[ベトナム] 外国人バイヤー、不動産譲渡時の税率判断待ち

2022/08/29


外国人から転売先への不動産の移転にかかる書類が、国内の税務局で保留中となっています。どのような種類の税金を課すべきか、ベトナム税務総局の最終判断を待っているからです。


ホーチミンシティのトゥドゥック税務局によると、アパートメントの長期リース契約の権利義務を他者に譲渡することを希望している外国人がいます。しかし、この取引に対して、どのような税金を課すべきかという厄介な問題が発生しているというのです。あるケースでは、譲渡をしようとしている外国人が、ユニットの価値の2%に相当する移転税が課されるべきだと主張していますが、税務当局は、リース契約にかかる税金が課されるべきだと主張しており、現在10%の税率がかかっています。



外国人バイヤーが直面する税金問題

2015年、前述のケースの外国人は、グリーン・シティ・ディベロップメントJSC(Green City Development JSC)と48年間のアパートメントリース契約を締結しました。この48年は、2020年6月にアパートメントが引き渡しされた日から起算することになっていました。契約には、賃借人は、第三者に契約を譲渡することが可能であると規定されています。さらに、リース契約の手続きを完了した後、第三者は賃貸人と購入契約の締結することもできることになっています。



しかし、トゥドゥック税務局は、付加価値税、個人所得税、家族事業・個人事業の税務にかかるガイダンスを示す財務省の2021年6月1日付の通達No. 40/2021/TT-BTCに規定の通り、リース資産活動から、当該人の所得は決定されると述べています。このガイダンスによると、譲渡価格に対して10%の税率が適用されることになっています。



トゥドゥック税務局は、税務総局に対して指示を求めています。


現地のオンラインニュース「Vietnam Investment Review」によると、トゥドゥック税務局の関係者の話として、上記のようなケースが他でも起こっているとようです。「最近では、外国人から持ち込まれる取引契約のほとんど全部が50年リース契約にかかるものです。(30%の)外国人向けの販売枠が多くのプロジェクトで埋まってしまっているからです。さらに多くの外国人が、この納税のために書類を提出していますが、税務総局からの追加のガイドラインを待たねばならないので、現時点ではこの問題を解決することができないのです。」


また、同ニュースは、関係者からの情報として、ゲートウェイ・タオ・ディエン(Gateway Thao Dien)、タオ・ディエン・パール(Thao Dien Pearl)、ザ・ナッシム(The Nassim)といったホーチミンシティ内のプロジェクトは、すでに外国人向けに表向きに販売できる上限の30%に達しており、デベロッパーは、代わりに、外国人に対して長期リース契約を勧めていると報じています。長期リース契約は、通常50年の一括払いです。


CBREベトナムのエグゼクティブディレクター、ドゥオン・トゥイ・ドゥン氏によると、外国人が50年間の所有権契約付きで住宅を購入し購入契約に署名する場合、2%の移転税がかかるが、リース契約に署名する場合、所有権証書が発行されないため取引とみなされず、移転税は適用されないということです。代わりに、財務省が発行する現在の税制に従って、リース税が課されることになると述べています。


しかし、長期リース契約は、抵当権といった、購入契約とまったく同じ便益があるわけではありません。ドゥオン氏は、「購入者が長期リース契約に署名して、アパートメントを使用し続ける場合には、何も変わりません。問題が顕在化するのは、購入者が第三者にアパートメントを譲渡して、リース税の代わりに移転税の適用を受けたいと望むときです。これは、現在の枠組みの欠点であり、明確化が必要です。」


ホーチミンシティ弁護士会のチャン・ドゥック・フオン弁護士は、外国人への販売が限られていることで、外国人はパスポートや個人文書を認証することができないと言います。こういった場合、デベロッパーおよび外国人バイヤーは、すべての要件がそろったら、外国人は売買契約の締結に変更できることを規定した長期リース契約に署名をしたのです。


「要は、デベロッパーが外国人顧客に住宅を販売するけれども、売買契約に署名するための十分な条件が揃うのを待つということです。これは、リースという名目で成立されていたとしても、不動産の移転にかかる契約なのです。外国人オーナーが、不動産が必要なくなったら、法的にそのユニットの権利義務を第三者に移転することができます。」


しかし、フオン氏は、リース契約であったら、現在の法律のもとでは、他人に移転することはできないと強調します。だからこそ、現在多くの取引では、購入者がデベロッパーとの古いリース契約を解除して、デベロッパーが第三者と新しい契約を締結できるようにしているのです。


VCIリーガルの銀行・資本市場担当のパートナー兼ヘッドであるケント・ウォン氏は、デベロッパーと外国人の間の契約が「リース契約」と呼ばれたとしても、実際には、不動産の譲渡契約だと主張しています。


「他の商業リース契約では、契約に署名した後、10%の税率が課されます。しかし、このリース契約では、デベロッパーが不動産事業法に従って、外国人に土地使用権を移転します。この外国人が50年間にわたって、当該土地/ユニットのオーナーになります。したがって、このリース契約は不動産譲渡契約とみなされて、譲渡価格の2%の税率が課されるべきです。」と述べています。


ホーチミンシティ不動産協会の統計では、2015年から2020年にかけて、約16,000戸のアパートメントが外国法人または外国人に販売されました。その多くは、中国人、韓国人、日本人そしてシンガポール人です。



(出所:Vietnam Investment Review

(画像:Photo by David Gabrić on Unsplash)