[マレーシア] ナイトフランク:資材価格の高騰にともないレジデンシャル不動産価格も上昇

2022/08/09


不動産コンサルタント会社ナイトフランク・マレーシアのグループ・マネージング・ダイレクターの、サルクナン・スブラマニアム氏は、建設資材価格の高騰により建設コストも上がっており、今後、レジデンシャル物件、特に新築販売の価格が上昇するだろうと述べています。



サルクナン氏は、一方で、最近、翌日物の政策金利が1.75%から2%、さらに2.25%に利上げされたことで、借入コストも上がるため、不動産市場への関心を冷え込ませそうだともコメントしています。サルクナン氏は、近いうちに、さらなる利上げがあると予想しています。




しかし、今年実施される景気刺激策のおかげで、2022年後半期のレジデンシャル不動産市場は回復すると考えています。



持ち家キャンペーン(Home Ownership Campaign)は2021年12月31日に終了しましたが、サルクナン氏は、初めての住宅購入者に対して、50万リンギット以下の物件の印紙税を100%免除するi-MILIKIと呼ばれるファミリー持ち家イニシアチブが回復を促進させると考えています。



持ち家キャンペーンが終わり、売れ残った在庫や新築物件の販売を促進すべく、より多くのデベロッパーが魅力あるキャンペーンを売ってくるだろうと予想されています。



「不動産ポートフォリオにレジリエンスを養うことが重要です。特に、リスクに備え、あらゆる混乱を最小限に抑えることです。レジデンシャル市場において、ESG(環境・社会・ガバナンス)の枠組みを認知し、採用することが進んでいるので、サスティナブルな不動産の価値は将来上がるでしょう。」とサルクナン氏は述べています。



デベロッパー各社は、設計の最適化やバリューエンジニアリングに重点を置くことで、向かい風に対応していくべきだ、とも助言しています。



新規プロジェクトの多くは、M40と呼ばれる中間所得層に今後集中していくことが予想されています。レジデンシャル物件の発売が近年少なかったことによる繰り延べ需要に加えて、経済全体が徐々に回復してくるでしょう。



ナイトフランク・マレーシアが最近発表したレポート「2022年前半期不動産ハイライト」では、クランバレー、ペナン、ジョホール、コタキナバルの市況が述べられています。


ナイトフランクのリサーチ&コンサルタント担当のシニア・エグゼクティブ・ディレクター、ジュディー・オン氏は、中古市場の取引活動は、対象地域を全体で増えてきていると話しています。


「海外渡航の再開や経済成長が労働市場の回復を促す中、今後、賃貸市場全体は次第に改善してくると予想されます。」とオン氏は述べています。


ナイトフランク・プロパティ・ハブのマネージングディレクター、ベンジャミン・ティー氏は、2022年後半期に完成予定のプロジェクト数は、2022年前半期の約2,786戸と比べると大幅に増加して5,303戸近くになると予想しています。感染拡大封じ込め策により建設が遅れていたものが完成を迎えていることによるとみられています。


ナイトフランク・ペナンのエグゼクティブディレクター、マーク・ソー氏は、ペナンのレジデンシャル市場は回復に向けた力強い兆しを見せていると述べています。2022年第1四半期、前年同期と比較して高い不動産取引数および価格を記録しています。目立ったところでは、テクノロジーを核とした複合用途開発ペナン・インターナショナル・コマーシャル・シティ(PICC)のMuze Condominiumのアパートメントユニット20戸をイギリスのプライベートエクイティ会社ショージン・プロパティ・パートナーズ社が取得した取引があります。


一方で、ジョホールでは、高層レジデンシャルが振るわず、需要も低迷しました。


ナイトフランク・ジョホールのタン・リ・ルー氏によると、2022年前半期に販売開始した目立ったプロジェクトは、メディニにあるOptimus Mediniのみでした。


中古市場では、ジョホールバルの特定の高層レジデンシャル物件の希望販売価格は安定的でしたが、郊外やイスカンダル・プテリの希望販売価格は概して高くなりました。


「シンガポールとマレーシアの間の国境が4月に再開したことで、市場心理が改善したからでしょう。」とタン氏は説明しています。


ナイトフランク・サバのエグゼクティブディレクター、アクセル・チェン氏によると、コタキナバルのレジデンシャル不動産市場は徐々に改善しているということです。プロジェクトの発売も徐々に再開し、事業活動・経済活動が正常化するに連れて、バイヤーの心理も改善しています。


一方で、プロジェクトの中には発売を遅らせたものや、変わりゆく市場トレンドに合わせるために見直しされるものもあるということです。




(出所:New Straits Times

(画像:Photo by Meriç Dağlı on Unsplash)