[マレーシア] シンガポールとを結ぶ高速鉄道RTSリンクでジョホールの不動産市場に期待

2023/09/19


不動産デベロッパー各社は、マレーシアのジョホールバル(JB)とシンガポールを結ぶ、JB-シンガポール高速鉄道(RTS)リンクなどの急速なインフラ開発によって活気づくジョホール州不動産市場に期待を寄せています。



KGVインターナショナル・プロパティ・コンサルタンツのリサーチ責任者、タン・ウィー・ティアム氏は、ジョホール州では商業施設や複合施設の開発のための土地取得が拡大すると予測しています。 



「RTSプロジェクトやその他の開発により、市場はJB市内の商業用地確保のトレンドにあります。現在進行中のインフラ・プロジェクトによる需要が予想されるため、デベロッパーはサービスアパートメントや複合施設の建設を検討しています。」と述べています。



4.2キロのRTSリンクは2026年末までに完成予定です。マレーシア側のブキット・チャガー駅とシンガポールのウッドランズ駅間の所要時間は約5分で、片方向1時間あたり最大1万人の乗客が利用できる大容量の国境を越えた鉄道サービスです。


▼RTS路線マップ(出所:MRT Corp

 


JBとシンガポールをシームレスに接続することが、経済活動の活性化、投資家の誘致、雇用機会の創出につながると期待が寄せられています。 



そんな中、マレーシアのMass Rapid Transit Corp Sdn Bhd(MRT Corp) と香港を拠点とするMTR Corp Ltdが最近提案したRTSリンク沿いの複合開発は、おそらくJB初で最も包括的な交通指向開発(TOD)になるとみられています。 



この複合開発の総開発価値(GDV)は、少なくとも30億リンギットで、敷地面積は6エーカー(約24,281平米)、建物の総床面積は約300万平方フィート(約27.9万平米)の予定です。



MRT Corpのモハメド・ザリフ・ハシム最高経営責任者(CEO)は7月、計画中の複合開発が、香港の「鉄道+不動産」モデルを活用し、ブキット・チャガー駅周辺を国内外の投資家にとって魅力的な目的地に変貌させるだろうと述べました。



プロジェクトの完成には少なくとも5年を要するということで、マスタープランは今年末までに発表される予定です。



RTSリンク沿いの土地は、このような総合的な開発から恩恵を受けることが期待されています。JBでは、開発活動の活発化により中期的に人口が徐々に増加するとも予想されています。



タン氏は、他の要因が収れんすることで、ジョホール市場ではさらなる取引と開発が予想され、不動産市場全体にとって良い兆しであると述べました。




クレッシェンド社、RTS駅近くの土地を購入


一方で、クレッシェンド社(Crescendo Corp Bhd)は最近、ジョホール州内の2区画の更地を現金7200万リンギットで購入すると発表しました。



マレーシア証券取引所に提出した書類によると、同グループの完全子会社であるクレッシェンド・ランドマーク社(Crescendo Landmark Sdn Bhd)は、ビウェル・リアルティ社(Bewell Realty Sdn Bhd)との間で売買契約を締結したということです。



総敷地面積は約3.272エーカー(約13,241平米)で、ブキット・チャガールのRTSターミナル近いJB中心部に位置しています。



クレッシェンド社は、利便性の良さから、RTSはJB市街地活性化の起爆剤として機能し、ブキット・チャガール・ターミナル付近の不動産開発は恩恵を受けるだろうと述べています。



「ブキット・チャガール・ターミナル周辺では、JBの人口増加に伴い、国内外から住宅購入者や投資家が増えることが予想されます。」



「効率的な公共交通機関が整備されることで、シンガポールで働きながら賃貸住宅を借りているマレーシア人が、シンガポールで賃貸住宅を借りるよりも安い料金でブキット・チャガール駅周辺の住宅を購入したり借りたりするようになるでしょう。」



しかし、高層住宅を中心とした不動産のオーバーハング(過剰供給)状況を考えると、完成した住宅を市場が吸収するには時間がかかるだろう、と同社は提出書類の中で述べています。



クレッシェンドは、RTSリンクの完成により、シンガポールの若者や中間所得層がJB物件を購入したり投資したりするようになるとも考えています。



クレッシェンド社が購入した2区画のうち、1区画目の土地の広さは約2.9エーカー(約11,736平米)で、価格は7,150万リンギット(約22.4億円)、2区画目の土地の広さは約0.384エーカー(約1,554平米)で、価格は50万リンギット(約1,567万円)です。



クレッシェンド社によると、最初の区画は1,090戸のサービスアパートメントの建設が認可されており、総開発価値(GDV)は7億2,600万リンギット(約227.6億円)になるということです。



土地代を含む概算開発コストは5億3500万リンギット(約167.7億円)で、内部資金と融資で賄うことになっています。2024年第1四半期に着工し、3年後の完成を目指しています。



クレッシェンド社は、今回の土地買収により不動産開発用地が増加し、キャッシュフローと収益性の面でグループの長期的成長にプラスに寄与すると述べています。

  



  

(出所:New Straits Times

(画像:UnsplashのAfifi Zulkifleが撮影した写真