2022/09/01
先の見えない時代、透明性は今まで以上に重要になってきています。不動産テナント、投資家、金融機関が自信を持って運営し、意思決定を行うための基礎となります。
今回で第12回目となるJLL&ラサールが発表している「グローバル不動産透明性インデックス」は、市場の透明性を計るうえで広く使われているベンチマークであり、クロスボーダー取引を行う不動産投資家、金融機関、デベロッパー、テナントにとってのガイドとなるだけでなく、政府や業界関連団体により国際的なベンチマークとしても使われています。
2022年のインデックスでは、投資パフォーマンスや市場データから、取引プロセスやサスティナビリティといった視点から、各不動産市場の透明性を計っています。対象となるのは、94の国と地域にわたる156都市です。
今年のインデックスからわかることは?
JLLは、2022年インデックスの結果から、最も透明性の高い国々とそれ以外の透明性の格差が広がっていると指摘しています。最も透明性の高い国では、技術の採用、気候変動に対する対策、資本市場の多様化から規制変更などを背景にさらなる透明性の強化をはかる一方で、その他多くの市場では足踏み状態か、後退しているケースすらあり、さらには調査対象から外れた国すらあると述べています。
『2022年グローバル不動産透明性インデックス』で最も改善が見られたのはどの国/都市でしょうか?
上位は英語圏の国々で、イギリスとアメリカがトップ2を占めています。ヨーロッパの国々も概ね2020年から進歩しており、「非常に透明性の高い」国々トップ12の半分を占めています。日本は、初めて上位入りを果たしました。気候危機に関するレポーティング強化とサスティナビリティに関する目標達成のための取り組み、さらに生命科学、トランクルーム、高齢者用住宅などといったオルタナティブ部門を中心としたデータ入手可能性に改善がみられたことでスコアを上げました。
「非常に透明性が高い」「透明性が高い」カテゴリーにランクインした国々が世界をリードしています。最も改善幅の大きかった国々には、フランス、アメリカ、オランダ、ドイツ、スペイン、カナダ、ベルギーがあります。新しいサスティナビリティの取り組みを勧め、反マネーロンダリングや樹液所有権報告に求められる水準を引き上げ、テクノロジーの活用によりオフィス使用率からニッチな部門まであらゆるデータの入手可能性を高めることで、透明性に関する基準と期待値を高めています。
▼スコア改善国トップ10(出所:JLLをもとにPropertyAccess作成)
2022年に最も改善したのは、UAEのドバイとアブダビでした。市場の透明性を高めるために政府と一丸になった取り組みがされ、今回、ドバイは「透明性が高い」カテゴリーに初めてランクインしました。インドも改善国のひとつで、機関投資とREIT数の増加が市場データを高め、不動産セクターの専門化が進み、Model Tenancy Act(モデル不動産賃貸借法)などの規制面での取り組みや土地登記のデジタル化などが見られました。
不動産透明性の今後は?
JLLは、不動産業界が混乱の時代を乗り切るにあたって、透明性シーンを再形成するような次のような圧力が高まっていると述べています。
調和と同調:サスティナビリティの取り組みや、規制環境、テクノロジーやデータの枠組みにおける不動産業界全体でのさらなる調和・同調の必要性が高まっています。
気候変動の影響からの回復力強化:今までにないような気候変動の影響がすでに見られる中で、将来のリスクに対して、都市、都市計画の枠組み、建物のレジリエンス(回復力)を高めるための、より明確な基準を設定する方向に人々の関心が向けられています。
前向きなガバナンス面・社会面での取り組み成果のサポート:ビジネスの社会面、ガバナンス面に戦略的に力を入れる企業が増えています。これらの目標のためのガイドラインを強化・提示するようなさらなる規制や指標が出てくる可能性がありそうだとJLLは述べています。
(出所:JLL)
(画像:Photo by Jeremy Bezanger on Unsplash)
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