2020/05/19
[フィリピン] OFWからの送金減少、失業増でフィリピン不動産価格が低下?
20年以上成長が続いたフィリピンの住宅価格ですが、コロナの影響で需要が伸び悩み、15%ほど低下が予想されています。特に、アフォーダブル・中所得セグメントがもっとも影響を受けるとみられています。
不動産コンサルタント会社コリアーズは、国内の失業増に加えて、海外で働くフィリピン人労働者(Overseas Filipino Workers(OFW))の失業、そしてフィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータ(POGO)として知られる、中国系のオンラインゲーミング会社による投資や雇用の鈍化により、住宅価格が下落するのではないかと予想しています。
「このレベルの価格修正があったのは、1998年、1999年のアジア通貨危機以来です。」と、コリアーズ・フィリピンのシニア・リサーチ・マネジャー、ジョーイ・ボンドック氏は話しています。「状況は、世界金融危機のときより悪いですが、アジア通貨危機ほどではないでしょう。というのも、金融システムが強固になっていますし、金利が過去最低レベルだからです。」
OFWからの送金は、アフォーダブル・中所得者向け住宅(170万ペソ~590万ペソ)の需要をけん引してきました。しかし、何千人というOFWが、世界的な景気後退の中で職を失うとみられており、送金額は今年60億USドルも減少すると予想されています。
フィリピンの2020年第1四半期の経済成長率は-0.2%となり、過去22年間で初のマイナスとなりました。今年後半の先行きもあまり明るくなさそうです。格付け会社フィッチは、フィリピン経済について、2020年は-1%となると予想しています。ただし、同社は、この予想について、不確定であり、ウィルスの状況次第ではダウンサイドのリスクも大いにありうるとしています。
2019年、デベロッパー「メガワールド・コーポレーション」、「SMデベロップメント・コーポレーション」と「プライマリー・ホームズ」の売上の20%~40%を占めたのは、POGOを含む、中国本土のバイヤーでした。
新規のPOGO従業員や投資家が、完成済みのコンドミニアムユニットを購入したり、賃貸したりすることがないので、完成しオーナーに引渡し済みのコンドミニアムユニットを対象とする、セカンダリー市場で空室が目立つようになるだろうとボンドック氏は述べています。同氏はまた、失業やOFWの送金額など、主要な経済指標を注意深く観察していく必要があると言います。
従来、完成済みのコンドミニアムを賃貸するPOGOの従業員や投資家が、渡航制限や事業拡大計画の保留などで不活発になるため、セカンダリーレジデンシャル市場の空室率が、2019年の11%から今年は15.5%ほどにまで上昇すると、コリアーズは考えられています。
一方で、首都マニラのあるルソン島における完成済みコンドミニアムユニット数は、2020年3月16日から行われているロックダウンにより建設作業が停止していることから、当初予想の14,000ユニットから20%以上下がって11,000ユニットになる見込みです。メトロマニラのロックダウンは、2020年5月31日まで延長されており、レジデンシャルプロジェクトの完成がさらに遅れる可能性があります。
フィリピンJLLのリサーチ&コンサルティングヘッド、ジャンロ・デ・ロス・レジェス氏は、「ビジネス心理の冷え込み、一時解雇、や海外のフィリピン人の帰国などが、不動産市場活動に短期から中期的に影響を与えることが予想される」としています。バイヤーたちが、自分の懐事情を精査して、大きな買い物を後回しにしているため、新規プロジェクトの成約率はすでに減速気味だということです。
しかし、フィリピンの2大デベロッパー、アヤラランドとSMデベロップメントは強気です。
香港では、アヤラランドの第1四半期の販売は年間にして6%増となりました。平均450万ペソ(約950万円)のユニットがセールスの大半を占めており、バイヤーの81%は香港人だと、アヤラランド・インターナショナル・マーケティング(香港)のカントリー・マネジャー、マリテス・バンコッド氏は述べています。
「海外のフィリピン人市場からのアフォーダブル住宅購入はやや減っていますが、我々の中所得向け・高所得向けブランドを購入するフィリピン人はまだまだいますし、提供されている様々なプロモーションを活用されています。」
SMデベロップメントのスポークスマンは、国内外のバイヤーからの強い需要を予想しています。「価格成長率、販売量ともにやや減速はするでしょうが、それでもすぐに回復できる自信があります。」
(出所:SCMP)
(トップ画像:Noypi xyz on Unsplash )
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