[マレーシア] 不測の事態を予測する「不可抗力」条項

新型コロナウィルスの影響は世界中に広がっています。2020年が始まった頃には多くの人が予測も出来なかったこの事態について、契約の履行が難しくなった当事者側の視点から見ていきます。

[マレーシア] 不測の事態を予測する「不可抗力」条項


新型コロナウィルス(Covid-19)の流行は、国際的な公衆衛生の緊急事態であると宣言され、旅行、小売、製造、テクノロジーなど各産業に大きな混乱を引き起こしています。マレーシアも、2020年3月18日から行われた活動制限令(MCO)に多くのビジネスがストップしました。5月4日より、制限は緩和されていますが、活動制限措置により、事前に合意した契約の中には、「商業上履行不可能」になるものが出てくるかもしれません。


今回ご紹介するのは、主に活動制限令を理由として契約の履行が難しくなった当事者側の目線の内容ですが、バイヤーとして事前に知識を持っておくにはよさそうですので、見ていきましょう。


通常、契約書には、予期できない、または履行不能な事由が発生したときの契約上の当事者それぞれの権利、義務、救済措置を定めておく「不可抗力(Force Majeure(フォース・マジュール))条項」が盛り込まれています。この条項は、「当事者の制御の範囲を超える」不測の事態に備えるもので、規定されている内容に曖昧さがないことが必要です。多くの場合、不可抗力事由が発生した場合には、契約上の義務を一時停止したり、契約の不履行/遅延/終了について特定の債務を免れたりすることなどが、救済措置として含まれています。
 

ここで、契約書で確認できるのは、「不可抗力」条項に、特定のタイムラインや契約上の義務の停止のための通知または手続きが定められているかどうか、また「契約の終了」条項に「無過失による終了」または「不可抗力による終了」が認められているかどうかです。


コロナウィルス流行に直接的な影響を受けた当事者は、契約の準拠法に基づき解釈される「不可抗力」に該当することを証明する必要があります。


これには、世界保健機関(WHO)がコロナウィルス流行を「パンデミック」だと宣言したのを受けて、流行病(エピデミック)、世界的流行病(パンデミック)、または伝染病などが不可抗力事由に該当することを明確に謳っているかどうかも含まれます。

また、コロナウィルスが契約上の当事者に実際に影響を与えていたとしても、契約を履行できない当事者は、できる限りの方法で、不可抗力事由の影響を防ぐための、あるいは少なくとも軽減するための、合理的な対策を講じたことを提示しなくてはなりません。

コロナウィルス流行の法的な取扱いは、契約の性質、契約当事者が負う義務の種類、履行される義務を取り巻く状況、状況の変化の予見可能性などによって変わってきます。



■契約書に「不可抗力」の規定がないとき

もし、契約書に「不可抗力」条項が含まれていない場合、契約書は「後発的履行不能(frustration)」を理由に免責される、つまり無効になることがあります。契約の成立以降に状況が変わって、履行が法的または物理的に不可能になったときに、契約は「履行不能」となったとみなされます。(1950年契約法、第57条)

「後発的履行不能」により契約が解除となるためには、次のような条件がそろっている必要があります。
・契約が履行不能になった理由とされる事由、または状況の変化について、契約上に規定がない
・当該事由、または状況の変化が、当事者の責任によるもの、または自ら招いたものではない
・当該事由、または状況の変化により、契約の履行が、締結当時に引き受けたものと大幅に異なり、当初の約束を強制執行することは不当であると裁判所が判断する


しかし、「後発的履行不能」は、非常に狭い範囲でしか適用されることができません。契約は、履行が難しくなった(または当初より高額になった)という理由だけでは、履行不能とはみなされないのです。厳しい活動制限令により、契約の履行不能を請求しようとする場合には、活動制限令により契約の履行が単に困難、不便、または厄介になったからではなく、契約履行が「不可能」であることを確認しなければなりません。


■契約相手とどんな内容を再協議する必要があるか?

契約上の相手方と書面の契約を作成し、「不可抗力」事由、または「合理的な制御を超える事由」に言及して、以下のような条件の再協議が必要かどうかを検討する必要があります。

・引渡し/義務の履行のための期限延長
・特定の義務の停止
・引渡し時の数量/業務範囲の削減
・状況が一定の期間続いた場合の契約の終了
・遅延利息または損害賠償の予定額の減免



※本記事は、知識を深めることを目的としており、個々の契約についての専門的なアドバイスを提供するものではありません。


(出所:Malaysia Investment Development AuthorityDanovan & Ho Advocates and Solicitors

(トップ画像:Photo by Mari Helin on Unsplash )