[フィリピン] マカティ市営地下鉄プロジェクトが脱線の危機

2023/09/12


長年マカティ市とタギッグ市の土地帰属問題の対象となってきたマカティ市の一部地域は、隣接するタギッグ市の管轄下にあるという最高裁判所の判決により、35億ドルのマカティ市地下鉄プロジェクトの建設が危うくなっています。



フィリピン証券取引所(PSE)への情報開示の中で、民間側の地下鉄プロジェクトの主提案者であるフィリピン・インフラデブ・ホールディングス(Philippines Infradev Holdings)社は、今回の判決により、地下鉄の線形はもはや実現不可能であると述べています。



同社によると、計画されている地下鉄駅のいくつかは、今回の判決でマカティ市ではなくタギッグ市の管轄となった地域(バランガイ)にあるといいます。バランガイとは、フィリピンの都市と町を構成する最小の地方自治単位を指します。今回の判決の影響を受けるバランガイは、ペンボ、コメンボ、チェンボ、南チェンボ、西レンボ、東レンボ、ピトゴ、リサール、ポストプロパーノースサイド、ポストプロパーサウスサイドの10つです。



これを踏まえ、同社はマカティ市政府に対し、最高裁判所の判決について協議開始の意向を伝える通知を送付したということです。



また、この件に関する今後の重要な進展について、フィリピン証券取引所と証券取引委員会に報告する予定であるとも述べています。



▼マカティ市バランガイ境界マップ(City of Makatiの地図を元にPropertyAccess作成、黄色で色付けしたのがタギッグ市の管轄が確定した地域)(出所:City of Makati



マカティ地下鉄とは


マカティ市内に建設予定の全長10キロの鉄道システムで、地方自治体としては最大のPPP(官民パートナーシップ)プロジェクトとして注目されています。



実業家アントニオ・ティウ氏が所有するフィリピン・インフラデブ社(旧IRCプロパティーズ)が、マカティ市政府から、マカティ地下鉄プロジェクトを請け負う官民パートナーシップ契約を受注、中国のパートナーであるGreenland Holdings Group(緑地控股集団股份有限公司)Jiangsu Provincial Construction Group Co., Ltd.(江蘇省建築工程集団有限公司)China Harbour Engineering Company Ltd.(中国港湾工程有限責任公司)の3社で構成するコンソーシアムとプロジェクトの実施に当たることになりました。



当初の計画では、このプロジェクトはアヤラ通り沿いの現在の中心業務地区(アヤラ・トライアングル)、マカティ市庁舎、ポブラシオン遺跡、マカティ大学、オスピタル・マカティを結び、主要エリアに10の地下駅を設置することになっていました。



その後、終点となる予定だった駅は、MRT3号線のアヤラ駅から、アモルソロのマイル・ロング・プロパティの場所にルート変更されています。



将来的には、MRT3号線、パシグ川フェリーサービス、メトロ・マニラ地下鉄(建設中)、そしてマカティとタギッグにあるボニファシオ・グローバル・シティを結ぶスカイトレイン計画への接続が予定されています。



完成予定は2025年で、1両あたり収容定員200名以上の車両6両編成で運行され、1日あたり70万人以上が利用する計画です。



今回の判決の影響を受けるとされているのは、バランガイ・センボ(Cembo)に計画されている地下鉄の車両基地、西レンボ(West Rembo)に計画されているマカティ大学の駅、ペンボ(Pembo)に計画されているオスピタル・マカティの駅です。




これまでのマカティ地下鉄計画




他にも影響を受けるのは


地下鉄プロジェクトだけでなく、タギッグ市の管轄となった地域の公立の学校も最高裁判所の判決の影響を受けることになります。マカティ市長のアビー・ビナイは、学生への援助を継続することを約束しています。



マカティ大学で学ぶ学生や、マカティの社会プログラムの恩恵を受けているオスピタル・マカティ(マカティ市の三次病院)にも影響が及ぶことになります。




(出所:PhilstarPNAManila StandardCNN PhilippinesGMA NetworkFuture Southeast AsiaPhilippines Infradev

(画像:UnsplashJC Gellidonが撮影した写真)