[フィリピン] マカティ・シティがPOGOライセンスの発行を停止

2019/12/24

[フィリピン] マカティ・シティがPOGOライセンスの発行を停止



マカティ・シティは、無期限で、フィリピン・オフショア・ゲーミング・オペレータ、通称POGOへの事業ライセンスおよびサービス・プロバイダの許可を発行を停止することを発表しました。この背景には、POGOビジネスの新興が、地元の不動産にバブルを生み、今にも崩壊しそうなポイントまで来ていること、POGOが犯す犯罪の増加をもたらしたことがあります。POGOの主な従業員は中国人です。


■PAGCORの要件

マカティ・シティはその声明の中で、POGOサービス・プロバイダへの事業ライセンスの異議なし証明書(letter of no objection)を今後発行しないと発表しました。マカティ市長アビー・ビナイ氏は「今後、POGOサービス・プロバイダの新しい申請書は受け付けません。また、マカティ内でPOGOまたはその従業員向けの違法行為に対して厳しく対処していきます。」と話しています。

メトロマニラ市内のその他6つの市(マンダルヨン、ケソンシティ、パサイ、パラニャケ、ラス・ピニャス、モンティンルパ)では、異議なし証明書を発行しています。この証明書は、POGOとして営業するために、ゲーミング事業を規制するフィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)が課す要件の一つとなっています。

ビナイ市長は、中国人の市内への流入により、住宅・オフィスの授業が急激に増加、不動産価格が著しく高騰していると言います。

これにより、地元の不動産セクターは、過熱の危機にあり、成長はもはや持続不可能になってきています。

ビナイ市長はまた、POGO従業員向けの住宅需要の増加が、標準以下のアパートメントが高い賃料で取引される状況を起こしていると言います。こういったアパートメントは、過密状態にありながら、出口が少なく、火災報知器も壊れている場合が多いようです。

観光局のデータによると、2019年1月から9月までで、135万人の中国人がフィリピンに入国しており、2018年通年での120万人と比べても、かなり増加しています。


■増える中国人、高騰する家賃

Business Inquirer紙は、POGO従業員の中国人の流入により、賃貸していたアパートメントの立ち退きを余儀なくされた、とあるフィリピン人の体験を載せています。


ジャネラさん(仮名:26歳)は、通勤時間の短縮のために、地元からマカティへ引っ越してきました。

しかし、流入してきた中国人は、ジャネラさんだけでなく他のフィリピン人が支払っていた賃料の2倍以上を支払うことを提案。ジャネラさんは、バランガイ・サンアントニオに借りていたアパートメントから追い出されてしまいました。サンアントニオは、マカティの中心業務地区における中国人の活動の中心地となっています。

ジャネラさんは、2017年に月7,500ペソ(約16,170円)で契約した15平米のアパートメントは、1年後には8,000ペソ(約17,210円)になったと言います。

2019年6月、家主から、改築を理由に、ジャネラさんと他のテナントは立ち退くよう言い渡されました。ジャネラさんによると、それは言い訳に過ぎず、家主は、より高い賃料を支払うことのできる中国人に賃貸したかったからだと考えています。

「周りに住んでいたフィリピン人はみんないなくなり、代わりに中国人が入居しています。建物の入り口には、中国語の看板が立ち、中国人がバンに乗って夜遅くに送迎されていました。そして、徐々に近所には中国レストラン増えていきました。」とジャネラさんは語っています。

「そこに居場所はもうないと思いました。中国人によって、自分の祖国から追い出されてしまったのです。」

ジャネラさんは、もはやサンアントニオは高すぎて住めないと言います。今は、サンアントニオのワンルームのアパートメントは最低でも10,000ペソ(約21,520円)です。

ジャネラさんは、現在は、バランガイ・ポブラシオンにアパートを借りています。月々の賃料は、彼女の月給の約1/3の9,000ペソ(約19,370円)です。


■犯罪の増加

ビナイ市長によると、マカティでは、中国人が関係した、または中国人POGO従業員を狙った、違法行為が多発していると言います。

過去2か月だけで、市は違法営業をしていたPOGO4社、違法行為を行っていた建物2棟、市の衛生法違反していたレストラン・ケータリング会社を摘発しました。

また、バランガイ・サンアントニオでは、中国人が賃貸していたアパートメントを倉庫に改装した建物から、25億ペソ(約53.8億円)相当の麻薬が押収されています。

メトロマニラで犯罪を犯したとして逮捕された外国人のうち、中国人の数がトップとなっています。

昨年は、333人の中国人が、パサイ、マカティ、タギッグ、パラニャケ、ラス・ピニャス、モンティンルパ、およびパテロスで逮捕されています。一方で、2018年と2017年を合わせて、逮捕された中国人は360人でした。

マカティ市役所によると、約300のPOGOサービス・プロバイダがあり、主に中国国籍の従業員を何千人と雇用していると言います。一方で、PAGCORの認識では、同市に登録されたPOGOは約200ほどとなっています。


■合法的なPOGOビジネスは歓迎

ビナイ市長は、これらの会社の多くはPAGCORのライセンスを受け、市の事業許可・ライセンス事務所に登録されており、市の税収に2億ペソ(約4.3億円)以上貢献していると言います。

「すべての法規制、特に納税を遵守する、合法的なビジネスはいつでも歓迎です。そして、これらのビジネスが成長し、従業員が安心して暮らせるような、安全な環境を提供するよう努めたいと考えています。」


(出所:Business Inquirer


政府の税収や不動産業界に貢献してきたPOGOですが、一方で違法営業を行うPOGO、それらの会社や従業員を巻き込んだ犯罪の増加は、市民にとっても、投資家にとっても懸念材料です。取り締まりが強化され、安心して投資できる環境が保たれるよう、今後の動きが注目されます。