる理由の大きな部分です。所有権の変遷リストをチェックしなければならないからです。



おそらくクリーンな所有権の変遷リストとは、購入後にレポートに記載のない他の権利者が発覚し、それにより加入者に損害が生じた場合は、その損害を補償する「タイトル保険」を得るようなものです。これは、権原調査に不備があったり、記録されていないようなリーエン(先取特権)など、しっかり文書化されていなかったような、また、あなたの購入または所有権のステータスを脅かすような不動産の係争などがあったときには便利です。ブロックチェーンが不動産取引に活用できるのがここです。買い手・売り手双方にとって、確固たる所有権の履歴を確立することができるのです。長い歴史を持つ不動産には、権利の疑義が残る小さなリスクはあるでしょうが、新築物件で所有者の記録を残すためにブロックチェーンに登録されたものであれば、プロセスはかなりシンプルになるでしょう。



落としどころはどこか


Millionacreは、今の時点で、適切な支援と適切なプラットフォームと適切なマーケティング計画があるならば、不動産をNFTとして売るのは可能だと述べています。しかし、そのためには全てが揃っている必要があると指摘しています。なぜなら、全く新しい道を切り開いていくことになるので、法律上・税務上の「もしも」が沢山ちらついているからです。



どうしても売れない物件を持っているなら試す価値はあるけれど、今のところは、ちゃんとした価値と需要のある物件であれば、NFTに替えてみる時期ではまだなさそうだ、と述べています。アーリーアダプターになることに価値がある場合もありますが、NFTについては違うだろうと述べています。



ブロックチェーンを使って権原調査をすることができるのはいいですが、当面のところは、従来の所有権移転にブロックチェーンを使った記録保存のハイブリッド型が、より現実的かもしれません。本格的なNFTとしての不動産が現実になるためには、細々とした法的な部分を明らかにしなければいけません。



不動産はどのようにしてビリオネア製造工場になったのか


不動産は永く、金持ちや有力なコネの持ち主のためのものであったことは言うまでもありません。また、最近公表されたデータから、現代史のなかでも最も成果の上がる投資でもあったことも分かっています。他の投資では全く聞いたことのない、このような不公平な優位性(アンフェア・アドバンテージ)があるのですから、驚きではありません。しかし、そのような障害が崩壊しようとしています。以前であればかかったであろうコストのほんの一部で、不動産を通じて現実の財産を築くことができるのです。ミリオンエーカーは、不公平な優位性が、今なら一般の個人でも手に入れることができるのだと述べています。



(出所:Millionacres

(画像:Photo by Thought Catalog on Unsplash  )