2022/06/07
JLLプロパティ・サービシーズ社(JLL Property Services (M) Sdn Bhd)によると、今年第1四半期の大クアラルンプールのオフィス供給は、新規竣工もなく停滞気味でした。
しかし、今年の残りの期間で、いくつかの大規模プロジェクトが完成予定で、グレードAビルの着実な供給が見込まれている、とマレーシア国担当ヘッドのYYラウ氏は述べています。
ラウ氏によると、エンデミック段階へと移行したことで、市場活動が回復してきており、正味賃貸面積はプラスとなっています。この活動を主にけん引しているのは、成長を続けるテクノロジー関連企業です。
「フィンテックを含む金融サービス業など複数の業種からの問い合わせも増えています。マレーシアは最近、デジタルバンキングライセンスを複数の企業に与えています。よって、現在市場に存在する新規供給の量を考えると、質への逃避のトレンドは明らかだと予想しています。」
物流・工業部門の活動も、前年同期比で3.5%増加しました。しかし、成長のペースはやや緩やかになり、第1四半期に投下された資本は83億USドルでした。
投資家の関心は広くあるものの、大型のポートフォリオ案件がなく、取引の予定も限られていたことから、同部門の投資の伸びが緩やかになったと見られています。その中でも、シンガポール系のESRファンドが、米系DLJから、中国のDLJグレーター・シャンハイ・ポートフォリオ(7億1,700万USドル)を購入した取引が目立ちました。
「マレーシアは地理的に戦略的なロケーションにあることに加え、シンガポール政府によるデータセンターのモラトリアム政策見直しにより、マレーシアやインドネシアが恩恵を受けたことで、データセンター部門の成長が見られます。」とラウ氏は述べています。
ラウ氏によると、マレーシアのJLLには、投資家・事業者が市場に参入しようと、データセンター関連の問い合わせが数多く寄せられ、数件の土地取引も進めたということです。
マイクロソフト、アマゾン、グーグルは、大規模なデータセンターおよびクラウドサービスの建設・運営の条件付きの承認をすでに得ており、マレーシアは地域のデータハブとして頭角を現しています。
一方で、ホテル取引も堅調でした。安く購入して、業績の悪いホテルを、生きた商品にしようとする投資家の動きもあり、31億USドルのホテル取引がありました。
JLLは、ホテル業界が2022年、さらなるリバウンドを遂げると予想しており、2021年から15%増の107億USドルの取引を見込んでいます。
JLLアジア・太平洋地域の投資家インテリジェンス&戦略担当ヘッドのパメラ・アンブラー氏は、投資家がホテル業界の投資に回していない待機資金500億ドル超を抱え、第1四半期は、地理的かつ業界全体に資金を分配することに自信感を見せてきたと言います。
「今後数か月で、供給が市場に追加されるにつれて、勢いは物流・工業へとシフトするでしょう。資金もますます確実に利益が取れるセクターへと集中してくるでしょう。」とも述べています。
アジア太平洋地域の成長
『JLLキャピタル・トラッカー2022年第1四半期』で公表されたデータおよび分析によると、アジア太平洋地域の不動産業界への投資額は2022年第1四半期も増加を続け、年間で20%増となりました。
アジア太平洋地域のキャピタル市場担当のJLLのCEOであるステュアート・クロウ氏によると、第1四半期に直接不動産投資として、408億USドルもの資本が域内に投下されました。
特に投資額が伸びたのは、シンガポール、韓国、オーストラリアです。
セクター別では、クロウ氏によると、オフィス部門が力強く推移した一方で、物流および工業が前年同期比3.5%増という安定的な成長を見せました。
「アジア太平洋地域に資本を投下するにあたって、投資家は分散化を進めています。たとえば、リテール資産への投資振替、オフィス市場への安定的なサポート、シンガポール、韓国、オーストラリアへの配分の増加などです。私たちは、域内の不動産業界が、高まる金利や不確実性にも打ち勝つだろうと楽観的な見方をしています。」
クロウ氏は、JLLが、資産の激しい競争を目の当たりにしており、2022年のアジア太平洋地域には2,000億USドルを超える直接投資があるという予想を維持していると話しています。
シンガポールの商業不動産が、域内で最も高い前年同期比の成長率を記録しました。2022年第1四半期末時点での投資額は57億USドルに上りました。オフィスおよびリテール部門の大型取引が勢いに拍車をかけました。
韓国の第1四半期も好調で、オフィス、リテール、物流、工業不動産と投資も多様で、前年同期比で89%増となりました。
オーストラリアの年間投資増加額は域内3位となり、49%増でした。投下された資本は47億USドルで、オフィスがメインでした。
日本は、前年同期比では26%減となりましたが、投資額としては域内でも最大の市場となりました(85億USドル)。
第1四半期の中国の取引額は横這いで、83億USドルでした。
JLLが公表したデータによると、2022年第1四半期、アジア太平洋地域のリテール部門の投資額の伸びが最も大きく、投資額は前年同期比で39%増となりました。
多くの市場で、パンデミック封じ込め関連の政策の緩和があり、客足が戻ったことで、80億USドルもの資本がリテール資産に投下されました。
投資家がリテールスペースへの自信感を新たにしたことが、次のような取引にも表れています。主なものは、シンガポールのタングリン・ショッピングセンター(6億4,200万USドル)、韓国のソンス・Eマート(5億5,200万USドル)、オーストラリアのカジュアリーナ・スクエア(2億8,800万USドル)などです。魅力的な利回りやポートフォリオの多様化に後押しされました。
全体のボリュームとして、アジア太平洋地域で最も人気だったのはオフィスでした。直接投資額では173億USドルで第1四半期を占め、前年同期比では9%増となりました。
投資家は、域内のオフィス不動産に強気な姿勢を維持しました。改善した正味成約面積、賃料の伸びに支えられました。主だった取引には、韓国のアルファドム・シティ・アルファリウム・タワー(8億4,600万USドル)、シンガポールのクロス・ストリート・エクスチェンジ(6億USドル)、オーストラリアのダーリン・クオーター(50%持分に4億5,300万USドル)があり、市場心理を反映しました。
(出所:New Straits Times)
(画像:Image by Indra Gunawan from Pixabay)
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