[ベトナム] IMF、今年のベトナムのGDP成長率を6%と予測

2022/05/23


政策支援と見事なワクチン接種展開に促され、「コロナと共に生きる」に戦略をシフトしたことで、ベトナムは2022年にはGDP成長率6%、2023年には7.2%を達成しそうです。



国際通貨基金(IMF)は、2022年4月4日~20日に行われた対ベトナム4条協議の議論を受けて、このような予測を出しました。



この協議の中で、アジア太平洋地域部門の部門長エラ・ダブラ-ノリス氏に率いられたIMFチームは、ベトナム国立銀行(State Bank of Vietnam(SBV))、財務省(MOF)、計画投資省(MPI)、中央経済委員会(CEC)、国会、その他政府機関の上級役員と意見を交わしました。また、民間セクター、シンクタンク、学会、その他のステークホルダーの代表とも会合しました。



ダブラ-ノリス氏によると、ウクライナにおける紛争は、回復のペースとインフレに中程度の影響を与えるとみられています。物価が上がっていますが、経済の余剰能力を一部反映して、インフレは抑え込まれ、政府の4%目標以下で推移しそうです。



今年、IMFは、ベトナムのインフレ率をやや高い3.9%と予測しています。一方で、IMFのレポートでは、サービス業はいまだ低迷が続いており、回復のペースはまちまちで、金融リスクや不平等が高まっている可能性があります。



ダブラ-ノリス氏は、「見通しは、重大なリスクにさらされています。成長リスクは、ダウンサイドに傾いている一方で、インフレリスクはアップサイドに傾いています。直近のリスクには、地政学的な緊張の高まりと中国の低迷などがあります。その他のリスクとしては、世界的な財政状況と国内不動産と社債市場の発展の引き締めなどがあります。」と述べています。



スタンダード・チャータード銀行は、そのベトナム経済の見通しレポートの中で、世界的なサプライチェーンの混乱と地政学的なリスクの懸念が高まり、さらなるインフレの圧力がベトナムにかかってくる可能性を指摘しています。



スタンダード・チャータード銀行は、GDP成長率予測については慎重な見方で、2022年は4%、2023年は5.5%を予測しています。




今後のアクション


高まるリスクへの対応として、ダブラ-ノリス氏は、機敏な政策立案と回復のペースに合わせて先回りした政策支援の規模や内容の調節を呼びかけています。



「特に、ダウンサイドリスクが具現化してきたら、財政施策が政策支援を引っ張っていくべきです。というのも、高まるインフレリスクを考慮すると、さらなる金融緩和は限られてくるからです。」



「効果的かつしっかりとした回復と発展のためのプログラム実施が成長を支えるためのカギとなります。ベトナムは、医療、景気回復、中期的な成長見通しをちゃんと優先させています。」とダブラ-ノリス氏は加えています。



今後について、財政政策は、一時的・対象を絞った支援の提供と経済改革の促進との間でちょうどよいバランスを取っていく必要があります。財政赤字幅は、2022年、ゆるやかに広がることが予想されています。



一方で、ダブラ-ノリス氏は、金融政策は、高まるインフレの圧力に慎重な姿勢を保つように提言しています。インフレの圧力が続くのであれば、SBVは金融政策のスタンスを引き締めて、インフレを抑え込むべく関係各所と連携すべきだとしています。



今後は、貸出額増加に関する政策も、回復の促進と財政安定性の保護との合理的なバランスを取らねばなりません。



ダブラ-ノリス氏は、銀行業界の回復性を強化することが中期的な成長を持続的に支えるのに不可欠だと提言しています。回復が持ち直すにつれて、債権分類の緩和とルールの策定は解除していくべきです。債権分類の緩和については、問題資産の認識を遅らせ、資金の誤配分・過剰なリスク負担を悪化させるので、2022年6月以降は延長すべきではないとも話しています。



「金融の規制・監視を強化して、新たに発生するリスクに対応し、より回復力のある銀行セクターを作っていかねばなりません。マクロプルーデンス方式の枠組みが財政安定化の保護を助ける重要な働きをするでしょう。倒産など制度的な枠組みもまた不良債権の解決を進めるために強化されるべきです。」



「持続的かつ包括的な成長を、という当局の希望を満たすためには、決定的な構造改革が必要になります。財務および土地へのアクセスの不公平をなくし、規制上の負担、特に中小企業や新規企業にかかるものを減らすことで、事業環境も改善するでしょう。労働力の質を高め、スキルのミスマッチを減らすためには、さらなる取り組みが必要です。」と、ダブラ-ノリス氏は締めくくっています。




(出所:Hanoi Times