2020/10/13
[マレーシア] イスカンダルの不動産過剰供給、シンガポールとの鉄道接続で改善に期待
ラピッド・トランジット・システム(高速輸送システム)、プテリ・ハーバーのフェリー、そしてクアラルンプール-シンガポール高速鉄道サービスでシンガポールとの移動がしやすくなることで、イスカンダル・マレーシアの需要と供給状況を改善できるかもしれないと期待されています。
ジョホール州イスカンダル・マレーシアの不動産過剰供給は、クアラルンプールとシンガポールを結ぶ高速鉄道(KL-Singapore HSR)サービスが出来れば緩和されるでしょう。
▼イスカンダル・マレーシア地図(出所:Iskandar Malaysia)
市場リサーチ会社「データマイン(Datamine)」によると、イスカンダル地方の不動産過剰供給は、複数の障害により起こっているが、特に重要なのが接続性だといいます。
データマインの創立者でありリサーチ・ヘッドでもある、ジェレン・ライ氏は、遅延しているラピッド・トランジット・システム(RTS)、プテリ・ハーバーをシンガポールのハーバーフロントと結ぶフェリー路線、そして、KL-シンガポールHSRによって、需要が供給に満たない状況を作り出している主な障害であると述べています。
KL-シンガポールHSRは、マレーシアとシンガポール間を移動するための代替手段として計画されており、シンガポール側の最終駅であるジュロン・イーストに到達するまでに、マレーシア側はバンダール・マレーシア、セパン・プトラジャヤ、セレンバン、マラッカ、ムアール、バトゥ・ハパット、イスカンダル・プテリの7つの駅ができることになっています。
HSRによる接続性の向上により、クアラルンプールからシンガポールまでたった90分と、格段に所要時間が短縮されることはもちろん、企業がより生産的に、より広い市場を相手にできることになります。
マレーシアとシンガポールは、2020年12月に会合を開き、KL-シンガポールHSRの今後についての決定をすることになっています。
ライ氏は、ジョホール・バルの税関・出入国管理・検疫複合施設(Customs, Immigration, and Quarantine Complex (JB CIQ) )とシンガポールとの接続性が、今後予定されているRTSとRTSに接続するシンガポール国内のトムソン - イーストコースト線で大幅に改善すれば、イスカンダルへの移住を考える人が20%増えることで、供給過多を十分に吸収できるのではと予測しています。
データマインの調べでは、約300,000人のホワイトカラーのマレーシア人がシンガポール国内で賃貸または購入で不動産を所有しています。
2008年にオープンしたJB CIQは、自家用車、トラック、バスのチェックを行うマレーシア税関が入る、大きな複合施設です。JBセントラル駅は、そこから徒歩圏内です。
ライ氏は、JB CIQの周辺エリアが、イスカンダル・マレーシアでもホットスポットになっていると話しています。このエリアの物件は、将来RTSの駅ができるCIQまで徒歩で15分です。
データマインの2020年第3四半期のイスカンダル不動産調査では、JB CIQの不動産価格の中央値は、836,125リンギット(約2,124万円)、平米あたり9,914リンギット(約25万円)なのに対して、イスカンダルのその他のエリアの価格の中央値は573,931リンギット(約1,459万円)、平米あたり6,211リンギット(約16万円)となっています。
ライ氏は、イスカンダル・マレーシアの過剰供給は、クアラルンプール首都圏やペナンで起こっている過剰供給とは根本的に異なると指摘しています。ライ氏は、イスカンダル・マレーシアは、複合的な障害により、需要が供給に見合っていないのだと言います。
ライ氏は、イスカンダル・マレーシアの過剰供給を緩和するためには、シンガポールがその理想的な市場になると考えています。シンガポールの国民の80%はリースホールドの住宅開発庁の団地(通称HDBと呼ばれる)に住んでいます。新築のHDBは、99年のリースホールドで販売され、転売で購入した人は、リースホールドの残りの期間だけ、そのHDBを所有することができます。HDBは古いもので60年近く経っており、残りの期間が少なくなるにつれ銀行が貸し渋るため、急速に価値が下がってきます。
「多くの人がフリーホールドの物件を手に入れたいと思っていますが、シンガポールでは(高すぎて)手が出ません。イスカンダル・マレーシアには、十分はフリーホールドの物件がありますので、HDBを売って、イスカンダル・マレーシアの物件を購入するというのが、実現可能なオプションとして出てくるわけです。」とライ氏は説明しています。
(出所:New Straits Times)
(トップ画像:Iskandar Malaysiaウェブサイトより)
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