[フィリピン] ドミンゲス財務大臣:2022年に「正常に戻る」

2022/02/22



フィリピンのカルロス・ドミンゲス財務大臣は、2022年には事態が正常に戻ることに自信を見せています。1月初旬、オミクロン株による感染者数の増加がありましたが、重症化や死亡を限定的に抑えています。一方で、次の政権は、長引くCovid-19パンデミックの間に積み重なった負債の返済に重点を置いていく必要があると財務大臣は述べています。




ドミンゲス財務大臣は、日ごとのCovid-19感染者数も、1月中旬の39,000人から、2月に入って2,000人ほどにまで減少しました。フィリピンが確保した2億2,300万回分のワクチンのうち、2月中旬時点で、1億3,200万回分はすでに接種済みです。これにより、6,150万人がすでにワクチン接種を完了しており、さらに920万人はブースター接種を受けていることになります。



大規模接種を続けることは、より生産性の高い経済部門を再開させ、今年、経済成長率7~9%を達成するための地固めになると見られていました。



しかし、Covid-19ワクチンを世界的なサプライヤーから大量購入することで、フィリピンの負債は膨れ上がる結果にもなりました。フィリピンは、2021年、国際金融機関3行から合計20億ドル(ワクチンに12億ドル、ブースターおよび子ども用ワクチンに8億ドル)を借り入れました。さらに、日本や韓国といった二国間協定国からも、ワクチン接種プログラムに必要だった冷却倉庫などの物流危機を含む、ワクチン接種の展開に必要な資金を調達するために借り入れを行っています。




2021年末時点で、フィリピンの公債の対国内総生産比は、過去16年間で最も高い60.5%となり、定められている上限の60%を超えましたが、新興市場にとっては管理できるレベルとしています




しかし、ドミンゲス代務大臣は、CNBCに対して、「我が国の公債の対国内総生産比は、全く無理のない範囲内であること、同等の信用格付け国が経験した範囲内であることを認識しなくてはなりません。」と主張します。



フィッチ・レーティングスは、2月中旬、フィリピンの信用格付けとして、良好な信用力を意味する「BBB」を維持しました。 一般政府負債、つまり中央政府、地方政府および社会保障機関の負債全体から債券保有分を差し引いたものは、今後数年、同じレベルの信用格付けの国の平均を下回るだろうと予測しています。



ドミンゲス財務大臣は、財政再建のための提案策定の最終段階に入っています。提案は、次の政権へと投げられ、負債を返済していくための歳入確保をしていくことになります。



ドミンゲス財務大臣は、新しい税制が導入される、もしくは税率が上がるといったことについては言及していませんが、今年5月9日に予定されている大統領選挙で、財政再建は各候補と議論することとなりそうです。



「すべての大統領候補とその経済チームに対してブリーフィングをする準備ができています。増加する負債をどのように扱うかについての考えをプレゼンする予定です。」




財務省によると、次の政権では、「比較的税負担の少ない」業界に焦点を当てていくようです。例えば、カーボン税の実行可能性、暗号通貨への賦課、12%VAT支払の免除規定の撤廃、タバコ・電子タバコ・アルコール飲料および甘い飲料への物品税の引き上げなどが現在検討されているということです。



ドミンゲス財務大臣は、次の政権に向けてもスムーズな移行を目指しています。「今までも、整然と平和的な権力の移行を行ってきました。次の政権に向けた移行のための資料をすでに準備しています。」



フィリピン中央銀行が出した声明では、ドミンゲス財務大臣が、最近の改革と政府の機能の継続性は、次の政権の強固なマクロ経済のファンダメンタルズの維持を支えると述べたとされています。




ドミンゲス財務大臣は、「外国投資法、小売自由化法、公共サービス法の改正といった、外資に開かれた経済を意味する、今までの流れを変えるような経済改革を議会が可決したことで、経済改革の勢いが政権が移ったあとも続くことを強く示しています。これらの改革により、フィリピンは、すぐにも急速な経済成長へと軌道を戻し、財政再建を支えていくでしょう。」と述べています。



「フィリピンは、歴代の政権を通して構造改革を進め、国のマクロ経済のファンダメンタルズをより強固なものにしてきました。これは、大きな発展と金融包摂にもつながりました。」



「経済政策の舵取りを助けた、優れたテクノクラート(技術専門者)は、2022年以降も残って、構造改革を引き続き進めるでしょう。フィリピンが、今年、低中所得国から高中所得国へと移行することが期待されていますので、これらの構造改革はフィリピンが経済発展の次のステージを進むのに役立つでしょう。」



フィリピンが高中所得国になれば、二か国間・多国間貸付機関が政府開発援助(ODA)に適用している譲許的レートが適用されなくなります。





 
(出所:Business Inquirer
(画像:Photo by Carla Cervantes on Unsplash )