2019/12/20
[シンガポール] 住宅価格、今後二年間で2%上昇(フィッチ・レーティングス)
フィッチ・レーティングスの世界住宅・住宅ローン見通し2020年レポートによると、シンガポールの住宅価格は今後二年間で穏やかな成長を続け、2020年、2021年で2%上昇するとみられています。
レポートによると、「2019年第1四半期にGDP成長率が0.6%と低迷しましたが、今後2020年、2021年で1.5%という実質GDP成長率の回復を反映して、住宅価格も成長が期待される」としています。
2018年第3四半期から2019年第1四半期にかけて、住宅価格は0.7%低下しました。これは、規制強化と住宅ローン利率の上昇が市場心理を冷やしました。しかし、不動産価格は2019年第2四半期わずかにリバウンド。フィッチは、2019年末にかけて、「わずかな成長」が見られるとしています。
低金利が不動産価格の上昇に貢献するだけでなく、世帯収入の成長率が住宅価格の上昇率を上回っていることもあり、借り手の「購入しやすさ(アフォーダビリティ)」が改善するとしています。しかし、フィッチは「政府が、経済ファンダメンタルズでは説明のつかないペースで住宅価格が上昇しているとの見方を示す場合、またマクロ・プルーデンス*な対策を講じて、市場過熱抑制をする可能性があります。」
*マクロ・プルーデンス=金融システム全体のリスクの状況を分析・評価し、それに基づいて制度設計・政策対応を図ることを通じて、金融システム全体の安定を確保するとの考え方(出所:日本銀行)
今後二年間で、フィッチは、住宅不良債権(NPL)比率がやや増加するものの、世帯のDIT(Debt to Income Ratio)*の改善により、0.4%~0.5%と低いレベルを維持すると予想しています。「2020年、2021年ともに失業率が約2%と低水準で推移することに支えられて、住宅ローンも好調でしょう。」
*DTI=月々のローン返済額合計(Debt) / 1ヶ月の総収入(Income)
加えて、住宅ローンの金利も近い将来は上がらないとみており、これが借り手の返済能力を助けることになりそうです。住宅ローンの金利は、2019年前半期、3か月SIBOR(Singapore Interbank Offered Rate)などのベンチマーク金利の急騰を受けて、2%上昇しました。しかし、シンガポールのベンチマーク金利は、今年7月から米国の連邦準備制度が3度にわたる利下げを行ったことで、低下を始めました。
フィッチはまた、住宅ローンの貸付高について、2019年は0.5%とわずかにマイナスとなる見込みですが、2020年、2021年は、市場心理の改善にともなって、年間2%の成長を予想しています。2019年の貸付高の鈍化は、2018年に施行された追加購入者印紙税とLTV(資産価値に対する負債比率)引き締めを反映してのことです。
一方で、成長は限定的です。これは、年間人口増加率が1%未満と鈍化の予想であることと、住宅価格が過熱の兆しを見せたら、政府が過熱抑制策を講じるかもしれないとの見方を反映しています。
(出所:Business Times)
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