[マレーシア] デベロッパー各社、2020年をどう乗り切った?(1/2)

2021/08/30


不動産を購入するとき、不動産デベロッパーの評判は気になるものです。特にコロナウイルスの感染大流行が始まった2020年、各社はどう乗り切ったのでしょうか?今日は、マレーシアの代表的なデベロッパー10社を、当期純損益の観点から見ていきましょう。2回に分けてお送りする、第1弾です。


IOI Properties (IOI プロパティーズ)

2020年度(*)の純利益:4.6億リンギット(約119.6億円)

(*)2020年6月30日で終了した1年間


IOI Propertiesグループの2020年度の純利益は、4.6億リンギット(約119.6億円)で、前年度の6.6億リンギット(171.6億円)から31%減となりました。売上高は22億リンギット(約572億円)から21.1億リンギット(約549億円)に3.69%減少しました。


2020年3月に行われたロックダウンから徐々に経済が再開した第4四半期の純利益は、前年の7,136万リンギット(約18.6億円)から32.81%減の4,795万リンギット(約12.5億円)でした。売上高は4.1億リンギット(約106.6億円)から52.07%増の6.1億リンギット(約158.6億円)に増加したものの、投資資産の減損、不動産開発費・在庫の評価損、および外貨建ての借入および預金の為替差損益を除くと、税引き前利益は3.4億リンギット(約88.4億円)であったと発表しています。前年同期の1.6億リンギット(約41.6億円)から115%増となることになり、同社は不動産開発部門の寄与分、関連会社の土地売却による利益の持ち分、シンガポールの合弁事業の持ち分減などによるものだということです。


現在進行中のプロジェクト:

タウンシップ開発(Bandar Puchong Jaya (Selangor), IOI Resort City (Putrajaya), Bandar Putra Kulai (Johor), Bandar IOI Segamat (Johor), Bandar Puteri Puchong (Selangor), Taman Lagenda Putra Kulai (Johor), Taman Kempas Utama (Johor Bahru), 16 Sierra (Selangor))他 


▶IOI Propertiesのアニュアルレポート(英語)

(出所:IOI Properties



IJM Land(IJMランド)

2021年度(*)の純利益:4.32億リンギット(約112.3億円)

(*)2021年3月31日に終了した事業年度


IJM Landは、1995年にオープンした9.3平方キロにおよぶタウンシップ開発「Seremban2」で知られています。


IJM Landの親会社であるIJM Corporationの2021年度の純利益は4.32億リンギット(約112.3億円)で、2020年度の2.5億リンギット(約65億円)から72.3%増となりました。主にプランテーション事業で、物価上昇と生産量増による増収が貢献しました。


不動産部門の売上高は12.97億リンギット(約337.2億円)で、昨年の21.9億リンギット(約569.4億円)から40.8%減となりました。これは、特にMCO(活動制限令)の期間に工事が進まなかったこと、前年に貢献したロンドンの「ロイヤル・ミント・ガーデンズ」プロジェクトの貢献分がなかったことです。不動産部門の税引前利益は、前年の2.03億リンギット(約52.8億円)から13.2%減少して1.77億リンギット(約46.0億円)となりました。


現在進行中のプロジェクト:

The LIGHT Waterfront Penang、 3 Residence、The Terraces Condominium (Penang)、Pantai Sentral Park、Riana Dutamas @ North Kiara(KL)など


▶IJM Corporationのアニュアルレポート

(出所:IJM



Sunway(サンウェイ)

2020年の純利益:3.6億リンギット(約93.6億円)


サンウェイの最も有名なプロジェクトは、複数受賞のタウンシップ開発「サンウェイシティ」です。インテグレーテッド・コミュニティで、レジデンシャル、商業、教育、ホスピタリティ、リテール、レジャー、ヘルスケア、工業がバランスよく組み込まれており、タウンシップ全体がグリーンビル・インデックス(GBI)認証を受けています。


