2022/07/14
クアラルンプール市内のオフィススペースの賃料および稼働率のレベルには下向きの圧力がかかっています。オフィスビルの稼働率が低いところに、今年はかなりの量の供給が加わることが見込まれているからです。対して、クアラルンプール周辺エリアの稼働率は比較的安定的です。幅広いテナント企業があること、特にアクセスが便利なエリアを中心に、高品質の地方分散型オフィスがあることが背景です。
一方で、スランゴールのオフィス市場は、賃貸活動の増加が見込まれており、回復力を見せるでしょう。特に、マレーシア政府によって指定された情報と知識の開発を促進するためのマルチメディア・スーパー・コリドー(MSC)と呼ばれる地域の建物およびグレードAの建物で賃貸が活発になるだろう、とナイトフランク・マレーシアの法人サービス担当執行ディレクター、テ・ヨン・キアン氏は述べています。
マレーシアは、国として、パンデミックからエンデミックの段階へと移行したことで、4月初旬、2年ぶりに国外からの隔離なしの渡航・観光を認めました。これにより、ビジネス・貿易から投資まで、ビジネスはさまざまな分野において息を吹き返しました。世界中でワクチン接種率が高まり、各国が国境を再開するにつれて、オフィス市場でもペントアップ需要が見込まれています。
エンデミックへの移行に関連するトレンドから、ハイブリッド型の働き方を選択する企業や組織が優位に立ちそうだということが分かっています。したがって、このような新しい働き方を支援するための、しっかりとしたインフラや設備があることが重要になってきます。
職場に戻る従業員も増えるため、家主は健康・安全面に重点を置いています。紫外線システムを備えて設備を近代化し、非接触アクセスを推進する技術を取り入れることで、屋内環境品質(IEQ)を改善する取り組みが含まれています。
オフィス市場の回復ペースは、経済活動の増加および企業マインドの回復にともなって、今年さらに持ち直してくるだろうとナイトフランクは述べています。オフィススペース需要も、職場に戻る従業員が増え、企業も物理的なオフィス計画を固めてくるので、増加が見込まれています。
クアラルンプール市内とクアラルンプール周辺エリアでは、前四半期と比較して、オフィス稼働率にわずかな上昇が見られました。スランゴールの稼働率は安定的でした。しかし、依然としてオフィス市場はテナント企業に有利な状態が続いています。
ナイトフランクのデータによると、クアラルンプール市内の新興CBD、旧CBD、そしてクアラルンプール中心地周辺(市内の新旧CBDの周辺エリア)のプライムA+、グレードA、グレードBオフィスの平均賃料は横這いで、それぞれ平米当たり76.4リンギット、48.3リンギット、41.7リンギットでした。
クアラルンプール周辺エリアでは、プライムA+、グレードA、およびグレードBオフィスの平均賃料が、前四半期比で上昇しました。ダマンサラ・ハイツでは、0.2%上昇して平米当たり48.2リンギット、ミッドバレーシティ(MVEC)/KLエコシティ(KLEC)では0.1%上がって64.9リンギット、バンサー・サウス/ケリンチでは1%上昇して58.9リンギットでした。KLセントラルは68.4リンギット、タマン・トゥン・ドクター・イスマイル(TTDI)/モントキアラ/ドゥタマスは52.0リンギット、およびパンタイ/バンサーは54.1リンギットで変わらずでした。
スランゴールでは、2022年第1四半期、賃料は安定的に推移しました。ペタリン・ジャヤは若干上がって平均賃料は平米当たり47.3リンギット(2021年4Qは47.1リンギット)、サイバージャヤは下がって平米当たり40.0リンギット(2021年4Qは40.1リンギット)でした。スバンジャヤとシャーアラムは変わらずで、それぞれ44.3リンギット、36.7リンギットでした。
一方で、クアラルンプール市内の平均稼働率は前四半期と比較して+0.9%とやや上昇して67.1%になりました。新興CBDと旧CBDともに稼働率があがり、新興CBDで66.5%(+1.1%)、旧CBDで62.8%(+0.9%)でした。クアラルンプール中心地周辺では対前四半期で-0.9%の80.4%でした。
クアラルンプール周辺エリアでも、平均稼働率はわずかに上がって+0.5%の86.9%となりました。上昇したエリアは、MVEC/KLEC(84.5%)およびバンサー・サウス/ケリンチ(93.5%)でした。一方で、減少したエリアは、ダマンサラ・ハイツ(74.7%)、KLセントラル(91.6%)、TTDI/モントキアラ/ドゥタマス(77.3%)、パンタイ/バンサー(86.8%)でした。
スランゴールの全体的な稼働率は、2021年第4四半期の74.4%からわずかに下がって、2022年第1四半期は74.3%でした。稼働率が前四半期と比較して上昇したエリアは、ペタリン・ジャヤ(73%、+0.8%)で、下がったエリアはスバンジャヤ(76.4%)、サイバージャヤ(72.8%)でした。シャーアラムは82.9%と変動なしでした。
2022年第1四半期、クアラルンプールの正味成約面積は、40,210平米と大幅な増加が見られました。スランゴールでは一方で2,280平米のマイナスでした。スバンジャヤでテナントの大規模な移動が見られました。
現在、クアラルンプール市内のオフィススペースの推定供給量は532万平米です。続いて、クアラルンプール周辺エリアの266万平米、スランゴールの236万平米の、合わせて1,034万平米です。
建設中のオフィススペースは、93.6万平米あります。そのうち、クアラルンプール市内が最も多く42.5万平米、クアラルンプール周辺エリアが31.3万平米、スランゴールが19.8万平米です。
ナイトフランクの予測では、オフィススペースは9.1%増加する見込みです。
(出所:The Edge Markets)
(画像:Photo by d: :p on Unsplash )
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