2022/08/15
フィッチ・ソリューションズ・カントリーリスク・アンド・インダストリー・リサーチ(Fitch Solutions Country Risk and Industry Research)は、インフレの高止まりなど課題があったにもかかわらず、前半期のGDP成長率が予想よりも良かったことを受けて、フィリピンの2022年の経済成長率見込みを上方修正しました。
最近発表したレポートの中で、フィッチ・ソリューションズは、今年の国民総生産(GDP)の伸び率を、政府の目標である6.5%~7.5%の範囲に入る、6.6%と予想しています。前回の予想6.1%から引き上げました。
しかし、世界経済の減速に加え、世界的な金融引き締め、エネルギー価格の高騰が予想されることから、今年後半期は成長が減速気味になる予測です。
第2四半期、フィリピンの国民総生産(GDP)は、前年同期比7.4%増と、第1四半期の8.2%から減速し、1月から6月の半年間では7.8%となりました。
対前期の季節要因調整後では、第2四半期のGDPは第1四半期の1.9%に対して-0.1%となりました。
レポートでは、成長減速はフィッチ・ソリューションズの予測通りであったものの、減速幅は予想より少なかったと述べられています。後半期の成長率は、前半期の7.8%と比較すると弱まりそうだ、とも述べられています。
前半期の成長率について、レポートでは、経済の再開が進んだことに加え、5月の大統領選関連の支出、さらに緩和的な金融政策が消費や投資を押し上げたことが貢献したと分析されています。
「これら追い風が、エネルギー価格の高騰、世界経済の減速、世界的な金融引き締めによる外的な向かい風を相殺する形になりました。しかし、成長の向かい風が強まる中で、2022年後半期の成長が減速する中、今後数カ月で追い風の影響は徐々に消えていくでしょう。」
フィッチ・ソリューションズは、世界的な成長の減速が予測されることから、フィリピンの輸出も去年の7.8%、前半期の7.4%と比べて減速し、今年は6%程度に留まると予想しています。
2022年7月の輸出は、6月の6.4%から大幅に下がって、1%増となりました。電子製品販売の減少が原因と分析されています。
フィリピンの総輸出のうち、歴史的に見て、電子機器が約51%を占めています。
レポートでは、フィリピンはエネルギーの純輸入国であるため、エネルギー価格の高止まりが続くと、国内貯蓄や投資に影響を及ぼしそうだとも述べられています。
「エネルギー価格の高止まりにより、フィリピンの輸入にかかるコストを大幅に引き上げ、貿易赤字
を拡大させています。」
また、加速するインフレ率により、家計の購買力は弱まる見通しです。インフレ率は、2022年7月、前月の6.1%からさらに上がって6.4%となりました。
今年始まってからの平均インフレ率は4.7%で、政府の目標値2~4%を超えています。
月々の価格上昇率は、4月の4.9%からすでに政府の目標域を超えています。
「現行のロシア・ウクライナ紛争や域内の食料生産国が悪天候に見舞われる中、エネルギーと食料の価格が、フィリピン国内での価格の上昇圧力となるでしょう。」
インフレ率が高止まりする中、フィリピン中央銀行を含む各国中央銀行は、さらなる政策金利の引き上げに走ると見られており、投資や民間消費に影響を及ぼしそうです。
BSPの政策決定機関である金融政策決定会合(Monetary Board)は、今年に入って、中央銀行の主要政策金利を合計で125ベーシスポイント引き上げました。
フィッチ・ソリューションズは、2022年末までに、中央銀行がさらに100ベーシスポイント引き上げ、翌日物のリバースレポ金利を4.25%まで持ってくると予測しています。
こういった課題がある中、フィッチ・ソリューションズは、コロナ感染者数が増えてきていることもあって、また政府が行動制限を行う可能性もあり、それが国内の成長に影響するとして、今年の経済成長はダウンサイドリスクにさらされていると述べています。
ロシア・ウクライナ紛争がエスカレートすれば「エネルギー価格をさらに吊り上げ、投資意欲とフィリピンの貿易収支に圧力をかける可能性がある」としています。
(画像:Photo by Michael Buillerey on Unsplash )
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