サンウェイの2020年の純利益は、2019年の7.1億リンギット(約184.6億円)から下がって3.6億リンギット(約93.6億円)となりました。売上高も、48億リンギット(約1,248億円)から38億リンギット(約988億円)へと減少しました。これは、ヘルスケア部門以外のすべての事業部門の貢献分が少なかったことによります。


不動産開発部門は、開発プロジェクトの販売減、工事の出来高支払減により売上高が9.3%減少し4.95億リンギット(約128.7億円)となりました。


現在進行中のプロジェクト:

SITRINE LAKEHOMES @ Sunway Iskandar(Johor)、Grid Flexi-Suite @ Suway Iskandar (Johor)、Grid Residence @ Sunway Iskandar (Johor)、Grid Retail @ Sunway Iskandar(Johor)、Sunway Avila(Klang Valley)など


▶Sunwayのアニュアルレポート

(出所:The Malaysian Reserve



Eco World Development Group Berhad(エコ・ワールド・デベロップメント・グループ)

2020年度(*)純利益:1.35億円(約35.1億円)

(*)2020年10月31日に終了した事業年度


Eco World Development Groupは、2013年Focal Aims Holdings Berhad社のリバーステイクオーバー以降急激に成長した会社です。


Eco World Development Groupの2020年度の純利益は、1億3,517万リンギット(約35.1億円)で、前年の2億342万リンギット(約52.9億円)から、約34%減少しました。売上高も前年の24.6億リンギット(約639.6億円)から減少して、20億リンギット(約520億円)となりました。


2019年のEco World Development Groupは、設立以来過去最多となる竣工および引き渡しがあり、第4四半期単独では、2018年第4四半期と比較して、売上高が96%増でした。


2020年第4四半期に、売上高に貢献したプロジェクトには、クアラルンプール首都圏のエコ・マジェスティック、エコ・フォレスト、エコ・スカイ、エコ・サンクチュアリ、イスカンダル・マレーシアのエコ・スプリング、エコ・サマー、そしてペナンのエコ・メドーズがあります。


2021年、エコ・ワールドは、2020年に達成した実績23億リンギット(約598億円)から25%高い、28.75億リンギット(約747.5億円)の販売目標を掲げており、M40と呼ばれる中間所得層、そしてY世代、Z世代の顧客層に力を入れていく方針です。


現在進行中のプロジェクト:

Bukit Bintang City Centre (Kuala Lumpur)、Eco Majestic(Semenyih)、 Eco Sanctuary(Teluk Panglima Garang)、Eco Grandeur(Sungai Buloh)など、18プロジェクト     


▶Eco World Development Group Berhadのアニュアルレポート


(出所:Malaymail



Mah Sing Group(マーシングループ)

2020年の純利益:1億リンギット(約26億円)


1994年から不動産開発事業に参入したマーシングループは、これまでにマレーシア国内で47プロジェクトを手掛け、約39,000戸を販売しました。最初のタウンシップ開発である、ジョホール州の「スリ・プライ・ペルダナ」プロジェクトは、ジョホール初のゲート・警備付きのリンクホームとして注目を浴びました。


2020年第4四半期の純利益は、第3四半期から4.19%増の2,813万リンギット(約7.3億円)で、M VerticaやM Centuraといったプロジェクトが貢献しました。一方で、一部の資産の減損処理や在庫の時価評価額が、部分的に相殺する形で働きました。


2020年通期では、2019年の2億リンギット(約52億円)から、1億リンギット(約26億円)と半減しました。パンデミックが不動産開発、プラスチック事業およびホテル事業に影響を与えたことによります。


現在進行中のプロジェクト:

M OSCAR、M CENTURA、M VERTICA)、M ARISA、M LUNA、M ADORA(Kuala Lumpur)、Southville City 、M ARUNA RAWANG(Selangor)など、30プロジェクト


▶Mah Sing Groupのアニュアルレポート


(出所:The Edge Market


※日本円表記は、1マレーシアリンギット=26円で換算した参考値です。


(画像:Photo by Johen Redman on Unsplash )