[ベトナム] ベトナム不動産の歴史を振り返る

2020/09/24

[ベトナム] ベトナム不動産の歴史を振り返る



不動産は、ベトナムで最も安全で効率的な投資チャンネルだと考えられており、投資家に好まれているセクターです。90年代半ば以降、すさまじい成長、緩やかな後退、そして回復、というパターンを繰り返してきたベトナム不動産市場ですが、Covid-19パンデミックにより、いまだかつてない悪影響を受けました。総合不動産サービス会社サヴィルズ・ベトナムが、これまでの不動産市場と経済について振り返っていますので、ご紹介していきます。


1995年~1998年

米国との関係が安定し始め、1995年には正式にASEANに加盟したことはひとつのマイルストーンでした。計画経済から、市場主導型経済への移行は、それ以降の成長のための堅固な基盤を確立しました。統計総局(General Statistics Office)のデータによると、1995年の経済成長率は9.54%、1996年は9.34%、一人当たりのGDP(1995年は277USドル、1996年は324USドル)とともに成長しました。インフレも1995年には12.7%だったのが、1996年には4.5%、1997年には3.6%と抑制されました。

同時に、GDP成長率も消費者の信頼感も高まり、地価は高騰しました。不動産市場がその有望性を見せ始めたからです。国内市場は、その後1998年のアジア通貨危機を皮切りに、長引く減退期に入ります。統計総局のデータでは、1998年の経済成長率は5.76%、インフレ率は9.2%に達しました。しかし、市場開放が限定的だったので、政府が積極的に介入し、危機を乗り越え将来のさらなる成長に向けての力強い基盤を作る事に成功しました。


1998年~2008年

この期間は、さらなる経済統合が進みました。2001年には、ベトナム-米国相互貿易協定が批准され、2006年にはベトナムは世界貿易機構(WTO)に加盟しました。2000年の時点で、ベトナムは一人当たりのGDPが396USドルにまで伸び、次の「アジアの虎」となる経済と考えられていました。その当時、近隣国であるラオスの一人当たりのGDPは328USドル、カンボジア283USドルでした。

新しい国民経済政策、マクロ経済政策により、2000年のGDP成長率は6.79%でした。その後、2001年は6.89%、さらには2004年~2007年にかけては年間成長率8.23%と堅調に推移しました。国民経済指標には、力強い世界経済、国内経済の回復に向けての信頼感の増加、そして外国直接投資(FDI)の安定的な増加が表れています。不動産市場には大きな変化が起こり始めます。

政府が効果的な政策を打ったことで、市場が活性化、地価も上昇しました。取引量の増加が価格上昇につながり、不動産市場は人気の投資チャンネルとなりました。しかし、2001年~2003年、2007年~2008年、価格が大幅に上昇したことで、所得が低めの投資家にとっては、ホーチミンシティやハノイへ投資することが厳しくなり始めました。


2008年~2018年

成長は一時中断、低迷期に入ります。2008年央、世界金融危機の影響が、国内不動産市場を後退期へと導きます。地価は最大40%も落ち込みました。2012年の不動産在庫は、なんと100兆ドン(約4,500億円)にもなり、不良債権を抱えた不動産会社が増えました。

インフレも急速に進み、ベトナム国立銀行は、金融政策の引き締めにかかりました。政府は、政策の見直しと景気刺激策により投資を呼び込み、危機に舵取りをするのに成功しました。

公営住宅を中心としてきた企業も、公営住宅の政策や価格の修正を行いました。30兆ドン(約1,350億円)の政府支援を受け、不動産市場の回復が始まりましたが、在庫は高い状態が続きました。その後、不動産市場は持続的な成長を示します。ホテルや別荘といったセグメントが急激に発達、バリア=ヴンダウ、フーコック島、ニャチャン、ハロン、そして特にダナンといった、地形や自然の魅力に恵まれた地方に、新しい経済発展の可能性をもたらしました。
 

2018年~2020年

最新の世界銀行のレポートでは、ベトナムの過去2年間の経済成長は主に、高い消費者需要と製造を中心とした輸出の伸びにけん引されました。2019年の実質GDP成長率7%となり、域内でも最も急激に成長する経済圏の一つとなりました。グローバル化がベトナムに良い影響を与えた一方で、Covid-19パンデミックは国内外の経済に大きなダメージを与えました。

幸い、政府の早期に対応したことで、ベトナムは域内の他の国と比べて、Covid-19の影響は少なく済み、2020年第1四半期のGDP成長率は安定的な3.8%に達しました。

アジア開発銀行は、ベトナムの2020年の経済成長率予想を4.1%としています。同銀行の4月の予想からは、0.7ポイント下がりましたが、それでも東南アジア最高の地位を保っています。世界銀行のGDP予想は、2020年に3%、2021年に6.8%となっており、国内経済への高い信頼感がうかがえます。ベトナム経済は、回復に向けた準備ができており、不動産はその中でも2021年以降にその恩恵を受けるセクターの一つなのです。



2001年からサヴィルズ・ベトナムに勤務するニール・マックグレゴー氏は、ベトナム国内不動産市場に高い信頼感を持っています。「ベトナムは、過去25年間でさまざまな経済危機の影響を受けながらも、素晴らしい成長を保ってきました。ベトナムで投資家に好まれるセクターであるだけでなく、不動産は最も安全で効率的な投資チャンネルです。Covid-19が2021年まで持ち越したとしても、2021年から2022年、そしてその後も力強く回復することを予想しています。さらに、効果的かつタイムリーな政府のサポートが、不動産ビジネスと国民経済をさらに強力にテコ入れするでしょう。」と述べています。

(出所:Hanoi Times

(トップ画像:Huy Phan from Pexels )