[フィリピン]セブ・レジデンシャル市場(2020年第1四半期)

2020/07/07

[フィリピン]セブ・レジデンシャル市場(2020年第1四半期)

不動産サービス会社コリアーズがフィリピン・セブの2020年第1四半期不動産市場レポートを発表しました。同社によると、コロナの影響が需要、供給ともに出ています。オフィス市場と同様に、レジデンシャルも建物の衛生管理や統合型コミュニティへの注目が高まりそうです。


需要:Covid-19の影響を受けてレジデンシャルの需要は下がっています。景気後退と海外で働くフィリピン人労働者(OFW)からの送金減少により、レジデンシャルの成約数も減速することが見込まれます。

供給:ロックダウンにより工事がストップしたことで、レジデンシャルの建設工事にも影響が出ています。工事の遅れにより、コリアーズは2020年に完成予定のユニット数が当初予想から約半減して3,120戸となると予想しています。

値上がり/利回り:コリアーズは、エンドユーザー、投資家からの需要が弱まり、2020年の価格成長率は3%と緩やかになるだろうと予想しています。2021年、2022年のレジデンシャルも成約件数が回復することで、価格成長の速度も回復するでしょう。


中所得層向けのコンドミニアムユニット需要が、メトロセブのプロジェクトと成約率をリードしてきました。このセグメントの需要が増えてきているということは、セブの投資家、エンドユーザー共に過去数年で購買力を高めてきていることを示しています。2020年から2022年にかけて、竣工予定の新築コンドミニアムユニットのうち約45%に相当する14,200戸が中所得層向けです。2020年の需要は緩やかですが、デベロッパー各社は、今後12~36か月で需要を奪還しようと、この中所得層向けプロジェクトに力を入れて準備しています。


■今後のキーワード

1.統合型コミュニティ(Integrated Community)の需要

メトロマニラ外のその他の都市エリアに起こっているトレンドと同様、コリアーズは、Covid-19パンデミックにより、投資家もエンドユーザーも統合型コミュニティを求めていることが分かってきています。たとえば、投資用にコンドミニアムの購入をしようとしている人は、統合型コミュニティ内の物件を積極的に探す傾向にあります。コリアーズは、今後12~36か月、土地付きの住宅、コンドミニアムユニットにかかわらず、レジデンシャルプロジェクトの需要は、入居者が生活必需品やサービスがすぐ近くにあるような統合型の特徴があるかどうかにかかってくると見ています。コリアーズの予想では、2020年から2022年に開発予定のコンドミニアムユニットの39%ほどが統合型プロジェクトの物件となっています。


2.セブのエンドユーザー市場への対応

コリアーズは、土地付き住宅物件は引き続きOFWに人気の物件となると予想しています。ちなみに、OFWはエンドユーザーでもあり、セブの土地付き住宅市場の主要なドライバーです。OFWは広い屋外スペースを好む傾向にあることにも起因しています。


3.衛生と不動産管理を強調

今回のパンデミックにより、レジデンシャルの投資家、エンドユーザー共に、レジデンシャル内での身体的距離の確保や不動産管理の手順に焦点が当たるようになりました。バイヤーが購入の際に気にする主なポイントとして、衛生面や緊急時への備えが重要になってくるでしょう。



■2020年の竣工遅延

2019年末までに、メトロセブにおけるコンドミニアム供給量は44,190戸となり、うち76%がセブ市にあります。2022年末までには、年間約4,700戸のペースで増加し、メトロセブのコンドミニアム供給量は、32%増の58,400戸に達するとみられています。同期間の追加される供給量のうち、約52%はセブ市です。多くのビジネスが、セブITパーク、セブ・ビジネスパークに集中していることから、セブ市は引き続きコンドミニアム開発にとって人気の場所となっています。

パンデミック前のコリアーズの供給量予測は62,000戸でしたが、メトロセブ各地で建設工事の遅れがでていることから、予測の見直しが行われました。

▼セブ・高層レジデンシャル物件供給予測(単位:戸)(出所:Colliers)


2020年後半は工期の遅れが見られますが、2021年に入ると、マクロ経済の回復にともなって需要も戻ってくることから、デベロッパー各社も工事のペースを上げてくるでしょう。


■2020年の需要の冷え込み

2019年のコンドミニアムおよび土地付き住宅の成約件数は、それぞれ新記録の9,000戸と5,000戸となりました。2019年に成約した高層物件のうち半数近くがセブ市内でした。土地付き住宅の需要うちの29%もセブ市でした。

2020年はパンデミックの影響でレジデンシャル需要が冷え込むことが予想されます。高層物件の成約件数は、2019年の9,000戸から下がって、2020年から2022年は、年間7,000戸程度となることが予想されています。


■値上がりも緩やかに

2019年、中所得層および低所得層向け土地付き住宅プロジェクトは、順調に成約件数を伸ばしました。低所得層向けとはユニット当たりの平均価格が170万ペソ(約370万円)、中所得層向けとは平均価格が600万ペソ(約1,300万円)のものを言います。興味深いことに、高所得層向けセグメントの土地のみのプロジェクトも好調でした。これら土地のみのプロジェクトの価格は、180万ペソ(約390万円)から240万ペソ(約520万円)の価格帯でした。2019年、このセグメントにおける成約のほとんどが、セブ市から19キロ以上離れたコンソラシオンでした。ちなみに、このセグメントの需要をけん引したのは、ファミリーのためのより広いスペースを求めるフィリピン人投資家およびOFWでした。

コリアーズは、コンドミニアムユニットの価格は、2021年から2022年にかけて年間平均5.0%上昇し、2020年予想の3.0%より価格上昇のペースは上がると見ています。この価格上昇ペースの裏側には、堅調なレジデンシャル市場があります。メトロセブは、メトロマニラ外で最大のメトロポリタンであることから、政府が予測する2021年からの景気回復の恩恵を大きく受けるとみられています。また、OFWからの送金額も回復してくることで、土地付き住宅市場もまた再燃してくるはずです。

(出所:Colliers

(トップ画像:Roberto Jr Saldana on Unsplash)