2023/05/16
マレーシアの国内総生産(GDP)は、2023年第1四半期5.6%拡大しました。2022年第4四半期の成長率は7.1%でした。季節要因調整後では、成長率は0.9%、2022年第4四半期は-1.7%でした。
▼四半期ごとのGDPと成長率の推移(単位:10億リンギット)
供給サイドでは、すべてのセクターにおいて成長が見られ、特にサービス業と製造業が顕著でした。供給サイドの好調は需要サイドにも反映され、民間最終消費支出と総固定資本形成に牽引されました。全体として、マレーシアの今四半期の名目GDPは4440億リンギット(約13.4兆円)、実質GDPは3,809億リンギット(約11.5兆円)となりました。
サービス業は、前四半期の9.1%増に対し、今四半期は7.3%増加しました。季節要因調整後では、1.7%増(2022年第4四半期:-1.5%増)となりました。当四半期の卸売・小売業サブセクターは、すべてのセグメント、特に小売業の14.5%(2022年第4四半期:19.2%)の好業績に支えられ、9.4%(2022年第4四半期:9.8%)の成長で部門を牽引しました。
製造業は、前四半期に記録した3.9%から今四半期は3.2%増加しました。季節要因調整後では、0.5%の微増(2022年第4四半期:2.6減)となりました。この業績には、3.8%増の電気・電子・光学製品(2022年第4四半期:9.2%)、7.7%増の輸送機器、その他の製造・修理(2022年第4四半期:4.9%)、7.2%増の植物・動物油脂・食品加工(2022年第4四半期:4.4%)が影響しました。
マレーシア中央銀行(BNM)の発表前、ロイターが調査した21人のエコノミストの予想中央値は、2022年第4四半期の改定値7.1%から下がって4.8%成長でした。
ノル・シャムシア中銀総裁は、「マレーシアの成長見通しに対するリスクは比較的バランスが取れている」との見解を示しています。
上向きリスクとしては、驚くほど好調な観光活動や、2023年の修正予算に上がっているプロジェクトなどの実施を挙げています。一方、下振れリスクは、予想を下回る世界の経済成長、そして不安定な世界金融市場の状況による輸出の減少だと指摘しています。
マレーシアの第1四半期の成長率は、域内でもフィリピンの6.4%、インドネシアの5.03%といった成長率に匹敵する高い水準です。隣国のシンガポールは0.1%の成長でした。
今月初め、BNMは予想に反して基準金利を25ベーシスポイント引き上げて3%とし、パンデミック前の水準を回復させました。BNMは、中国の予想以上の好景気に加え、回復力のある内需が引き続き経済を牽引していると述べました。この動きは、マレーシアの成長が比較的堅調に推移することを示唆しています。
▼マレーシア政策金利の推移(出所:Trading Economics)
BNMは先月、ヘッドラインとコアの平均インフレ率は今年2.8%から3.8%の間に落ち着くと予想し、その範囲の上限に向かう可能性が高いと述べています。第1四半期のヘッドラインインフレ率は3.6%で、2022年の最終四半期の3.9%から低下傾向にあると発表しました。BNMはこれを、変動の激しい食品とエネルギーを除いたコアインフレが緩やかになったことと、ハイオクガソリン「RON97」の価格が下がったことに起因するとしています。
マレーシアの3月のインフレ率は3.4%と、フィリピンの7.6%、インドネシアの5%といった近隣諸国や、一部の欧米諸国よりも低い値を記録しました。しかし、地政学的緊張、異常気象、予想を上回る中国の需要、為替レートの変動などから、インフレ圧力が持続していると指摘しました。
マレーシア産業開発金融リサーチ(MIDFリサーチ)社によると、BNMの金融政策の優先事項は持続可能な成長であり、世界の主要な中央銀行をモニタリングしながら様子見のスタンスに移行すると予測しています。
バンク・イスラム・マレーシア (BIMB)のチーフエコノミスト、フィルダオス・ロスリは、2月に失業率3.5%の低下が記録された労働市場の着実な改善に支えられ、民間消費は今期も需要拡大の主軸となるだろうと述べました。
「観光収入の増加や2022年度末の長期休暇も寄与しています。そのため、当四半期の民間消費の成長率は1桁台後半になる可能性が高いとみている」と述べました。
同行は、2022年第4四半期に記録された450万人の観光客到着に続き、サービス部門の成長の後押しとなっている中国経済の再開と相まって、23年第1四半期の観光客入国数と観光収入額はさらに増加するだろうと指摘しています。
BNMは、国際的な混乱にもかかわらず、強い内需に支えられ、2023年のマレーシア経済は4%から5%の範囲で拡大するとの予測を維持しています。
(出所:The Star, Department of Statistics Malaysia, Asia Nikkei)
(画像:UnsplashのHao Panが撮影した写真)
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