2018/08/12
プロップテックとフレキシブルスペースは、市場の透明性を崩壊させるのか?
新しい技術や新しいビジネスモデルが従来の不動産プレイヤーを崩壊させ、不動産セクターは未曽有の構造改革に直面しています。まだその全体的な影響は感じられていませんが、プロップテックセクターの成長とフレキシブルオフィスのブームは不動産の透明性に大きな影響を与えることができたはずです。
プロップテックの影響と採用
技術はよく、不動産業界と、特にその透明性の、将来的な万能薬であるとみなされてきました。過去2年間、不動産と技術がぶつかり合うことで生まれたプロップテックセクターは、「限界質量」に達しました。2016年以来、60億USドル(約6,600億円)以上の資金を集めており、これには、従来のサービスプロバイダやデータ会社が、その事業活動やサービスを近代化するのに行った大規模な投資すら入っていません。
技術は今や無数の方法で不動産とかかわっており、センサーがいたるところに配置された「スマート」ビルディングから、生産性監視ソフトフェアまであります。不動産業界は、膨大な量のデータを生み出しており、透明性を向上させるためのとてつもないポテンシャルを抱えています。プラットフォームの性質もまた、ベストで便利な商品が、国境や地域間を越える機会を与えており、急速に広がっています。
米国、オランダおよびカナダは、これらのツールの採用という点でリードしていますが、透明性が低い国にもプロップテックのエコシステム(収益構造)は存在し、透明性に向けて急速に発展する可能性を秘めています。
しかし、新しいデータの品質、一貫性、信頼性において懸念点もあります。「データスクレイピング*」だとか「ビッグデータ**」といった技術の当然の副作用です。しかし、一般的に言えば、新しいツールというのは、今後透明性の向上を推し進めるうえで重要なポテンシャルを持ち得ています。
*スクレイピング:ウェブサイトから情報を抽出するコンピュータソフトウェア技術のこと。(出所:Wikipedia)
**ビッグデータ:一般的なデータ管理・処理ソフトウエアで扱うことが困難なほど巨大で複雑なデータの集合を表す用語。(出所:Wikipedia)
世界的なプロップテックツールの採用
(出所:JLL, LaSalle Investment Management)
フレキシブルオフィスに「隠された」スペース
WeWorkやIWGなどにリードされるフレキシブルオフィススペースの急増は、過去2年間で不動産業界に起こった大きな変化のひとつです。これらのプラットフォームのフレキシビリティと職場環境が賞賛される一方で、透明性に与えうる影響についての議論はほとんどされてきませんでした。
ロンドンを例にとってみましょう。総オフィススペースのほぼ4%にフレキシブルオフィスプロバイダーが入っており、ロンドンはフレキシブルオフィス市場において世界一位となっています。フレキシブルオフィスプロバイダーの分布を見ることはできますが、それらのスペースの用途、利用者、価格設定については追うことができません。このことから、従来の市場トラッキングの正確性が徐々に失われる可能性があることについての議論があります。最悪のシナリオは、不動産会社とフレキシブルオフィスプロバイダーがそれぞれ独自のデータセットを守っているという、非常に分断された市場です。
(出所:JLL)
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