2022/10/03
国際通貨基金(IMF)は、2022年のフィリピンの成長見通しを下方修正し、6.7%から6.5%としました。世界的な景気減速の影響を考慮しました。
年次の4条協議のあとの会見で、ミッションチーフのチェン・フーン・リム氏は、2023年の成長率予測は5%で、世界経済見通し(World Economic Outlook (WEO) )のアップデート版が発行された7月の数字と同じであると述べています。
「フィリピンは世界と切り離されている訳ではありません。主な貿易相手国はアメリカと中国で、これらの国々が低迷すれば、フィリピンも減速します。それが、今年の成長予測を6.5%に、来年を5%に見直した主な理由です。」と話しています。
IMFは、世界成長率の予測も昨年10月の4.9%から2パーセンテージポイント下方修正して、2022年については3.2%と置いています。
リム氏は、フィリピンの成長率予測の見直しが、世界経済の見通しの見直しほど劇的ではないのは、「国内需要が非常に力強く推移しているから」だと説明しています。
リム氏は、IMFのフィリピン経済の成長見通しは、大きなダウンサイドリスクに晒されており、見通しとインフレの間で政策の妥協点を見つけることがより重要になってくると述べています。
成長のダウンサイドリスクの中でも特筆すべきなのは、コロナウイルスの感染者数の再増加、世界の金融政策の変化が予想よりも大きいこと、世界経済にブレーキがますますかかること、インフレ率の高止まり、そして自然災害です。
しかし、これらは、現状のロシアとウクライナの紛争、他国でのインフレ対応の取り組みなどで一部相殺される見込みです。
「今後、景気回復を支えていくためには、インフレリスクに対応し、財政・金融のネガティブなショックに耐えるための回復力を高め、パンデミックの傷跡を軽減するような改革実施や生産性向上などの政策に注力していくことが必要です。」とリム氏は述べています。
また、米国が国内の過去40年来のインフレ率を抑えるために利上げを続けているため、他の通貨と同様、ペソ安になっています。
リム氏は、今後どのくらい金利が上がるのか誰もわからないが、アメリカのさらなる金融引き締めでペソが影響を受けるのは明らかだとコメントしています。
これまで、ペソはUSドルに対して1ドル=58ペソ台で推移しています。年初は51ペソ台でスタートしました。
4条協議の最後の政策提言の中には、フィリピン中央銀行(BSP)が「インフレに関する明確なコミュニケーションを出していくこと」が入っています。
「BSPの将来を見据えた政策意図が、不確定性を減らし、政策の発信を改善するのに役立つ」と述べられています。
リム氏は、今年BSPがあとどのくらい利上げを行うかの予測については言及を避けましたが、市況が混乱しているときは、為替介入の必要性があると述べています。
「では、どのくらい、そしていつ(為替介入が)行われるべきなのか?それは、BSPのご判断によるところです。タイミングとどのくらい介入できるかについて決定できます。」
BSPは、今年5月から合計225ベーシスポイントの主要金利を引き上げています。国内のインフレ率の高まりとアメリカの金利差に対応するためです。
アメリカが引き締めモードを維持しているため、市場はBSPも利上げを継続すると見ています。
一方で、フィリピン金融当局は、インフレ予想を落ち着かせ、価格の圧力がこれ以上定着してしまわないように、徹底的なアクションをとるとしています。
BSPは、「雇用の改善と幅広い流動性や資金のおかげで、需要は概してしっかりしているので、国内経済は、適度な金融政策スタンス引き締めを吸収できる」と述べています。
(画像:UnsplashのFreich Roqueroが撮影した写真 )
もっと詳しく知りたい方はこちら