[マレーシア] 不動産需要にとって重要なジョホールーシンガポール関係

2021/08/03

[マレーシア] 不動産需要にとって重要なジョホールーシンガポール関係


投資家、デベロッパー、そして事業者たちが、国境の再開を待ち望んでいます。


ジョホールの高層レジデンシャルは、潜在バイヤーも投資家も「様子見」のアプローチを取るため、今後も低迷した状態が続きそうです。


不動産コンサルティング会社ナイトフランク・マレーシアは、最初の活動制限令(MCO)を実施してから1年以上もたってコロナウイルス感染者が再び増加していることで、不動産市場に引き続き影響を与えるだろうと述べました。


中古市場における全体的な高層物件は、希望販売価格が変動しています。厳しい封じ込め策により、購買者心理が入り混じっていることが背景です。


「ジョホールーシンガポール関係は、需要を押し上げるのに引き続き重要で、多くの投資家、デベロッパー、そしてビジネスオーナーは、国境が再開されるのを待ち望んでいます。」


イスカンダル・マレーシアプロジェクトへの累積投資額は、2006年の開始から2020年12月までで、3,403億リンギット(約8.8兆円)に達しました。約60パーセントに相当する2,022億リンギット(約5.2兆円)が実施済みで、その59%は国内投資、41%が海外投資です。中国が投資額では最高で546億リンギット(約1.4兆円)、続いてシンガポール(243億リンギット(約6,269億円))、米国(83.9億リンギット(約2,165億円))、そして日本(58.6億リンギット(約1,512億円))となっています。


2021年第1四半期には、ジョホールでデベロッパーによる大型の土地取引もありました。


2021年1月5日、キムルン・コープ(Kimlun Corp Bhd)は、バンダール・スリ・アラムの商業用地4.54ヘクタールを、4,050万リンギット(約10.4億円)、つまり平米当たり約900リンギット(約23,220円)で取得する提案をしました。発表日時点で、行われる予定の商業開発の詳細や図面などはまだ準備段階でした。


2021年4月22日、ダマンサラ・リアルティ(Damansara Realty Bhd)は、DMRランド(DMR Land Sdn Bhd)と売買契約を締結、ジョホールバルのタマン・ダマンサラ・アリフのフリーホールドの土地2区画4.81ヘクタールを、3,842万リンギット(約9.9億円)、つまり平米当たり807リンギット(約20,820円)で売却しました。


2021年7月5日、SPセティア(S P Setia Bhd)は、その完全子会社であるペランギ(Pelangi Sdn Bhd)を通じて、ムキム・テブラウの土地8区画、合計391.72ヘクタールを、合計5億1,815万リンギット(約4.7億円)で売却しました。



ナイトフランクの最新の出版物「2021年上半期不動産ハイライト(Real Estate Highlights 1st half of 2021 (1H2021)」によると、2021年第1四半期時点で、ジョホールバルの高層レジデンシャル物件の累積供給量は141,728ユニットで、2020年第1四半期から年間4.2%増加しました。


対象期間の市場活動は、MCOの強化や緩和が繰り返されたこと、そして国家回復計画(National Recovery Plan(NPR))のウイルス拡大の封じ込めのための4つのフェーズの導入により、大きく変動しました。



■レジデンシャル

全体的に問題は多かったものの、2021年に新規プロジェクトの発売を続けたデベロッパーもありました。


MBグループは、2021年4月にトレリス・レジデンシーズ(Trellis Residences)を発売しました。4つのレイアウトで総戸数は1,737戸、スタジオ(27.4平米)、1ベッドルーム(40.4平米)、2ベッドルーム(64.7平米)、デュアルキー(93平米)となっています。販売価格は、ユニットあたり22万リンギット(約568万円)から62.3万リンギット(約1,607万円)となっています。プロジェクトの推定開発額は5億3,900万リンギット(約139億円)で、複合用途開発「MBWシティ」の一部を構成します。


▼ジョホールバルの中古市場・高層レジデンシャルにおける平均希望価格(出所:ナイトフランク)

