[マレーシア] 活動制限令(MCO)が企業の収益に与えた影響

2020/09/17

[マレーシア] 活動制限令(MCO)が企業の収益に与えた影響


新型コロナウィルス(Covid-19)の感染拡大抑制のため2020年3月18日から実施されているマレーシアの活動制限令(MCO)は、国内経済に大きな影響を及ぼしました。


最も影響を受けた分野のひとつが企業で、2020年4月~6月(第2四半期)の財務数値に表れています。


複数のエコノミストが、影響が完全に現れるのは第2四半期と予想しており、8月初旬に中央銀行が発表した国内総生産(GDP)の急激な収縮にも見て取れます。


2020年第2四半期のマレーシアの経済成長率は-17.1%となり、1998年以来、四半期では最悪の2桁マイナスとなりました。これは、Covid-19の感染拡大を封じ込めるために実施された前代未聞のロックダウンからくるもので、経済もほぼ完全停止状態となりました。


1998年第4四半期、マレーシアは-11.2%という2桁のマイナス成長率を記録しています。2019年の第2四半期は、4.9%のプラス成長でした。



第2四半期の主要企業の業績は

◎エアアジアグループ

エアアジア・グループは、この時期大きく打撃を受けた企業の一つで、2020年第2四半期の収益はは、96%減の1.19億リンギットでした。パンデミックの流行により、多くの国がロックダウンに入り国境を閉鎖したことによります。


同社は、2020年第2四半期9.92億リンギット(約252億円)の赤字を出しました。前年同期は、純利益1,734万リンギット(約4.4億円)の黒字でした。


収益の42%は貨物・物流部門によるものでした。一方で、第1四半期の終わりに一連のフライトを欠航としたためグループの支出も減少しましたが、国内移動の制限緩和に伴い、5月末/6月初旬から徐々に運行を再開しています。


カナンガ投資銀行は、エアアジアの業績について、Covid-19による渡航制限と乗客減によりすでに厳しい状況となっており、中期的に厳しい経営環境に直面するだろうとコメントしています。


「エアアジアグループは、営業拠点のある国それぞれで銀行融資を申請、流動性を補強して、運転資本やリース債務の返済に充当しようとしています。これらの債務は2020年6月末時点で122億リンギット(約3,099億円)あります。」


「加えて、エアアジアは、合弁事業や提携に向けての話し合いを進めており、グループの事業の特定のセグメントにおいて追加の第三者投資が入る可能性があります。」と同銀行は述べています。


◎サンウェイ

マレーシア最大のコングロマリットの一つ、サンウェイもまた、不動産開発、採石およびヘルスケアを除くほとんどの事業セグメントからの貢献分が減少したことで、同期間の収益が減少しました。


「Covid-19パンデミック、2020年3月18日から実施されているMCOおよび条件付きMCO(CMCO)は、グループに重大な混乱と財務的な影響を及ぼしました。特に、グループの不動産投資を行うホスピタリティおよびレジャー事業は、これらの期間に営業が認められていなかったため、影響が顕著でした。」


「条件付きMCOのもと、グループのその他の事業のほとんどが再開していますが、今後の事業回復は課題が多く、全体として景気の回復次第です。」と同グループはマレーシア証券取引所への届出の中で述べています。


◎ユナイテッド・プランテーション

一方で、ペラ州を拠点とするユナイテッド・プランテーションの2020年第2四半期の純利益は、63%跳ね上がり1億2,359万リンギット(約31億円)となりました。パーム原油およびパーム核油の生産を強化したことと前年と比較して平均販売価格が好調だったことによります。


収益もまた前年同期の2億7,053万リンギット(約69億円)から2億9,432万リンギット(約75億円)へと増加しました。


2020年4月~6月は、多くのプランテーション企業にとって恵みの時となりました。多くの会社が、生産が少ない時期でパーム原油の価格が高かったことから、増益を報告しています。


数か月のコロナウィルスによるロックダウンを経て、4月から6月にかけて徐々に経済活動が再開し、中国やインドといった従来からのパーム油輸入国をはじめとして各国が在庫の充填を始めたことも、このような財務実績につながりました。


◎セブンイレブン・マレーシア・ホールディングス

小売業界では、業界大手のひとつ、セブンイレブン・マレーシア・ホールディングスが、第2四半期のコンビニエンスストア部門の収益が7,820万リンギット(約20億円・13.3%)減となったことを報告しています。


同社は、22.7%増となったタバコを除いて、ほとんどの商品カテゴリーにおいて収益減を記録し、粗利益率および粗利益ともに減少しました。


「グループの第2四半期の業績は、Covid-19パンデミックの影響を受けました。MCOの期間中、モールの中の店舗は閉鎖するか、営業時間帯を制限して営業していました。すべての店舗は営業を再開していますが、回復期のMCO(RMCO)のガイドラインの下では24時間営業はできないことになっています。」

 


トンネルの終わりに見える光


第2四半期の影響は重くのしかかりましたが、CMCOの実施から政府はより多くの事業・産業の営業再開を認めており、経済は回復の途についています。


ザフルル・アジズ財務相によると、マレーシア経済は、Covid-19パンデミックにの打撃を受けたものの、2020年5月4日より徐々にビジネスが再開し、2020年6月からは回復の兆しを見せ始めています。


マレーシアの国営放送ブルナマとTV3のインタビューの中で、ザフルル財務相は、ロックダウンの影響が感じられたのは、GDPが前年同月比-28.6%という急激な収縮を見せた2020年4月だったと述べています。


「しかし、2020年5月、GDPは前年同月比-19.5%、6月には-3.2%と、事業の再開にともなって急ピッチで上向いています。」


「Covid-19の感染抑制のための強制的なロックダウンに入ったため、累計では第2四半期のGDP成長率は-17.1%となりました。2020年5月からV字回復を見せているので、6月は景気が回復してきていることを見せるよいバロメータとなりました。」とザフルル財務省はコメントしています。


直近の数字や指標に基づくと、金融サービスを提供するMIDFリサーチは、Covid-19による不確定要素から市場心理は依然として弱く、政情、保護貿易主義の高まり、地政学的な緊張など、その他のダウンサイドのリスクも考慮すると、経済の回復は段階的となると予測しています。


MIDFリサーチは、「Covid-19の第二波が起こって、再びロックダウンに入ったり、経済再開計画を撤回せざるを得なかった国もあります。国内では、今のところ、Covid-19の感染者数増加は局地的です。しかし、国外の厳しい状況がマレーシアにも響いてくるかもしれないという不安がまだあります。」とそのレポートの中で述べています。


(出所:Bernama

(トップ画像:Image by StockSnap from Pixabay )