[マレーシア] 第2四半期のGDP16.1%成長

2021/08/16

[マレーシア] 第2四半期のGDP16.1%成長



マレーシア経済は、2021年第2四半期、前年同期比で16.1%成長しました。絶え間ないCovid-19感染の波に直面し、活動制限が残り、政治不安が長引くマレーシアにとっては、ちょっとした救いとなりました。


一方で、マレーシア中央銀行は、今年通年のGDP成長率目標を当初の6.0%~7.5%から、3.0%~4.0%へと大幅に下方修正しました。


2021年4月~6月期のGDP成長率は、2020年第1四半期の0.7%以来のプラス成長となりました。昨年の第2四半期は、-17.1%でした。ロイターが20名のエコノミストに対して行った調査で2021年第2四半期成長率の中央推定値14.3%を軽々と超えた形となりました。


マレーシア経済は、2020年5.6%縮小しました。


マレーシア中央銀行のノル・シャムシア総裁は、「景気動向は、主に、内需の改善と引き続き堅調な輸出に支えられた」と説明しています。「力強い成長は、2020年第2四半期の経済活動の冷え込みから来るベースの低さも反映しています。」


ノル・シャムシア総裁はさらに、第2四半期の初めに、経済活動はいったんは立ち直ったものの、より厳しいCovid-19封じ込め措置の再実施を受けて、その後減速したことについても触れています。これが、「制限措置への順応性と実施中の政策支援により影響はかなり軽減された」ものの、成長に大きな圧力をかけました。


マレーシアのアムバンク・リサーチ(Ambank Research)は、第2四半期の成長率を11%~13%と予測していましたが、今回の結果を受けて、工業生産と輸出の伸びが経済拡大を支えたと説明しています。工業生産は第1四半期にたった4%だったのに対して第2四半期では25.9%増加、輸出も対前年同期で44%増加しました。しかし不確定要素も残ります。


アムバンク・リサーチは、「2021年後半期の見通しは、ワクチンのスピード、Covid-19感染者数の管理、経済の再開、景気刺激策、そして国内の安定に左右される」と述べています。


マレーシアのワクチン接種のペースは格段に上がりOur World in Dataによると、人口の約30%が2回の接種を完了、約20%程度が1回接種済みとなっています。


▼ワクチン接種各国比較(濃緑:2回接種を終えた人の割合、緑:1回接種済みの人の割合)


しかし、2020年2月に国内で初めてCovid-19が発見され、3月に政府が最初の活動制限令を発出して以来、マレーシアは完全には再開していません。クアラルンプールを含む、経済のかなめであるクアラルンプール首都圏は依然としてロックダウン状態で、必要不可欠でない事業活動は認められていません。統計局のデータによると、2021年6月時点の失業率は4.8%で、約77万人の人が失業状態にあることになり、中小零細企業に大きく依存する経済に制限措置が重くのしかかっています。


ノル・シャムシア総裁は、今回発表された成長見通しが、前回と比べて下方修正された最大の理由は、全国規模で行われている封じ込め策の再実施であると説明しています。


「マレーシアの成長回復は、2021年下半期の後半に広く再開し、2022年にかけて改善するでしょう。経済の再開と前向きな市場心理を促進するのは、継続的かつ効果的な国内のワクチン接種プログラムです。医療システム能力にかかる逼迫した状況を軽減し、封じ込め策の緩和につながるでしょう。」


経済的な犠牲にもかかわらず、マレーシアは依然としてCovid-19との戦いを続けており、医療システムは限界に達しています。8月12日の感染者数は記録的な21,668人を記録しました。パンデミックの始まり以来、コロナウイルスと診断された人は140万人ほど、うち25万人が治療中です。


2020年3月より、ムヒディン・ヤシン首相率いる政府は、約5,300億リンギットの景気刺激策を発表、パンデミックの影響緩和に努めてきました。


隣国シンガポールは、今週第2四半期のGDP成長率を上方修正し、14.7%と発表、さらに年間予測を6%から7%にアップグレードしました。フィリピンでは、第2四半期の成長率は11.8%、インドネシアは7.1%、ベトナムは6.6%と発表されています。


(出所:Asia Nikkei、Our World in Data)

(画像:Photo by Sam Moqadam on Unsplash