エリア2020年後半期
(平米当たりリンギット・円)
2021年前半期
(平米当たりリンギット・円)
価格変動
ジョホールバル市街地7,535~8,611
(19.4~22.2万円)
6,028~9,042
(15.6~23.3万円)
ジョホールバル郊外3,767~5,382
(9.7~13.9万円)
3,875~5,920
(10.0~15.2万円)
イスカンダル・プテリ6,458~7,535
(16.7~19.4万円)
4,951~8,073
(12.8~20.8万円)


■オフィス

ナイト・フランクは、約16.4万平米のオフィス供給が近い将来あると見込んでおり、ジョホールバルのオフィス市場の競争を激化させ、稼働率レベルに圧力がかかりそうです。


ジョホールバルにおける専用オフィススペース(私有)の累積供給量は、2021年第1四半期時点で、約79万平米となりました。フォレスト・シティのカーネリアン・オフィスタワー(Carnelian Office Tower)の完成によって、年間で6.2%増となりました(2021年第1四半期は約74万平米)。


ナイトフランクによると、カーネリアン・オフィスタワーはまだ一般への正式販売はされていないということです。


サンウェイ・ビッグ・ボックス・オフィス(Sunway Big Box Office)、イブラヒム・インターナショナル・ビジネス地区のコロネーション・スクエア・オフィスタワー(Coronation Square Office Tower)、メナラUMランド、ミッドバレー・サウスキー・オフィスなど供給があり、累積在庫に16万平米近くが加わりました。


市の郊外に位置するミッドバレー・サウスキー・オフィスは、2021年第4四半期に完成予定となっています。


ナイトフランクは、2020年、専用オフィススペースの稼働率は、2年連続で下落したのち、2019年の68%からじわじわと69.2%に上昇しました。


「長引くパンデミックの中、コワーキングスペースへの関心が高まってきています。柔軟なので、従業員がリモートワークを推奨されるような、異なるMCOのフェーズに合わせて、企業がスケールを増減することが可能になるのです。」


ジョホールバルの中心地、ジョホールバルの郊外では、希望賃料は下がり、月額平米当たり25.8リンギット(約666円)から34.4リンギット(約888円)となりました。テナントの引き留めと稼働率レベルを上げることが、家主にとってのカギとなっています。


同様に、イスカンダル・プテリでも、月額の希望賃料は下がり、平米当たり32.3リンギットから37.7リンギットとなっています。



■リテール


ナイトフランクによると、国内の移動制限、州をまたいだ移動の禁止、そして国境の閉鎖といった制限により、リテールは最も打撃を受けたセクターでした。


2021年第1四半期時点で、ジョホールバルのリテールスペースの累積供給量は約193万平米、稼働率は2020年第1四半期の79.3%から下がって74.4%となりました。


「多くの小売業者が、サイズダウンを図ったり、売上の伸びない店舗を閉店したりして、ビジネスの再編成をせざるを得ませんでした。小規模小売業者は、実店舗の賃料を含む運転コストを減らすためにオンラインに移行するかもしれません。もしくは、楽観的な小売業者は、より手頃な賃料で戦略的な一等地を引き継ぐチャンスととらえています。」


6年間の営業の後、KOMTAR JBCCの2,415平米を占有する、アングリーバード・テーマパークは、2021年4月5日、正式に閉園となりました。



■工業不動産

工業部門については、ナイトフランクによると、パンデミックにもかかわらず、高いレベルの市場活動を維持して、回復力を保つとみられています。


2021年上半期は、興味深い取引がいくつかありました。


2021年3月5日、アコーステック(Acoustech Bhd)は、その完全子会社テラス・エコ(Teras Eco Sdn Bhd)を通じて、ペガサス・アドバンス・エンジニアリング(Pegasus Advance Engineering Sdn Bhd)と売買契約を締結、コタ・ティンギのタンジュン・スラットに位置する工業用地を640万リンギット(約1.7億円)、平米当たり484リンギット(約12,487円)で売却しました。


アクシス・リアルエステート・インベストメント・トラスト(AXIS REIT)もまた、シンホア・ホールディングス(Xin Hwa Holdings Bhd)の傘下シンホア・トレーディング&トランスポート(Xin Hwa Trading and Transport Sdn Bhd)と3月に売買契約を締結、ジョホールのパシール・グダン工業エリアに位置する土地を建物込みで取得しています。



(出所:New Straits Times

(画像:Photo by Afifi Zulkifle on Unsplash )

※日本円は1リンギット=25.8円で換算した参考値です