[フィリピン]2020年不動産市場の追い風・向かい風

不動産コンサルタント・コリアーズがマニラで行われた不動産フォーラムにて今後のフィリピン不動産の追い風・向かい風について語りました。

[フィリピン] 2020年不動産市場の追い風・向かい風


不動産コンサルタント、コリアーズ・フィリピンのマネージングダイレクター、リチャード・レイムンド氏は、2020年1月22日マニラ・ポロ・クラブで開催された、Inquirer紙の不動産部門の初めてのフォーラムに参加し、フィリピン不動産市場の2020年見通しについてプレゼンを行いました。


■主な変化点

コリアーズは、2019年の不動産市場は堅調でしたが、不動産プレイヤーの戦略にいくつかの変化点があったことを指摘しています。

・不動産会社や通勤するオフィスワーカーが悪化するメトロマニラの交通渋滞に対応すべく、コリビング関連のプロジェクトの開発が進んでいる。

・中心業務地区(CBD)における開発可能な土地が不足していることから、主要なCBDの周辺地域に中間所得層向けのコンドミニアムユニットの販売が目立ってきている。

・政府のインフラ整備計画を受けて、メトロマニラ以外のエリアでの土地の取得やオフィス建設が相次いでいる。政府による首都圏での経済特区の新設停止、および投資家に与えられる税制優遇措置を一掃する税制改革法案の承認待ちなどを背景に、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータ(POGO)やビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)を含むテナントのための代替の拡大先の見極めが重要。

コリアーズは、巨額の公共インフラ支出に支えられ、フィリピンの経済は上向きであると予想しています。この政府のインフラ支出を背景とする経済成長は、さらに不動産セクターを盛り立てていくことでしょう。


■向かい風

一方で、コリアーズは、不動産市場の向かい風となりうる要因についても言及しています。


スキルのある建設作業員が急激に不足することから、メトロマニラにおけるレジデンシャルプロジェクトの立ち上げに影響を与えうる。

・議会での承認待ちの包括的税制改革(Comprehensive Tax Reform Program)の最終版にかかる懸念事項。法人所得税率の引き下げと外国人投資家に与えられる税インセンティブの合理化を提案する法案の承認が遅れていることから、テナント企業は様子見の姿勢

政府のインフラ予算のフル活用にかかる課題も、不動産デベロッパーの拡大戦略に指針を与える、重大な公共事業の工事遅れにつながりそうです。


■成長の推進力

前述のような向かい風はあるものの、コリアーズは、市場にはまだオポチュニティがあるとみています。コリアーズは、今後12か月の成長の推進力となりうる次のような要素を挙げています。

(1) 公共インフラ

橋、空港、鉄道、有料道路など公共インフラの整備により、土地の価格が上がり、公共交通指向型開発(transit-oriented development)の強化につながるため、デベロッパーのプロジェクトにプラスの影響を与えることになりそうです。


(2) POGO(オフショア・ゲーミング・オペレータ)

オフショア・ゲーミング企業は、2019年1~9月のオフィス市場を独占してきました。2020年もオフィススペース需要の主要なけん引要素になるだろうと予想されています。銀行や政府系機関といった従来からのテナントもまた同様に需要をけん引しています。


(3) フレキシブル・ワークスペース

コリアーズは、今後3年間で、新規の賃貸可能リテール供給が約100万平米ほど完成すると予測しており、モール運営事業者は革新的な賃貸戦略を実施して、この大量の新規リテールスペースを埋めるべく消費者の関心を引くようなテナントを呼び込むことが必要だとしています。

今後12か月で、コリアーズは、メトロマニラのモール開発業者にとっての最大のオポチュニティは、フレキシブル・ワークプレイスを入れることだと考えています。フレキシブル・ワークプレイス事業者は、常にメトロマニラ内でスペースを探している状況です。マカティCBDやベイエリアなどの主要ロケーションにおけるオフィスの空室率が0.5%~1.0%前後で推移していることから、フレキシブル・ワークプレイス事業者は適切なスペースを競って探している状態です。


(4) フードコート

コリアーズはまた、メトロマニラのモール内にフードコートが再出現していることについても言及しています。ユニークなテーマとモダンなデザインを備えたフードコートが、モールの呼び物となっているようです。今後12か月で、コリアーズはメトロマニラ全土でモール内のフードコートの改装が目立ってくると予想しています。


(5) REIT(不動産投資信託)

今後12か月でフィリピンの不動産セクターを再定義する大きな進展といえば、不動産投資信託(REIT)法の完全施行でしょう。

コリアーズは、フィリピン国内のREITを管轄する施行規則(IRR)改正を受けて、REIT法施行に多大な関心が寄せられていると考えています。同法の施行により、フィリピンの不動産および資本市場がさらなる発展を遂げるでしょう。REITはさらに建設やインフラセクターも加速させることとなり、経済に乗数効果を与えることになりそうです。

REITを最大限活用するために、コリアーズはデベロッパー各社に対して以下のような助言をしています。

・より安く資本を獲得すべくREITに不動産を売却する
・REITの収益を、オフィス、モール、倉庫などの資産の改装や位置づけの変更に使用する
・REITの収益の一部をマニラの埋め立て地域の物件取得に取っておく
・REITを資産評価のためのベンチマークとして利用する

複数のデベロッパーがREITへの関心を示しています。先行者利益を得られるのはどのデベロッパーか。今後の動きに注目です。

(出所:Business Inquirer