[マレーシア] インフレ、金利、不確実性で購入意欲冷え込み

2022/05/30


不動産ポータルPropertyGuru.com.myとiProperty.com.myの国担当マネジャー、シャイレンドラ・ネイサン氏は、長引くコロナの影響と高まるインフレにより、消費者心理が妨げられた状態が続くことで、国内不動産市場の改善はゆっくりとしたペースで進んでいると述べています。


今年の後半には着実な上昇が見られると予測する者は多いものの、住宅購入予定者は、アフォーダビリティの問題やローンの確保が難しいことを理由に注意深くなっている、とシャイレンドラ氏は述べています。


最近、マレーシア中央銀行(Bank Negara Malaysia)が翌日物の政策金利(OPR)を1.75%から2%に引き上げたことも、購入意欲にマイナスの力をかけました。これから住宅を購入しようとする人にとっても、すでに購入してローンを受けている人にとっても、借入金利が影響を受けることになるからです。



現在の厳しい状況の中、シャイレンドラ氏は、消費者動向が改善するのは、経済環境の回復と金融の安定化につながるような政府のプログラムがあるかどうかにかかっていると述べています。


シャイレンドラ氏は、続く政治不安と、経済・公衆衛生に関する政策の不確実性が、バイヤーの「様子見」のアプローチに拍車をかけており、それが市場をさらに冷え込ませていると考えています。


「このような外的な要因が改善することを待ち望む一方で、売主は、市場を活発化させるべく魅力的なパッケージなどで購入者にインセンティブを与えるような取り組みをしていかねばなりません。(しかし)活用できるような金銭的インセンティブがない中で、バイヤーは、景気が再び安定化するまで、バイヤーは購入に踏み切ることをためらうかもしれません。」


シャイレンドラ氏は、市場の消費者心理が国の景気回復の道のりを共に歩む形でのみ回復するだろうとの見方です。



「今後、(このような)動きが見られるといいですね。不動産需要が今後数四半期で転機を迎えると思っています。資力のあるマレーシア人が、インフレのヘッジとして不動産に目を向けるでしょうから。地価を考慮に入れると、土地付きの物件の価格上昇は、長期的にみると値上がり幅が大きくなるでしょう。」



PropertyGuruの「マレーシア不動産市場レポート(MPMR)2022年2Q」によると、土地付きの物件の販売価格インデックスに、前期比で1.1%、前年同期比で3.64%の上昇があったということです。一方で、土地付き物件の需要インデックスは、前期比では1.96%下がったものの、前年同期比では5.21%上がっています。



「この土地付きの物件のトレンドが示すところは、土地付きの家が引き続き好まれているが、現在はアフォーダビリティの問題と金銭的な困難から購入予定者の心理が冷え込んだ状態になっており、需要の低迷として表れているということです。」とシャイレンドラ氏は解説しています。



マレーシア中央銀行の2021年後半期「財務安定性レビュー(Financial Stability Review)」では、経済全体、そして金融セクターにあきらかな改善があったと述べられています。



しかし、住宅市場では、大量の売れ残り物件が懸念材料となっています。18万戸以上の住宅ユニットが売れ残りとなっており、以前からあったアフォーダビリティの問題をコロナが悪化させたことを示しています。



これは、MPMRの供給インデックスにも表れています。供給インデックスは、2022年第1四半期、前期比で0.31%、前年同期比で19.1%増加しました。



「パンデミックを背景として世界的にインフレ率が上昇しており、需要の回復は、原材料などの必需品にボトルネックを引き起こし、価格をさらに押し上げています。マレーシアが抱える大量の売れ残り住宅ユニットは、将来開発コストが上がるかもしれないので、その前に不動産を買っておこうという最後の機会になるかもしれません。



一方で、MPMRの高層物件の販売価格インデックスによると、区分所有の住宅価格は、2022年第1四半期、前期比で0.23%下がりましたが、前年同期比では0.51%上がりました。しかし、高層物件の供給は、前期比で3.25%、前年同期比では18.24%上がっています。



シャイレンドラ氏は、これについて、ロケーション、設備、アクセスの良さといった、バイヤーのその他の要素への意欲と比べたときに、価格のミスマッチを示していると言います。



賃貸については、高層物件の賃貸料インデックスは、前期比で0.91%、前年同期比で0.2%上昇した一方で、高層物件の賃貸需要インデックスは、前期比で6.08%、前年同期比では111.23%上昇しています。



シャイレンドラ氏は、これについて、住宅購入予定者が、経済の安定を待つ間は住宅を購入するのを一時見合わせて、当面の策として、賃貸にシフトしていることを表していると分析しています。



「高層物件の賃貸需要インデックスから明らかに分かる通り、消費者の購入意欲は現在抑え込まれた状態になっています。ミレニアル世代がロケーションのよいコンドミニアムを好むという安定的なパターンがあるのも分かっています。しかし、オーバーハング状態にもかかわらず、これらの高層ユニットの成約に至らないのには、現在のバイヤーの購入意欲に反して価格のミスマッチがあることを示しています。」と説明しています。




(出所:New Straits Times

(画像:Photo by Dave Yap on Unsplash )