2020/09/18
[フィリピン] コロナがフィリピンの熱い不動産市場を沈静化
フィリピンでもっとも急成長中の産業の一つである不動産。しかし、パンデミックが不動産需要を軟化させただけでなく、新規プロジェクトも減速させており、デベロッパー各社は最大30%ほどの売り上げ減に直面しています。
価格修正が入るのは必至とみられている一方、その修正幅は大きくなさそうです。というもの、ロックダウンにより物流コストが上がり、コンドミニアムの完成や支払の回収が遅れているからだ、とアヤラランドやSMデベロップメントを含む、不動産デベロッパー320社から結成される、分譲・住宅デベロッパー協会のロージー・ツァイ会長は述べています。
「デベロッパー各社はバイヤーの再選定に入っています。銀行も同じことをしています。融資を受けようとしている人が失業していないかダブルチェックしているのです。そうしないと、資金の回収ができません。」とツァイ会長はデジタル新聞Philstarの電話でのインタビューに回答しています。
「売り上げは30%落ちました。規模の小さい企業の下落幅はさらに大きいかもしれません。」
低価格住宅が最も影響を受けています。多くの移民労働者が失業し、ロックダウンが緩和されビジネスが再開されても、不動産仲介業者は、3月、4月の「停止」状態から売上が完全に戻ることはないだろうと話しています。
一方で、不動産仲介業者協会(Real Estate Brokers Association Inc.)のエミリー・ドゥテルテ会長は、わずかに価格修正が見られ、着実にお金を貯めてきた「真のバイヤー」を呼び込むことにつながるかもしれないと考えています。しかし、多くの人はまだ様子見の状態だと付け加えています。
不動産会社は原材料コストが高いので価格を大幅に下げることはできないが、ツァイ会長によると、各社は「少額の」割引や頭金の分割払いなどのより柔軟な支払条件を提供しています。また、ドゥテルテ会長は、売上を促進すべく、ロックダウン中の不動産エージェント向けの手数料は当初2倍にまでなったと語っています。
アヤラランド、SMDCなどの大企業は、コメントを控えていますが、2020年7月10日の声明の中で、アヤラランドは、レジデンシャルの売上の回復に楽観的な見方を示しています。
価格修正
わずかにでも価格が下がれば、不動産業界にとってはウェルカムでしょう。移民労働者、アウトソーシング企業の従業員、中国人のバイヤーによる需要が価格を吊り上げ、資産インフレの懸念を増大させていました。
「パンデミック、そしてPOGO(フィリピン・オフショアゲーミング事業者)の後押しもなく、コンドミニアム需要の差し迫った下落により、(資産価格)のトレンドが中期的には後退する可能性もあります。インフレが抑制されているのは、需要が弱いことを反映しています。」とING銀行マニラのシニアエコノミスト、ニコラス・アントニオ・マパ氏は話しています。
ルソン島で行われたロックダウン2週間分が反映されている、第1四半期のデータではまだこの状況は出てきていません。平均して、中央銀行のデータでは、3月時点でコンドミニアムの価格は前年同期比で23.6%増となっていますが、メトロマニラの都市部では、価格はより速いペースの28%増でした。いずれも、2019年からの「需要のスピルオーバー効果」の結果です。
2020年第1四半期に行われた、不動産サービス会社コリアーズの調査に基づくと、プレセールで販売されたユニット数は、2019年第1四半期と比べると落ちています。
フィリピン中央銀行のフランシスコ・ダキラ副総裁は、中央銀行が行った経済を支えるための金融政策緩和により開放された流動性が不動産価格を突き上げることはなさそうで、「銀行は不動産向けローンの査定にかなり慎重な姿勢を保っている」と述べています。
(出所:Philstar)
(トップ画像:Craig Whitehead on Unsplash )
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